第183回国会 本会議 第18号
平成二十五年五月十日(金曜日)
午前十時一分開議
━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第十八号
平成二十五年五月十日
午前十時開議
第一 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際
協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時
措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
第二 裁判所職員定員法の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
一、裁判官弾劾裁判所裁判員辞任の件
一、裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙
一、行政手続における特定の個人を識別するた
めの番号の利用等に関する法律案及び行政手
続における特定の個人を識別するための番号
の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律
の整備等に関する法律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
─────・─────
○議長(平田健二君) これより会議を開きます。
この際、お諮りいたします。
藤田幸久君から裁判官弾劾裁判所裁判員を辞任いたしたいとの申出がございました。
これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(平田健二君) 御異議ないと認めます。
よって、許可することに決しました。
─────・─────
○議長(平田健二君) この際、欠員となりました裁判官弾劾裁判所裁判員一名の選挙を行います。
つきましては、本選挙は、その手続を省略し、議長において指名することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(平田健二君) 御異議ないと認めます。
よって、議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員に前川清成君を指名いたします。(拍手)
─────・─────
○議長(平田健二君) この際、日程に追加して、
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(平田健二君) 御異議ないと認めます。国務大臣甘利明君。
〔国務大臣甘利明君登壇、拍手〕
○国務大臣(甘利明君) この度、政府から提出した行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、行政機関等の行政事務を処理する者が、個人番号及び法人番号の有する特定の個人及び法人等を識別する機能を活用し、並びに当該機能によって異なる分野の情報を照合し、これらが同一の者に関するものであるかどうかを確認することができる情報システムを運用して、効率的な情報の管理及び利用並びに他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行うことができるようにするとともに、これにより、これらの者に対し申請等の手続を行い、又はこれらの者から便益の提供を受ける国民が、手続の簡素化による負担の軽減、本人確認の簡易な手段その他の利便性の向上を得られるようにするために必要な事項を定めるものであります。
次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
第一に、特定の個人を識別するための個人番号について定めております。
市町村長は、住民票に住民票コードを記載したときは、速やかに、住民票コードを変換して得られる個人番号を指定し、その者に対し、当該個人番号を通知カードにより通知するものといたしております。
このほか、個人番号を利用することができる者及びその利用範囲を定めております。
第二に、市町村長は、住民基本台帳に記録されている者に対し、その者の申請により、その者の氏名、住所、個人番号等が記載された個人番号カードを交付するものとしております。
第三に、個人番号を利用して事務を処理する者の求めに応じ、情報提供ネットワークシステムを使用して、個人番号をその内容を含む個人情報たる特定個人情報を提供する場合など、一定の場合を除き、特定個人情報の提供を制限することとしております。
第四に、内閣府に、特定個人情報の適正な取扱いの確保に必要な指導及び助言等を行う特定個人情報保護委員会を設置することとし、その組織、業務等を定めることとしております。
第五に、国税庁長官は、法人等に対して法人番号を指定するものとし、行政機関の長等は、他の行政機関の長等に対して法人番号を通知することにより、法人等に関する情報の提供を求めることとしております。
そのほか、個人番号利用事務に従事していた者が、その業務に関して取り扱った個人の秘密事項が記録されたファイルを正当な理由なく提供した場合等について、罰則を定めることとしております。
政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出した次第でございますが、この法律案は衆議院におきまして一部修正が行われております。
第一に、この法律の目的として、行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保を図ることを明記することとしております。
第二に、この法律の基本理念として、国民の利便性の向上及び行政運営の効率化に資することを明記することとしております。
第三に、国税庁長官が都道府県知事等に又は都道府県知事等が国税庁長官等に、政令で定める国税に関する法律の規定により国税又は地方税に関する特定個人情報を提供する場合において、当該特定個人情報の安全を確保するため必要な措置として政令で定める措置を講じているときは、当該特定個人情報を提供することができることとしております。
第四に、政府は、給付付き税額控除の施策の導入を検討する場合には、当該施策に関する事務が的確に実施されるよう、国の税務官署が保有しない個人所得課税に関する情報に関し、個人番号の利用に関する制度を活用して当該事務を実施するために必要な体制の整備を検討することとしております。
以上が、本法律案の趣旨でございます。
次に、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴い、三十六の関係法律の規定の整備等を行うため、所要の措置を定めるものであります。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
─────────────
○議長(平田健二君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。藤本祐司君。
