連載小説
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再びH
その頃、チルノの方はと言うと、ムーンとは違う冒険心からか、地下への階段を選んだようである。
子供なら分かると思うが、案外、恐いという心よりもそれを征服するという冒険心が勝ってしまう者だ。
「あら、珍しいのね。氷精が勉強なんて・・・」
「ふふふ、今日からこの館は私の物よ!」
チルノが階段を降りて燭台の蝋燭が不気味な薄暗さを演出する通路を真っ直ぐ歩いて向かった先は大きな両開きの扉であった。
好奇心旺盛なチルノは勿論、扉の取っ手を握って力の限り押し込む。
やっとの事で開けた扉の部屋は紅魔館を外から見ればこんな部屋があったのかと思えるくらい大きい。
いや、実際にはあり得ないほどの大きさで、恐らくは魔法か何かで空間を弄くっているのだろう。
その広々とした部屋には本棚が所狭しと並べられており、さながら大図書館と行った感じであった。
大図書館の本が敷き詰められたカウンターのような場所に、チルノは自信満々にカウンターのような場所の前に近寄って行くのだが、そこには本を読んでいる少女がいた。
その少女は途中まで本に夢中だったのか、ある程度近づいて来ればやっとチルノの姿に気づいたのか本から目を話して首を傾げてそちらの方に視線を向けるのであった。
本を読んでいた少女はゆっくりと丁寧な扱いで本をカウンターの空いている場所において、チルノに対してボソボソと暗いような声で言葉を言いながらも、物珍しげにチルノを見て居るのであった。
チルノの方はと言うと対照的に自信満々に座っている少女に対して宣言をするのであった。
本を読んでいた少女は相手のいきなりの発言に思わず呆れの表情を浮かべずには居られなかった。
「何寝ぼけたこと言ってるの?」
「寝ぼけた事って何よ!」
「馬鹿1人で何が出来るの?」
「あたいは馬鹿じゃないもん!」
「馬鹿でないなら、この本に書いてあることを理解できるのかしら?」
紫の少女は呆れるのを止めて、冷静にチルノに対してツッコミを的確に言うのであった。
チルノの方は馬鹿にされたと思っているのか、思いっきり相手に対して口を膨らませて怒りを露わにするのであったが、紫の少女は冷静にあしらうのであった。
チルノは既にこの館を乗っ取るという目的を忘れてしまっているのか、相手に言われた罵倒に子供のように反論するのであった。
しかし、紫の少女はハアと軽く息をついた後に自分の読んでいた本を閉じ置き、別の近くにあった本を手に取り相手に対して吸血鬼に十字架を見せるような感じで突きつけるのであった。
「そ、そんな本、らくしょーよ!」
「そう、なら読んでみて」
もう既にチルノは此処に来た理由を忘れたのかも知れない、相手に対して強がるように言葉を言いながらも顔が引きつっていた。
紫の少女は軽く微笑んでチルノに対して本を渡そうとするのであった。
チルノは仕方なく相手の方に近づいていって本を受け取って開くのであった。
「この本、何も書いてないよ?」
「馬鹿には何も書いてないように見える本なのよ。」
「え、あ、あー、見えてきた見てきた。」
チルノは嫌な顔をしながら本を開けば、中身が真っ白であることに気がつき、キョトンとして首を傾げて相手に対して質問するのであったが、紫の少女は平然と相手に対して静かに言葉を言うのであった。
それを聞けばチルノは慌てたような感じで言葉を言って誤魔化すのだが、紫の少女はクスクスと静かに微笑むのであった。
それもそのはずで、彼女が渡したのは中身が真っ白の白紙の本だ。
偶然、先ほど処分しようと思っていた白紙の本を見つけていたのが役に立った。
相手の滑稽な姿に紫の少女は「やっぱり馬鹿ね」と心の中で思いながらも、自らが読んでいた本をまた手に持つ。
さて、何ページまで読んでいたか、そんなことを考えながら、本を開くのであった。
11/11/20 12:15更新 / シャドウ
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■作者メッセージ
裸の王様事件とでも名付けるべきだろうか?
とりあえず、Hに合掌。
続々と明らかになっていく紅魔館の住民たちですが、果たしてこのような住民達とどのような生活をしていくのやら・・・

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まろやか投稿小説 Ver1.50