やまのはな 日本語だけ  更新:2012年9月2日(2002年11月10日頃開始)    このページの最後へ                                           

   松の木  


  私といつも一緒だった

  幼心が芽生えたときにはもう庭にその木はあった
  妹が生まれたときも伐採当日の最後の姿
  祖父が 祖母が 去ったときも
  保育園に入ったときも
  虫取りの宿題で探したのもこの木だった
  工作の飾り付けもこの木の枝と葉っぱだった
  とがって手のひらにちくちく痛い
  結婚前の写真を撮ったのも
  家族揃ってお正月に写真を撮ったのも
  冬の朝に枝に積もった雪を手にとって喜んだのも
  ピアノの練習に疲れ、手を休め、ふと見上げたのも
  長女が生まれて初めてお雛様を飾ったのも
  長女が次女の手を引いて自分も通った保育園に行くのを見送ったのも
  長女の就職がなかなか決まらず、空を見上げたのも残された虫食いだらけの株
  無事に行き先が分かって何気なく見上げたのも
  次女の大学合格の知らせが届いた日も
  アポロ宇宙船が着いたことになっている満月を見上げたのも
  政治が変わると期待して投票し夢破れたときも
  今は亡き父が池を掘ったり鯉を飼ったりしたのも

  みんなこの木の下だった

  マツノザイセンチュウが入ったらしい
  6〜7月に殺虫剤をやったら良いですよ
  2月から3月に10カ所ぐらいに穴を掘り
  ダイジストンを埋めたら効きますよ

  午前9時頃作業が始まり 正午にはすっかりなくなってしまった
  鋸で切られて チェーンソーでずたずたにされて
  痛かっただろうね
  もっと早くに気付いてあげれば良かったのにね
  ごめんね

  9月の初めの暑い暑い日曜日の晴れた午前中のことでした

  さようなら 私の松の木 さようなら 
さようなら さようなら さようなら さようなら




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