〔藤本祐司君登壇、拍手〕
○藤本祐司君 おはようございます。民主党の藤本です。
会派を代表いたしまして、いわゆる通称マイナンバー関連法案について質問をいたします。
本法案は、三月二十二日に衆議院で審議が始まりまして、昨日の衆議院を通過いたしました。ただ、民主党政権下において策定し、昨年の通常国会に提出いたしました社会保障・税番号関連法案は、当時の野党の協力が得られないまま廃案となってしまったため、導入スケジュールが一年遅れることとなってしまいました。しかし、結果として与党との修正協議を経て本国会に提出され、本日に至りました。
番号制度には、長年にわたる様々な経験や検討の経緯がございます。今から三十三年前、ちょうど私が大学を卒業した昭和五十五年のことですが、当時の大平内閣は、政府税調が提案したグリーンカード制度という納税者番号制度の導入を決めました。グリーンカードといっても、アメリカの永住権証明書を思い出される方も多いかと思いますが、それとは全く違うものでございます。
日本のグリーンカード制度は、少額貯蓄非課税制度、いわゆるマル優、若い方はマル優って御存じないかもしれませんが、マル優制度の限度額以上の貯蓄に効率的に課税することを目的とした制度でした。その結果の詳細は長くなりますので省きますが、結局この制度はあえなく失敗に終わりました。その後も、税務行政の機械化、効率化を目的に納税者番号制度の検討が続けられました。
社会保障面では、平成九年には、各年金制度を横断して年金記録を把握し、加入者サービスの向上を図る目的で基礎年金番号が導入され、それ以前の年金記録の統合が図られました。平成十三年には、社会保障の給付と負担についての情報を集積、一元化する仕組みが提案され、さらに、平成十八年の骨太の方針には社会保障番号導入についての検討が盛り込まれました。しかし、平成十九年、いわゆる消えた年金という年金記録問題が発生する中で、社会保障番号の検討が更に進み、その検討が民主党政権下での社会保障と税の一体改革の中で具現化してきた制度が、このマイナンバー制度であります。
一方、平成十四年に稼働した住民基本台帳ネットワーク、いわゆる住基ネットに対しては、活発な反対運動や複数の地方自治体の不参加などが起こりました。しかし、初期投資に約三千七百億円というお金を掛けて騒いだ割には国民への浸透度は低く、昨年末で七百十五万枚程度と発行枚数が伸び悩んでいます。住基ネットに反対された方々の主な理由は、個人情報集約の危険性、個人情報保護対策の不備、そして費用対効果が不明確であるという、この三点だったと思います。
本日議題となっているマイナンバー法案は、このような歴史的経緯を持ったものでございます。
一般的に、何か新しいことをやろうとすれば、必ず賛成意見もあるし、反対意見も出ます。また、イマジネーションといいますか、想像力の働かせ方によっては、プラス面ばかりが強調されたり、逆にマイナス面ばかりが強調されたりすることは避けて通れません。
民主政治の基本は、参加と公開と納得だと思います。マイナンバー導入のメリットはもちろんですが、想定されるデメリットも正直に公開し、少しでも多くの国民に理解をしてもらう、納得してもらうことが大切だと思います。
それでは、メリットを具体的に分かりやすく説明することが、国民に納得してもらう第一歩だと思います。この制度導入のメリットは何なのでしょうか。
手続の簡素化による個人の負担軽減とか、行政の効率化と行政コストの削減による国民への還元という抽象的な答弁では誰も分かりません。国民は、日常生活の中で具体的なメリットを実感できないと納得してくれないというふうに思います。ふだんの生活の中で、これは便利だと思ってもらう機会が多ければ多いほどメリットを実感するでしょう。反対に、具体的なメリットを実感できなければ、この制度は行政側が管理しやすくなる仕組みであって、国民の利便性は後回しになっていると疑われてしまう可能性もあろうかと思います。
それでは、甘利大臣にお聞きします。
この制度を導入することによって、国民の利便性はどの程度向上するのでしょうか。具体的な例を五つ挙げますので、この具体的な例に沿ってお答えいただければと思います。
一つ目、年金記録の管理という側面で、現状の課題や問題点がどの程度解消されるのか。そのことで国民はどんな利便性を享受することになるのか。
二つ目、問題となっております生活保護の不正受給、この不正受給の防止にどのように貢献するのでしょうか。
三つ目は、それぞれの人が自己情報を知りたいと考えたときに、どんな仕組みが導入され、現状と比べてどのような利便性を実感できるようになるのでしょうか。
四つ目、税金の確定申告の際の利便性はどのように変わるのか。今の何が不便で、どのように便利になるのでしょうか。
五つ目は、公平で正確な納税が可能になるのでしょうか。それは、現状の仕組みのどこに問題があって、マイナンバーの導入によってどのように変わり、公平性と正確性が向上するのか。
この五つの具体例に沿ってお答えいただければと思います。
マイナンバー法案に反対している方々が挙げる理由の一つに、費用対効果がイメージできないという指摘があることは御存じのことと思います。衆議院での審議の中でもこの指摘が再三なされ、甘利大臣は、現時点では費用が確定できないとか、あるいは効果算定は困難という答弁をされています。
費用も初期投資額で二千億とも三千億とも言われています。このような巨額な投資をするからには、費用対効果を明確にできなければ、住基ネットの二の舞であるというふうな批判が起こることは明らかです。
この制度の導入に当たって、初期投資額と年間のランニングコストをどの程度見込んでいらっしゃるんでしょうか。また、その費用に対して、効率化の効果、行政コストの削減効果はどの程度見込んでいるんでしょうか。この制度導入の経済効果を年一兆一千五百億円と試算している民間の研究会もあります。また、民間事業者の場合は、何か新しい事業をスタートするときに、初めてのことだから投資額も経費も効果もやってみなきゃ分からないと言っては銀行は資金を貸してくれません。
今回のマイナンバー制度の原資は国民の税金であります。国民が、そんな不確かな事業計画では税金を使ってもらいたくないと考えるかもしれません。是非、甘利大臣、概算でも結構ですので、費用と効果、それぞれお答えください。
諸外国の番号制度は、税分野での利用、税務及び社会保障分野での利用、幅広い分野での利用に分かれます。税分野のみはドイツ、税と社会保障分野はアメリカ、韓国、シンガポールなどです。そして、より幅広く利用されているのはスウェーデンを始め北欧諸国です。
今回提案された法案では、マイナンバーの利用を社会保障、税、災害対策の分野に限定するとしながらも、附則第六条第一項で、法施行三年後にその利用の範囲を拡大する可能性を残しています。
最も幅広く利用している北欧諸国では、日常生活の中で例えばレンタルビデオを借りるときも個人番号が必要になる場合があるというふうに聞きます。当然、個人情報が満載の番号制度ということになります。よほど個人番号管理が信頼されていなければ、そこまでの利用範囲を広げることにはならないのではないでしょうか。
