連載小説
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Gore Woolf show  第6話
地上から轟く砲声は少しずつ一点へと集まりつつあった。ただひたすらに暴虐の限りを尽くしていた二機のネクストは予め待機していた補給車と合流して、小休止を入れていた。


数名の隊員がネクストの残弾を確認し、一機だけの作業用歩行重機でネクストへと給弾を急ピッチで進めている中、無造作に乱立している木立の影に、二人は暖め合うように抱き合っていた。


「姉様、さっきは突っ込みすぎてたわ」

「相手は所詮ノーマル。私達に敵うわけないでしょう」


スミレ色の艶のある髪の二人の顔立ちはまるで生き写し。ただ一つ違うところは互いが付けている黒曜石と石英のイヤリング。
妹が姉と呼んだ女性の胸に顔を埋めると、姉は妹の頭を優しく抱きしめた。


「今回の仕事は王大人も御覧になっているわ。もし私達がネクストを倒せば―――」

「あいつよりも、もっと王大人に褒めて貰えるのですね。姉様」


姉は肯定の意味を含んで頷き、妹と口づけ合う。妹もそれを優しく受け入れる。
二人の関係は姉妹というにはあまりにも近すぎて、恋人というにはあまりにも異常なモノである。
姉妹が触れ合っている時、不意に通信機が震え、姉が気怠げに通信機を着ける。


「はい、イリス・ファインフューリです。王大人」

『イリス、私だ。任務はどうなっている?』


通信機越しの声に、幾分か姉妹の表情は明るくなる。幼少の頃ゴミの吹き溜りのような最低の場所で、親も無く二人だけで肩を寄せる事で暖め合ったあの場所から、あの老紳士は自分たちを救い出してくれた。
その恩に報いるために、二人はどんな辛い仕打ちにも耐えてきた。そして二人は遂にネクストという力を持って、あの救い人に報いるという、最高の幸せを得る事ができたのだ。


「はい、王大人。カメリエも無事です」

『そうか。つい先ほど、狙撃部隊が敵のネクストの前に全滅した』


離れた場所にいるであろう恩人からは、労いの言葉は無かったが、二人にとってはその声を聞けるだけで胸が高鳴り、年頃の少女のように恋にも似た想いがわき上がる。それと同時に新たな獲物の存在の事も。


「ご心配には及びません、王大人。私達は必ず、王大人のためにネクストを倒してみせます」

『それでいい。もしお前達がネクストを倒せれば、リリウムとのカラードランクの入れ替えも考慮しよう』


その言葉に、姉妹は心の中でどれほど喜んだ事だろう。自分たちが、あのリリウムよりも優秀だと、もっと王大人に近づけると。


『では任務を全うしろ。結果は帰ってから聞くとしよう』

「お任せください王大人、私達姉妹が必ず、よい結末をお話いたします」


しかし王大人の返事はなく通信機は切れ、その様子に妹のカメリエが心配そうな顔で、疑念を打ち明ける。


「姉様、最近王大人は私達に何を期待しているのかわからないわ」

「カメリエ、それはきっと勘違いよ。私達が結果をだせば、きっとわかるはずよ」


妹の表情は晴れなかったが、イリスが妹に口付けると、すぐに蕩けた表情を浮かべる。


「もうすぐ補給も終わるわ。続きはその後でしましょう」

「はい、姉様……」


二人は表情をすぐに戦う者のそれに変え、同じくすみれ色の二機のネクストへと歩んでいく。

これから起こる惨劇は、まだ誰一人知らない。


10/02/26 23:12更新 / 厚着
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まろやか投稿小説 Ver1.50