Gore Woolf show 第5話
シュバルツバルト保護区上空1000m、闇色に染まる雲の上を輸送機が旋回しつつ飛んでいる。
地上からは時折遠雷のように爆音が響く。
「ドミニク先輩、戦域全体にECMが掛かってます。ネクストを投下すると交信不能になる可能性がありますよ」
サブオペレーターはレーダーを指さす。そこには時折ノイズが混じり、断続的ながらもECM濃度が通信を阻害するほど発生していた。
「どうしてかしら、味方施設からECCMは?」
「無いみたいです。これじゃあ詳しい戦況がわかりませんね」
ドミニクはしばし黙考し始め、突然コンソールを操作しだす。サブオペレーターはその様子をなんともなしに見つめている。
「この機から出来る限りECCMをかけて、ネクストで迅速にECM発生源を叩かせましょう」
「それくらいしかないですしね」
ドミニクの意図を読んでインカムを起動する。
端的に言うとカスパルは暇を持てあましていた。出撃することは決まりきっているはずなのに、何故いつまでも待たせるのか、そう思っていたほどだ。
『リンクスさん、これから敵部隊を叩くのですが、戦域全体にECMが掛かって、通信が全く出来ません』
「向こうさん、なんでキャンセラーしねぇんだ? 脳味噌すっぽぬけたのかね、キキキ」
『詳しくはわかりません。こちらからもECCMを掛けますが、発生源を潰すまであんまり期待しないでください』
カスパルは即座に次に言われるべき内容が予想できた。そしてその答えは全くのその通りであった。
『わかってるとは思いますけど、発生源の撃破を頼みますね』
「いいぜ、じゃあ早いところ出してくれよ」
言うが早いか、格納庫下部のハッチが開き、森に囲まれた赤く燃える施設が見える。
今でも爆音が聞こえるのは、少なくともまだ戦闘が続いている証拠だった。
『セイフティ、オールアンロック。機体投下後、狙撃に注意を』
「了解、さぁさぁ、何人殺せるかなぁ」
全ての拘束が解かれ、狂気の狗は黒き森に落ちていく。
滴る血のように紅いネクストは、すぐさま機体を横にずらす。その瞬間、肩のフレームを砲弾がかすめた。
もし何もしていなければ、確実に搭乗者を捉えていたであろう一撃だった。
「楽しいねぇ、今すぐぶち殺してやるよ。キキキ」
カスパルは口の端を吊り上げ嗤うと、全速力で狙撃された地点へ向かう。
統合制御体が夜闇に紛れるように移動しているノーマルの部隊を捕捉する。だがネクストから見れば、無防備な羊達が間抜け面を揃えて、狼の巣へと行進しているようなものだった。
「アロー、こんばんはぁ。ということで死ね」
木々が吹き飛ばし地面も大きく抉りながら狙撃部隊の眼前にカメレオンが着陸する。
狙撃部隊は慌てて後退し始めるが、逃げる間もなく、次々と胴体に攻撃を受け、折り重なるように倒れていく。
「あっけねーなぁ。ま、チキンハンターはこんなもんか」
カスパルはすぐさま向きを変え、兵器工場へと向かう。
その目は闘争の愉悦で輝いていた
地上からは時折遠雷のように爆音が響く。
「ドミニク先輩、戦域全体にECMが掛かってます。ネクストを投下すると交信不能になる可能性がありますよ」
サブオペレーターはレーダーを指さす。そこには時折ノイズが混じり、断続的ながらもECM濃度が通信を阻害するほど発生していた。
「どうしてかしら、味方施設からECCMは?」
「無いみたいです。これじゃあ詳しい戦況がわかりませんね」
ドミニクはしばし黙考し始め、突然コンソールを操作しだす。サブオペレーターはその様子をなんともなしに見つめている。
「この機から出来る限りECCMをかけて、ネクストで迅速にECM発生源を叩かせましょう」
「それくらいしかないですしね」
ドミニクの意図を読んでインカムを起動する。
端的に言うとカスパルは暇を持てあましていた。出撃することは決まりきっているはずなのに、何故いつまでも待たせるのか、そう思っていたほどだ。
『リンクスさん、これから敵部隊を叩くのですが、戦域全体にECMが掛かって、通信が全く出来ません』
「向こうさん、なんでキャンセラーしねぇんだ? 脳味噌すっぽぬけたのかね、キキキ」
『詳しくはわかりません。こちらからもECCMを掛けますが、発生源を潰すまであんまり期待しないでください』
カスパルは即座に次に言われるべき内容が予想できた。そしてその答えは全くのその通りであった。
『わかってるとは思いますけど、発生源の撃破を頼みますね』
「いいぜ、じゃあ早いところ出してくれよ」
言うが早いか、格納庫下部のハッチが開き、森に囲まれた赤く燃える施設が見える。
今でも爆音が聞こえるのは、少なくともまだ戦闘が続いている証拠だった。
『セイフティ、オールアンロック。機体投下後、狙撃に注意を』
「了解、さぁさぁ、何人殺せるかなぁ」
全ての拘束が解かれ、狂気の狗は黒き森に落ちていく。
滴る血のように紅いネクストは、すぐさま機体を横にずらす。その瞬間、肩のフレームを砲弾がかすめた。
もし何もしていなければ、確実に搭乗者を捉えていたであろう一撃だった。
「楽しいねぇ、今すぐぶち殺してやるよ。キキキ」
カスパルは口の端を吊り上げ嗤うと、全速力で狙撃された地点へ向かう。
統合制御体が夜闇に紛れるように移動しているノーマルの部隊を捕捉する。だがネクストから見れば、無防備な羊達が間抜け面を揃えて、狼の巣へと行進しているようなものだった。
「アロー、こんばんはぁ。ということで死ね」
木々が吹き飛ばし地面も大きく抉りながら狙撃部隊の眼前にカメレオンが着陸する。
狙撃部隊は慌てて後退し始めるが、逃げる間もなく、次々と胴体に攻撃を受け、折り重なるように倒れていく。
「あっけねーなぁ。ま、チキンハンターはこんなもんか」
カスパルはすぐさま向きを変え、兵器工場へと向かう。
その目は闘争の愉悦で輝いていた
10/02/26 23:11更新 / 厚着