ただ、プライバシー情報保護に配慮しつつ、マイナンバーの利用を広く開放する仕組みを構築し、民間の創意工夫を生かして成長戦略へ結び付けることも併せて考えていかなければならないとも思います。この点については、安倍総理の御見解を伺いたいと思います。
個人番号カードについてお聞きします。
修正協議の過程で、通知カードの送付及び通知カードと引き換えに個人番号カードを交付するという項目を追加したと承知しています。その修正意図は何でしょうか。
また、通知カードも、免許証やパスポートなど写真付きの証明書を一緒に提示することで、個人番号カードと同じように使えるとのことです。そうであれば、通知カードのまま持ち続けて、個人番号カードの交付が進まなくなる可能性もあるのではないでしょうか。それはそれでよいというお考えなのか、やはり通知カードではなくて個人番号カードの交付を進めるべきとお考えなのか、その理由、甘利大臣にお答えいただきたいと思います。
東日本大震災の直後に、私は、長くスウェーデンに住む共通番号を持つ日本人に、あることをお聞きしました。スウェーデンでは、生まれてすぐに番号が付与されます。その際、番号が打刻されているブレスレットだったか、あるいはネックレスだったかもしれませんが、そのようなものを配付される。そして、そのときの注意書きに、外出時、特に緊急時に避難するようなときは必ず身に付けてくださいというふうに書かれているようです。まあスウェーデン語ですので、私は訳してもらったんですが。つまり、このような、東日本大震災のような大災害、不幸にして身元を証明できるようなものがないという場合でも、番号が打刻されたこうしたブレスレットあるいはネックレスさえ身に付けていれば、御遺体の身元が分かりやすい、判明しやすいということであります。
個人番号カードとは別にこのような方法も導入すれば、災害や大事故の際でも有効だと思います。個人番号カードとは別に個人認証の方法を導入するお考えはありませんでしょうか、甘利大臣にお伺いいたします。
マイナンバー法案に反対する意見の多くは、個人情報の漏えいや不正使用に対する懸念です。これは、言ってみれば、情報管理に対する行政への不信とハッキングへの不安です。こうした不信感、そして不安感を払拭するには、行政の情報管理、運用の透明性をいかに高めるか、また、個人がその取扱いを管理、監視できる制度をどのように構築していくかがキーとなると思います。
個人情報保護体制については、住基ネット導入時にも同様の意見がありました。平成十四年当時と今とではITに関する国民の意識と行動も大きく変わりました。例えば、ネットショッピングあるいはいろんな店で、販売店などでポイントカードを作成するためには何のためらいもなく個人情報を提供する一方で、基本四情報の提供のみであっても、同窓会などの名簿作成には抵抗感を持つ方もいらっしゃいます。
こうした状況の中、個人情報保護の在り方も時代とともに考え直す、見直す必要もあるかもしれません。個人情報保護の見直しに関する安倍総理の御見解をお伺いしたいと思います。
民主党は、平成十九年に、社会保険料の未納をなくし、税と社会保険料の徴収業務を一元化する歳入庁設置法案を提出いたしました。今国会におきましても、民主党、みんなの党、維新の会、生活の党、みどりの風の五党共同で、四月十六日に歳入庁設置法案をこの参議院に提出をいたしました。残念ながら、まだ委員会に付託されていません。この機会に審議入りを求めたいと思います。マイナンバーを活用していくためにも歳入庁設置も有効かと思いますが、安倍総理のお考えを伺いたいと思います。
マイナンバーという名称は平成二十三年の二月から三月にかけて広く募集をして決まった名称ですが、実は答弁を見ますと、甘利大臣は余りマイナンバーという言葉を使わず番号法という言葉を使っていらっしゃいます。甘利大臣はマイナンバーという名称が気に召されていないような気がするわけですが、また、この制度の導入に向けては地方自治体の協力と連携が必要だと、そういう意識の下で、平成二十三年度、二十四年度の二年間にわたって全国四十七都道府県においてシンポジウムを開催して理解を求めてまいりました。
しかし、まだまだ国民への理解は進んでいないと思います。今後、広く国民の皆さんに納得してもらうことが大切だと思います。国会での議論はもとより、政府におかれましては正しく国民の皆さんに理解してもらうように最大限の努力をしてもらうことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 藤本祐司議員にお答えをいたします。
番号制度の利用範囲の拡大についてのお尋ねがありました。
個人番号の利用範囲については、民間でも幅広く利用できるようにすることが一層の国民の利便性の向上に資するとの御意見や、御指摘のように民間の創意工夫を生かして成長戦略へと結び付けていくことが重要との御意見がある一方、個人情報保護等の面から幅広く利用することを懸念する御意見もあることから、まずは社会保障分野、税分野などに利用範囲を限定しています。
将来の個人番号の利用範囲の拡大については、番号法の施行の状況等を勘案し、国民のニーズや理解を得ながら検討を進めることが重要と考えています。
個人情報保護法制の見直しについてのお尋ねがありました。
個人情報保護法制につきましては、消費者委員会での議論や国際的動向等を踏まえ、関係省庁一体となって、引き続きしっかりとした検討を進めてまいります。
野党が提出された歳入庁設置法案についてのお尋ねがありました。
野党が法案で御提案されている歳入庁については、現在の国税庁に近い職員数で新たに年金保険料の徴収業務等も行われるものと承知をしており、その場合、業務に必要な人員をどう確保するのか、そもそも年金保険料の納付率向上につながるのか、また、逆に国税の徴税能力が低下するおそれはないのかといった点から慎重な考えもあると認識しています。
いずれにしても、政府としては、自民、公明、民主の三党合意に基づく税制抜本改革法の規定に基づき、年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁を含め、幅広い観点から検討を進めてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣甘利明君登壇、拍手〕
○国務大臣(甘利明君) お答えをいたします。
まず、国民の利便性がどのように向上するのか、年金記録の管理等の具体的な例に沿って答弁せよというお尋ねがありました。
年金記録の管理につきましては、最新の住所等と関連付けて重複のないように付番される個人番号を活用することによりまして、住所等の基本情報の変更があった場合でも、より確実かつ効率的な同一の記録管理に資すると考えております。
それから、生活保護の不正受給防止につきましてでありますが、保護の決定等に当たり、年金等の社会保障給付の受給状況等の調査がより効率的かつ正確に行うことができるものというふうに考えております。
