花水木 ;それぞれの年代の、その映画やそのシーンを観ると思い出すこととかね、
そういうの、ありませんか?
高校時代に映画を観はじめたという花水木さん、その原点の思い出を語っていただきました。
花; 高校に入った時にね、クラス違ったんだけど親しくなった子がいて、その子が
「名画座に行く」ーって、制服のまんま地下に降りてくような子で・・・
あの頃一緒に見たのが「ブーベの恋人」とか「禁じられた遊び」とか。
その子、どうしてるかなあーってふっと思い出しましたー
(私の映画の)原点ていうか。
小柄で、いい子で、頭がすごく良くて、で、ちょっと雰囲気がまわりと違うのね。
で、「いいねー」って言ってた男の子が一緒で(笑
秋田からの転校生だったんだけど、かっこいいーって。
で、たまたま、その女の子と男の子が家が近くて
・・・二人はすでに知り合いでね、ああ、仲いいんだーって。
C ; 笑
花;
で、私の方は、クラスが(男の子と)一緒だったの。その子もすごーいできて。
うちのクラス担任は英語の先生で、放課後に受験指導をする先生でね、 「はい、答えは〜」って
次々当ててって、私がわかんなかった時に、その男の子がそっと教えてくれたのー
それで、私、いっぺんに好きになっちゃって。。
k; ひゅう〜(笑
花;
そしたら、女の子のほうが、私の気持ちに気づいて
取り持ってくれたりしてねー
修学旅行のとき、一緒に自由時間歩いたり、お弁当食べたりしたの。
男の子の方は、その後、まあ、学校も離れちゃったりしたんだけどー
東北の方の学校に行ったしね。
で、彼女は、学校は違うけど東北の方の学校に行って、
そこまで、好きだったんだなーって
私のほうが後から気づいたりね。
映画をいっぱい観る子で、すごくいろいろ考えてて、繊細な子でね
で、学生運動のほうに行っちゃって活動して、
ー地下にもぐっちゃって、住所も何もわかんなくなっちゃってね、
だから、名画座に行った時のことがすごーく思い出になってて。
C ; 今も?
花; わかんないの、消息が。
で、高三の時はちょうど「ある愛の詩」の時期でー高二から高三のときでね
一番最初のスケートの場面なんか覚えてて、ちょうど受験の時期だったから
「これで、映画観にいくのは最後にしよう」って一緒にいった人も・・・
さっきの人じゃないんだけど、そんな思い出があって。
それぞれの年代の、その映画やそのシーンを観ると思い出すこととかね、
そういうの、ありませんか?
C ; そういうのは、ないんですよねー
私は、誰かと一緒に映画観にいったことあるかなーって。
だんな以外のひとと、映画を観にいったことって・・・
花; さっきの詳しい人は?
C ; そのひとは、一緒に行ったっていうんじゃなくて、チケットをよくくれたっていう・・・
花; ふうん
C ; 関係ないんだけど、おとといの日記だったっけ?
青春がどうのこうのって、
あの「アラジン」やってて、あの曲聴くとなんかせつなくなるの。
なんでかっていうと、娘が高校の時に、双子のように仲のいい男友達がいて、
うちのリビングでふたりで寝転がってハモったりしててね
で、高校最後の文化祭で、クラスの「アラジン」をやって、
うちに十何人泊まりに来て、練習してー 娘が青春楽しんでるのが
自分のことのようにーみたいなかんじで。
で、今私が好きなことやってるから、青春やり直すみたいなこと書いたのよ。
そしたら、昨日、さっそく、だんなからチェックが入って(笑
10時ごろ、電話が入って、まだ外にいたんだけど、
まあ、青春やりなおすのもいいけどーって(笑
そうねえ〜一度くらい、別の男の人と映画観にいきたかった・・かな?(笑
k; いいんですかー?書いてー
C ; いいですー
花; 笑
k; おふたりは舞台とかは見ないんですか?
C ; お芝居はねえ、一時すごく好きで、いろいろ観てましたー
私、舞台ではね、演鑑ってあるでしょ?演劇鑑賞会。
あれで、東京で観て
こっちにきたら、またやってたので、もう一回観た作品があったの。 うちのだんなが
「あれを2回見るなんて信じられないー」って言ってたけどー
えーとね、「ビニールの城」
花; ふうん、えーと?