自己情報の入手につきましては、自宅のパソコンなどから行政機関が保有する自己情報の確認などが行える仕組みとして、マイポータルを準備することといたしております。
税金の確定申告につきましては、社会保険料控除の対象となる保険料などの確定申告に役立つ情報をマイポータルで確認できるようになりまして、確定申告の負担が軽減されると考えております。
そして、納税につきましては、個人番号や法人番号を用いることによりまして、法定調書の名寄せや申告書等との突合がより適正かつ効率的に行えるようになりまして、所得把握の正確性が向上し、適正、公平な課税に資するものと考えております。
次に、番号制度導入による初期投資額及びランニングコスト及び費用に対する効果についてお尋ねがありました。
番号制度導入に係る費用として、現時点で、新規にシステム開発を要する個人番号の付番関係システムや情報提供ネットワークシステムの構築等に三百五十億円程度を見込んでおりますほか、個人番号を取り扱うそれぞれの機関におきまして既存システムの整備に二千三百五十億円程度を見込んでおります。
また、ランニングコストでありますけれども、初期費用、つまり合計で二千七百億円でありますが、この初期費用の一〇%から一五%程度を見込んでおります。
一方、番号制度の効果の多くは定性的な効果でありまして数値化がなかなか難しいところでありますが、今後、番号制度の詳細を検討する中で、国会での御議論も踏まえまして、どのような数字が試算できるか検討を進めてまいりたいと考えております。
次に、通知カードの導入意図及び個人番号カードの交付についてのお尋ねであります。
通知カードは、番号制度の円滑な定着に向けまして、個人番号カードの交付を受けていない方が、個人番号カードの交付を受けるまでの間、行政機関の窓口等で個人番号の提供を求められた際に、免許証など顔写真付きの本人確認書類と併用して個人番号の確認ができるよう導入するものであります。
個人番号カードは、社会保障分野や税務分野等の各種手続で個人番号を告知する際にカード一枚で本人確認と個人番号の確認を行うことができますほか、ICチップの空き領域を活用しまして各種施策の利用者カードなどにも利用できるようにしております。個人番号カードの利用場面の拡大や利便性の向上によりまして多くの方に取得していただけるよう取り組んでまいります。
次に、個人番号カード以外の個人認証方法についての検討についてお尋ねがありました。
番号制度では、個人番号の提供を受けるときは、対面におきまして運転免許証などの顔写真付きの本人確認書類と通知カードの提示があれば、個人番号カードの提示によるものと同様に本人確認と本人の個人番号であることの確認ができることとしております。
また、マイポータルへログインのときのオンライン上での本人認証でありますけれども、個人番号カードに登載する公的個人認証を活用することとしておりますけれども、個人認証の手段の拡充、先ほどのブレスレットの話もありましたけれども、この手段の拡充に向けた技術的な検討を進めてまいります。
最後に、マイナンバーという呼び名でありますが、特に私は嫌っているわけではございません。(拍手)
─────────────
○議長(平田健二君) 石川博崇君。
〔石川博崇君登壇、拍手〕
○石川博崇君 公明党の石川博崇です。
私は、公明党及び自由民主党・無所属の会を代表し、ただいま議題となりましたいわゆる番号法等関連二法案について質問をさせていただきます。
今回の番号法案は、昨年、民主党政権が提出したいわゆるマイナンバー法案に対し、自民、公明党との修正実務者協議を踏まえ、国民の視点に立ち、より分かりやすく、より安全、安心な制度とするため、公明党の主張も随所に盛り込まれた上で、改めて今回提出し直されたものです。
今回の番号制度の実現により、一つ、社会保障と税、すなわち受益と負担の公平性と正確性を実現し、必要な人に必要な支援を届けることができる、二つ、申請手続に求められる書類が簡素化され、ワンストップサービス化が進み、国民の利便性が向上する、三つ、行政機関同士の情報連携が進み、効率的な行政、効率的な政策を実現することができる。番号制度には以上のような点が期待でき、超高齢化社会の進展と厳しい国家財政の現状を抱える我が国にとって欠かすことのできない極めて重要な制度であると認識しております。
しかしながら、一方で、詳細な制度設計はこれからであり、情報管理の在り方、プライバシー保全、番号制度の利用範囲、行政事務コストなどについて不安の声があることも事実です。政府には、こうした国民の不安に対し、今後とも誠実かつ積極的にこたえるよう不断の努力を冒頭強く求め、具体的な質問に入らせていただきます。
まず初めに、今回の番号制度の意義について伺います。
この番号制度は、我が国で初めて国民一人一人に外に見える番号である個人番号を付し、これを社会保障、税、災害対策といった分野を横断して活用する制度を構築するものです。
平成十四年以降活用されている住民票コードは、外に見えない番号ですが、それでも当時、住基ネットワークの構築に対しては反対意見も強く、国会審議においても激論が交わされました。それから十年近く経過した今、この番号法案提出に当たり、課題や懸念をどう克服されてきたのか、あわせて、今まさに番号制度を導入しなければならない意義と制度導入に向けた御決意を安倍総理にお伺いいたします。
次に、国民の皆様に特に懸念のある情報の安全性確保に関して伺います。
今国会に改めて提出された番号法案には、公明党の主張を受け、番号制度の基本理念に個人情報保護への配慮が規定され、また特定個人情報保護委員会の権限を強化するなど、昨年前政権提出の法案から多くの修正がなされました。これら情報の安全性確保に関して新たに追加された内容とその意義について、甘利大臣にお伺いいたします。
また、三党実務者の修正協議において、公明党は、番号利用に関する国民の情報リテラシー、活用能力向上に資する取組の推進を求めるとともに、高齢者や障害者などいわゆる情報弱者の方々への配慮を訴えました。番号法案の附則にも盛り込まれたところです。
これまでの政府答弁によると、情報弱者対策として公的機関にインターネット端末を設置するなどとされていますが、その場合、多くの方に足を運びやすい場所であること、どなたでも使いやすい端末を用意すること、のぞき見などがされない安心して閲覧できる環境を整備することなどが必要となります。さらには、高齢者、障害者が自宅からマイポータルにアクセスする場合でも、読み上げソフトに対応したウエブページとするなどの配慮も必要となります。
今後の詳細設計に当たっては、是非当事者の御意見を直接伺いながら取り組むべきと考えますが、甘利大臣の御所見を伺います。
次に、番号制度導入による行政コスト削減について伺います。
番号制度を導入するためにどれぐらいの費用が掛かり、またどれくらいの行政コスト、無駄の削減が可能となるかを示すことは、国民の理解を得るために必要であると考えます。これまでの政府答弁によると、制度導入に係る費用は総額で二千億円から三千億円程度が見込まれるが、削減効果については数値化が難しいとされております。しかし、数値として示すことが困難であっても、どのような行政事務が効率化できるのか、行政コストを削減するためにどのような取組を行うのかを具体的に示すべきではないでしょうか。甘利大臣に御所見を伺います。
次に、番号制度に係るシステム整備における政府CIOの役割についてお聞きします。
番号制度導入に係る費用の多くは、情報提供ネットワークシステムを始め、複数府省庁及び地方公共団体におけるシステム整備に要するもので、これらのシステムには、運用、維持のための費用や、一定期間を経るとシステムの更新経費も必要となります。こうした各省にまたがるシステム整備経費が過大とならないようにするためにも、内閣情報通信政策監、いわゆる政府CIOの役割が重要と考えます。
番号制度に係るシステムの整備、運用、維持について、政府CIOにどのような役割を期待しているのか、山本大臣にお伺いいたします。
次に、住民基本台帳記録の正確性について伺います。
今回、国民一人一人に付番される個人番号は、住民票コードを変換して生成されます。そのため、個人番号の前提として、住民基本台帳の記録が正確であることが求められます。しかし、平成二十二年には、既に亡くなっておられるにもかかわらず届出がないために戸籍や住民票が残っていた所在不明高齢者の問題が明らかになりました。また、震災に伴う避難、DVやストーカー行為等の被害を受けているなどの事情により住民票を残して転居されている人、出生届が提出されていないため住民票が作成されていないお子さん、そのほか様々な事情の方々もおられます。
こうした個々の事情に十分配慮した上で、個人番号の付番の機会に住民基本台帳の記録を改めて精査する必要があるのではないでしょうか。また、様々な事情により住民票に記載されている住所と異なる場所に居住せざるを得ない方々にも必要な行政サービスが提供できるように、きめ細かに配慮することも必要と考えますが、新藤総務大臣の御所見をお伺いいたします。
次に、個人番号カードの交付の際の不正取得防止策について伺います。
住民基本台帳カードについては、偽造された運転免許証を使った、いわゆる成り済ましによる不正取得が多発したことを受け、運転免許証が真正なものであるか確認する、複数の本人確認書類の提示を求める等、本人確認措置が徹底されております。
個人番号カードにはICチップの空き領域活用も可能となっており、その利用範囲によっては、もし仮に成り済ましが行われれば被害は更に大きくなることも予想され、住民基本台帳カード以上に慎重かつ厳格な本人確認が必要であると考えます。個人番号カードの交付手続の際には個人番号の通知に使われた通知カードの返納が必要ですが、このほかの不正取得防止策はどのように検討されているのか、甘利大臣にお伺いいたします。
最後に、特定個人情報保護委員会について伺います。
特定個人情報保護委員会は、我が国で初めての個人情報保護に係る独立性を持った監視機関として、特定個人情報の取扱いに関する監視、監督、苦情の申出についての必要なあっせん、特定個人情報保護評価を承認することなどとされています。しかし、特に特定個人情報保護評価については、評価対象が行政機関、地方公共団体など数千に及ぶことが想定されるため、承認手続の遂行に支障のない十分な人員体制の構築と予算措置が不可欠と考えますが、甘利大臣の御所見をお伺いいたします。
以上、この度の番号制度により公平かつ公正な社会保障制度を実現していくためにも、全ての国民の皆様にこの制度が浸透し、理解を得ていくことが重要との観点から、国民の抱く懸念払拭に資する質問をさせていただきました。
なお、最後に、今回の番号法案のように、国民の利益と国家の行く末にとり極めて重要な課題に対しては、与野党の立場の相違はあったとしても、国民の信託を受けた国会が幅広い合意形成を図りながら一つ一つ決断を下していかなければなりません。その意味で、これまで長年の懸案であったこの番号制度法案が本日このように参議院本会議審議入りができたことは、自民、公明両党による安倍政権の誕生により、国民の利益のため、決めるべきは決める、進めるべきは進める、それができる政治体制がようやくスタートした象徴的な事例と高く評価したいと思います。こうした国民的課題を一つ一つクリアし、推し進めていくためにも、今後更に政治が安定することこそ国民が真に期待するところであると私は確信をしております。
私ども公明党は、国民本位の政策実現のため今後も全力を尽くすことをお誓いし、質問を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 石川博崇議員にお答えをいたします。
過去の経緯を踏まえた番号制度導入の課題と対応、制度導入の意義についてのお尋ねがありました。
番号制度は、個人情報の国家管理、漏えい、不正アクセスなどの国民の懸念があり、これまで導入されてこなかったものと考えています。こうした個人情報保護に関する国民の懸念には、住基ネットについての最高裁合憲判決の内容も踏まえつつ、制度面、システム面の両面からしっかりと対応してまいりたいと考えています。
番号制度は、情報化社会のインフラとして社会保障制度や税制の基盤となるものであり、早期に導入し、より公平な社会、国民の利便性向上、行政の効率化などを実現してまいりたいと考えています。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣甘利明君登壇、拍手〕
○国務大臣(甘利明君) お答えをいたします。
まず、情報の安全性確保に関しまして、昨年、民主党政権の下で提出された法案からの修正点の内容と意義についてのお尋ねがありました。
今般、政府が提出をしております番号法案は、一として、総務大臣及び情報のやり取りを行う者が情報提供ネットワークシステム等の安全性及び信頼性を確保しなければならない旨の規定を追加したほか、二といたしまして、特定個人情報保護委員会の権限として、情報提供ネットワークシステム等の構築及び維持管理に関し、安全性、信頼性の観点から、総務大臣等に対し、必要な措置の実施を求めることができる旨の規定を追加するなど、より情報の安全性確保に配慮したものとなっております。
次に、マイポータルの高齢者や障害者などへの対応についてのお尋ねであります。
高齢者や障害者などのいわゆる情報弱者の利用環境の整備の一環として、公的機関へインターネット端末を設置することを予定をいたしております。その設置場所につきましては、利用しやすい場所であるとともに、のぞき見などのプライバシーにも配慮したいと考えております。
また、詳細設計に当たっては、情報弱者にも配慮をした画面設計とする必要があることから、関係者の皆様からも十分に御意見を伺いながら進めてまいります。
続いて、行政コスト削減のための取組についてお尋ねがありました。
行政の効率化に不断に取り組むことは、行政に課せられた重要な課題であると認識をいたしております。番号制度の導入によりまして、ITを活用した行政事務の効率化を推進する基盤が整備されることから、関係大臣とも調整をしつつ、今後、政府CIOにも御協力をいただき、番号制度に係る社会保障分野や税分野等の個々の行政事務における業務フローの見直し等に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
続きまして、個人番号カードの不正取得防止策についてのお尋ねであります。
番号法案では、個人番号カードの不正取得を防ぐために、市町村長は、個人番号カードの交付の際に、その者が本人であることを確認するために、主務省令で定める書類の提示を受け又は政令等で定める措置をとって本人確認を行うことといたしております。
個人番号カードの発行手続や確認書類の詳細は、今後、政省令で定めることといたしておりますが、確認書類としては、例えば偽変造の有無を確認した運転免許証やパスポート等の顔写真付きの官公署が発行した書類などを規定することを想定をいたしております。
最後に、特定個人情報保護評価に関連して委員会の体制構築についてお尋ねがありました。
特定個人情報保護評価は、行政機関の長や地方公共団体の機関等が特定個人情報の漏えい等の危険性及び影響について自ら評価する制度であります。この評価書に対しまして、委員会が実効的な承認作業を行うことができるように、プライバシーへの脅威の度合いに応じまして承認の方法に差を設けるなどの制度設計がなされるものと考えております。
さらに、評価書の承認作業を含む委員会の業務の実効性を確保するため、必要な人員、体制が整備されるよう努めてまいります。
以上です。(拍手)
〔国務大臣山本一太君登壇、拍手〕
○国務大臣(山本一太君) 社会保障・税番号制度に関するシステム整備等における政府CIOの役割についてのお尋ねがありました。
社会保障・税番号制度に関するシステムについては、複数府省や地方公共団体にまたがることから、経費が過大とならないように政府全体としてのIT投資の最適化や情報システムの相互運用性等を確保し、府省間の緊密な連携を図ることが重要と考えます。
このような観点から、各府省に対し、高度な総合調整を行う権限等を法制化する内閣情報通信政策監、いわゆる政府CIOが十分に司令塔機能を発揮し、社会保障・税番号制度に関するシステムの円滑な整備や安定的な運用に向けて寄与してまいります。(拍手)
〔国務大臣新藤義孝君登壇、拍手〕
○国務大臣(新藤義孝君) 石川博崇議員から、住民基本台帳の記録の正確性についてお尋ねがございました。
住民基本台帳は、住民に対する行政サービス提供の基礎となるものであり、住民基本台帳の記録が正確に行われることは極めて重要でございます。
さらに、個人番号は、市町村長が当該市町村の住民として住民基本台帳に登録されている者について指定をし、その者の住民票に記載された住所に通知することとなるものでございます。番号制度の導入に向け、住民に対し、番号制度の利便性とともに改めて住民登録の重要性について周知を図ることが重要と考えております。
総務省といたしましても、市町村に対し、住民基本台帳の記録の適正な管理を図るよう助言するなど、平成二十七年十月に予定される個人番号の通知までにしっかりとした対応をしてまいりたいと、このように考えております。
なお、各種行政サービスの提供に当たっては、住民基本台帳を基礎としながら、その具体的な対象範囲については、考慮すべき他の要素の有無も勘案して各制度において定められているものでありまして、それぞれの制度の趣旨に基づいて必要な行政サービスが適切に提供されるべきと考えております。(拍手)
─────────────
○議長(平田健二君) 中西健治君。
〔中西健治君登壇、拍手〕
○中西健治君 みんなの党の中西健治です。
政府提出のマイナンバー関連法案について、みんなの党を代表して質問をさせていただきます。
みんなの党は、先ほど民主党の議員の方からも言及がありましたけれども、先月十六日、現在の国税庁と日本年金機構等の業務を統合して、税金と社会保険料を一体的に徴収する歳入庁を設置することにより、徴収に係る行政の業務効率化を図り、徴収率を向上させるとともに、何よりも納付にかかわる受付窓口を一本化することによる国民の利便性向上に資する歳入庁設置法案を、民主党、日本維新の会、生活の党、みどりの風と五党共同で提出をいたしました。
我々みんなの党は、本マイナンバー法案は、個人情報保護に対する万全の備えを行うことを大前提として、歳入庁設置のために必要な基盤が整えられる大きな一歩であると考えています。衆議院における審議過程において、みんなの党の主張を取り入れた修正案が可決され、本参議院に転送されたことについても高く評価するものであります。
本日は、そうした立場を前提に、今後検討されることとなっている諸案件につき、基本的な考え方、理念について確認をするために、七つの質問、番号を付して質問を行いたいと思います。是非、お答えいただく際には、何問目の質問に対する答えなのかを明示していただき、また、まとめて答えることがないようお願いを申し上げます。この点は民主党政権でも誠に丁寧に対応していただきましたので、安倍政権におかれましても是非よろしくお願い申し上げます。
まず、本法案の目的及び基本理念に関してであります。
政府原案では、行政運営の効率化を図り、もって国民の利便性の向上に資することとなっておりましたけれども、衆議院において国民の利便性の向上及び行政運営の効率化に資することと修正が行われました。改めて、本法案によって国民の利便性が向上するということが、行政運営の効率化と同様、少なくとも同じ重さで求められているということをまず一点目として総理に御確認いただきたいと思います。
そこで、国民の利便性向上ということで思い起こされるのが住民基本台帳カードであります。住基ネットも含めたシステム構築に約四百億円、維持運用経費に毎年百五十億円程度掛けてきたにもかかわらず、普及率が僅か五%にとどまっているのは、まさに国民にとって利便性向上にさほどメリットがなかったことが要因と言っても過言ではないと考えています。
今回新たに構築するネットワークシステムと既存のシステムの改修だけでも約三千億円程度、運用経費で年に数百億円のお金をつぎ込むわけですから、それに見合う利便性の向上や行政運営の効率化がなされなければならないと思うわけですが、政府はこれまで、本法案での効果を定量的に示すことはできないとしてきています。投資を行うに当たって、費用対効果の検証を行い、効果が投資を上回るようにするために効果の目標を設定するのは、民間会社では当然のことです。住基カードが普及しなかった反省をしっかりと踏まえる意味でも、今回の法案により、利便性の向上や行政運営の効率化における定量的な数値目標を掲げることが肝要と考えますが、二つ目としてこの点に関する総理の見解をお伺いいたします。
本法案における効果がはっきりと国民に示せないのはなぜなのでしょうか。それは、本法案が国民の利便性向上や行政運営の効率化という命題に対する第一歩にすぎず、本当に効果が出るには、これを基盤として更にその先に進まなければならないからではないでしょうか。幾ら行政機関が個人番号を共有して行政運営を効率化しても、社会保険料や税金の支払のために、税務署、役所、年金事務所、ハローワーク、労基署等々、何か所もの窓口に行かなければならないままでは、国民にとって大した利便性向上にならないですし、行政運営の抜本的な効率化にも寄与しません。窓口の一本化、受付体制の一元化等が行われなければ真の効果は発揮できないということかと思います。
総理は、歳入庁設置について、徴収体制の強化の観点から幅広く検討すると繰り返しおっしゃっておられますけれども、本法案の目的、理念に掲げる国民の利便性の向上、行政運営の効率化の観点からこそ検討されなければ、マイナンバー導入に対する投資経費が正当化されないのではないかということについて、総理大臣の見解をお伺いいたします。これが三つ目の質問です。
政府は、徴収体制の強化について、歳入庁設置の可否も含めて現在検討を行っているということでありますけれども、体制強化とともに重要なことは、公正な税、保険料等の徴収のための所得の正確な把握であると考えます。給付付き税額控除を導入するか否かにかかわらず、所得を正しく把握し、公正に税を課すということが必要であると考えますが、マイナンバー導入でどこまで所得や資産を正確に把握できるかということが肝心です。
衆議院の審議過程において、我々みんなの党の提案として、国税庁がデータとして保有していない年収五百万円以下の方の所得データを把握できるよう条文の追加修正を行いましたが、個人事業主の事業収入や不動産からの賃料収入、あるいは利子所得等、把握ができないものをどうしていくかという課題も残っています。
最終的には、マイナンバーと口座のリンクや銀行口座の名寄せなどによって、クロヨンあるいはトーゴーサンとやゆされる捕捉率の不公平な状況を改善していくことが必要と考えていますが、法施行後三年をめどとして検討することとなっている個人番号の利用範囲の拡大の検討に当たっての、正確な所得の把握という観点についての政府の基本的な姿勢を甘利担当大臣に四つ目の質問として伺わさせていただきます。
次に、行政運営の効率化に関してお伺いいたします。
本法案では、個人番号を生成するための業務を、地方公共団体情報システム機構を新たに設置してこれに当たらせるとしていますが、実はこの機構は、民主党政権下の事業仕分において仕分対象となった財団法人地方自治情報センター、LASDECを改組して設置するものであります。改組するに当たって、事業仕分で指摘された点も含めて、十分にスリムな体制にした上で改組を行うこととしているのか、こうしたやり方で真の行政運営の効率化が図られるのかということにつき、総務大臣の見解を伺います。これが五つ目の質問です。
さて、何といっても、本法案に対する国民の懸念は個人情報保護といったセキュリティーの観点です。法案では、第三者委員会である特定個人情報保護委員会を設置して、立入調査権を持たせるなどの必要な対応を施しているとされています。その中で、行政機関が特定個人情報ファイルを保有する場合には、あらかじめ個人のプライバシー等に与える影響を予測、評価する評価書を委員会が承認することとなっているわけでありますが、ロードマップによれば、実際に個人番号カードが交付され、利用が開始される二〇一六年一月にはこの作業は終了しておらず、各部署間での連携が始まるその一年後の二〇一七年一月までに終了することとなっています。
自治体だけでも千八百以上ある承認を行うわけですから、作業が膨大なものになることは理解するところですが、危機管理の観点から、このロードマップに問題はないのか、あるいは、こうした評価書の承認が膨大な作業ゆえ、形式的なものになってしまい、実効性を伴わないのではないかという不安の声もある中、六点目として甘利担当大臣に政府の見解を伺います。
危機管理といえば、委員会の陣容もまた大事なポイントです。委員会自体は、委員長一名、委員六名と規定されていますが、それを支える事務局の具体的な人数については明確な考えが示されていません。必要な場所には必要な人数はきちんと手当てをすることが大事であり、事務局にどのくらいの人員数を考えているのか、現時点での見解を甘利担当大臣にお伺いするとともに、歳入庁を設置すれば、そこで効率化できる人員を活用することができるわけで、全体の仕組みの再構築を視野に入れた行政の効率化を行いつつ、同時に必要な部署に人員を配置していくということが可能となると考えており、それについての政府の見解も併せて甘利担当大臣にお伺いして、これを最後の七つ目の質問とし、私の質問を終了させていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 中西健治議員にお答えをいたします。
まず一点目の質問として、国民の利便性の向上と行政運営の効率化との関係についてお尋ねがありました。
番号制度は、より公平な社会保障制度や税制の基盤であるとともに、情報化社会のインフラとして国民の利便性の向上や行政運営の効率化に資するものであります。国民の利便性向上と行政運営の効率化の実現は、いずれも番号制度を導入する重要な目的であると考えております。
二点目の質問として、効果の定量的な数値目標の設定についてのお尋ねがありました。
番号制度の導入による効果の多くは定性的な効果であり、数値化が難しいところでありますが、サービスの質の向上や行政運営の効率化に資するものでなければなりません。今後、番号システムの構築に当たっては、各府省においてしっかりと効果検証を行うとともに、十分な説明責任を果たすようにしていきたいと考えています。
こうした取組を通じて、行政運営の効率化及び国民の利便性の向上を図り、番号制度に関する国民の理解を得て制度の定着を図ってまいりたいと考えています。
三点目の質問として、歳入庁の検討と番号制度の効果についてお尋ねがありました。
歳入庁については、昨年成立をした税制抜本改革法において、自民、公明、民主の三党合意に基づき、年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施するとされているところであります。
他方、番号制度は、情報化社会のインフラとして社会保障制度や税制の基盤となるものであり、より公平な社会、国民の利便性向上、行政の効率化などを実現する観点から早期に導入する必要があると考えております。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣甘利明君登壇、拍手〕
○国務大臣(甘利明君) お答えをいたします。
まず、中西議員、四点目の質問といたしまして、個人番号の利用範囲拡大に当たっての正確な所得把握についての基本姿勢についてのお尋ねであります。
政府が国民の所得や資産をどこまで把握するのかは、それに伴う国民の負担等も勘案した上で、社会保障制度や税制といったそれぞれの制度の中で検討されていくものと考えております。いずれにいたしましても、個人番号の利用範囲の拡大につきましては、番号法の施行の状況等を勘案をしまして、国民のニーズや理解を得ながら検討を進めることが重要であると考えております。
次に、六点目の質問といたしまして、特定個人情報保護評価の評価書の承認についてのお尋ねであります。
特定個人情報保護評価は、行政機関等が個人番号を含む個人情報ファイルを保有する前に自ら行うものでありまして、二〇一六年一月から個人番号の利用を開始する場合にはその前に実施する必要があります。
なお、御指摘の点につきましては、二〇一六年一月以降も、ファイルを保有しようとする都度評価を行い、委員会の承認を得ていく必要があることを表させていただいたものであります。
特定個人情報保護評価の詳細につきましては、特定個人情報保護委員会の指針及び規則で定められるものと考えておりまして、これらを踏まえて実効的な承認作業を行うことができるよう努めてまいります。
次に、最後に、七点目の質問といたしまして、特定個人情報保護委員会事務局の人員数、歳入庁設置による行政効率化等についてのお尋ねであります。
特定個人情報保護委員会につきましては、委員会の権限を十分に発揮ができる体制を整える必要があるものと考えておりまして、今後、政府内で調整を行いまして、おおむね数十名程度の事務局体制でスタートをし、効率的かつ効果的な業務遂行に努めたいと考えております。
また、歳入庁につきましては、昨年成立をしました税制抜本改革法におきまして、年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施することとされておりまして、政府といたしましては、内閣官房副長官を座長とする関係省庁政務官によります検討チームにおきまして幅広い観点から検討しているところであります。夏ごろを目途に論点整理を行うことを予定をいたしております。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣新藤義孝君登壇、拍手〕
○国務大臣(新藤義孝君) 中西議員からの五つ目の質問であります地方公共団体情報システム機構についてのお答えをいたします。
前政権の下で行われた事業仕分におきましては、財団法人地方自治情報センターに対して、官庁OBの再就職の自粛、役員報酬の見直し等に関する指摘がなされましたが、その業務の必要性を否定する意見はなかったところでございます。また、むしろ一財団法人に委ねるのではなく、地方によるガバナンスを強化すべきという意見もあったと聞いております。
これを受けまして、財団法人地方自治情報センターは、これまでも、技術系の人材の理事長への登用、民間出身者の理事への就任といった役員の人選や役員報酬の見直し、外部有識者を交えた契約監視委員会の設置など、調達方法の点検、見直し等を実施しております。
地方公共団体情報システム機構につきましては、地方の代表等から成る代表者会議の決定した方針に従うとともに、有識者から成る経営審議委員会のチェックを受けながら業務が執行される仕組みとなっており、地方共同法人化により強化されたガバナンスの下で、これまでの指摘の趣旨も含め、意思決定の透明性を高め、更なる効率的な運営が行うこと、それが可能になると考えております。(拍手)
○議長(平田健二君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────
○議長(平田健二君) 日程第一 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。厚生労働委員長武内則男君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔武内則男君登壇、拍手〕
○武内則男君 ただいま議題となりました法律案につきまして、厚生労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、駐留軍関係離職者及び漁業離職者の発生が今後も引き続き予想される状況に鑑み、本年五月十六日限りで失効する駐留軍関係離職者等臨時措置法及び本年六月三十日限りで失効する国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の有効期限を、それぞれ五年間延長しようとするものであります。
委員会におきましては、駐留軍関係離職者対策を五年間延長する理由、駐留軍等労働者に対する労務管理の在り方等について質疑を行いましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────
○議長(平田健二君) これより採決をいたします。
本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕
○議長(平田健二君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕
○議長(平田健二君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 二百三
賛成 二百三
反対 〇
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────・─────
○議長(平田健二君) 日程第二 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。法務委員長草川昭三君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔草川昭三君登壇、拍手〕
○草川昭三君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、下級裁判所における事件の適正かつ迅速な処理を図るため、判事の員数を三十二人増加するとともに、裁判所の事務を合理化し、効率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三十三人減少しようとするものであります。
委員会におきましては、判事を三十二人増員する根拠、裁判官が子供たちから不人気な理由、冤罪を防ぐために裁判所と検察はどう取り組むか、障害者の裁判参加等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────
○議長(平田健二君) これより採決をいたします。
本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕
○議長(平田健二君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕
○議長(平田健二君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 二百三
賛成 二百三
反対 〇
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────
○議長(平田健二君) 本日はこれにて散会いたします。
午前十一時十八分散会