C ; あのね、緑魔子
花; ああ〜〜
C ; 石橋蓮司
k; おおーーー
C ; すごかった!あれはね、常盤座っていって、もうすぐつぶしちゃうって
いう芝居小屋でやったの。
その空気たるや、すごかったねー
だんなの弟がけっこう映画や芝居を観る人でね、
「いいよ」って言ってて、ひとりで観にいったのね。
で、木のベンチみたいな椅子でね、
えーと、説明ができません!(笑)どんないすごいかはー。
途中でもう泣いてね、しばらく、数日
その空気に包まれてたねー。すごかったね、あれは。
C ;
で、20年前にこっちに引越してきたら、すぐに演劇鑑賞会が市民会館であってね。
やっぱり演劇の好きな人の間で評判になったのね、で、よんだんだけど、
水をねーたくさん使うの、こう、水槽の中に入ったりして、で、水槽も倒れて水が出ちゃったりするの。
だから、なかなかやらせてくれなかったらしいの。
で、2回観てよかった部分もあるけど、2回目はね、いっぱいいろんなものが来た1回目と比べるとね
哀しみだけがー来たみたいな・・・でも、それまで観た全部のお芝居に比べて一番すごい!
あれもね、わかんない人にはさっぱりわかんないって言われててー
花; でもね、主役の二人の名前聞いただけで・・・不思議さはわかる・・・
C ; アングラって、私もいっぱい観たんだけど、わかんないけど、
雰囲気がどうだったって、 言葉では説明できないんだけど、
どうして感動してるかは全部わかるみたいなー
腹話術士が出てきて、腹話術で、自分ともうひとりの自分とーとかだったり、
なんか、なんともいえないんだけどすごかった、とか。
私、一応、卒論が「演劇論」だったのね。だから、当時はね、シェークスピアを
訳しているみたいな人が
ゼミの先生だったの。だから、劇団雲とかーもうないかなー太地喜和子とか江守徹とか
けっこう観ましたよ。
花; ふうん
C ; 太地喜和子や江守徹は、うまい!もう、目の前でやってるっていうのもあったけど。ナマの面白さ。
映画の面白さと舞台の面白さはまた違う。
C ; わたし、戯曲が好きだったのね。テネシー・ウイリアムスとか
花; 「ガラスの動物園」ねー観ました。
C ; あれはね、ぴあとか、小さいところでやってたら、
時間あれば観にいく〜みたいに 3回くらい観たかなあ。
花; 私が観たのはね、あの人、村田雄吉がやってたの。あのがっしりした・・・
相手役が、あの、離婚しちゃった・・芥川賞作家と結婚してた・・南果歩
C ; 演劇はねえ、興味あったから。
花; だから、娘さんもねーお母さんの影響?
C ; かなー私ね、舞台が好きで、大学の時も合唱指揮をしてたでしょ。
四大学女声合唱連盟っていうのがあってー上智と立教と慶応と学習院と・・・
そこの女声合唱団が集まって一年に一回合同でステージをやってて
ちょうど私たちが3年で役員やってた年が70年でしょ?
で、あちこちでデモやったり集会やったりしてて、こんな時に歌だけ歌ってて
いいんだろうかって話になって、
私たち上智が当番の時、部長やってた人が運動やってた人で、
じゃあ何かテーマを作ろうってー
「70年若者たちの願い」みたいな、そんなテーマで例えば学習院はミサ曲を歌うとか、
どこかが、沖縄の歌を歌って。ちょうど返還したとかそのへんでしょ?
k; まだーですねー72年かな?
C ; そうだっけ?で、私たちは「眠れ幼き魂(こころ)」っていう、佐藤真さんの、
戦争で死んだ女の子が歌ってるって設定の曲でね。
NHKの子役の子を連れてきて、セリフを言わせたら、その子がー弥生ちゃんていう子だったんだけど
うまくてねー
花; 笑
C ; ほんとに、うまかったの。ほんとに言いながら、泣きながら、もう演技がすごくて、
この子絶対なにかになるから、サインもらっとこうねーって言ってたくらい(笑
で、合同曲が、中田喜直さんの「心の花園」、中田さんが指導に来てくださったりしてね。
で、そういう構成とかを考えるのがすごく好きだったの。今も好きだけど。
だから、聴いてる人にとって、こっちからどういうメッセージを送るかって、そういう視点で
考えるのが好きで。
で、コーラスの起源ていうのは、ひとつは教会音楽なんだけど、
もうひとつはギリシャ悲劇の中に コロスっていう集団があって、今やってる場面の
説明を、歌のように客席に向かって歌いながらするんですよ。
それからの流れで、コーラスになったっていう・・・
だから、コーラスが本当に好きだったから、なんかコーラスと関係付けられないかなって
いうのがあったの。 で、卒論、何書いたのかもう忘れちゃったんだけどー
舞台ってね、第四の壁が、こっち側にもあって、そこの中で日常行われていることを
こっち側でただ観てるっていう、
自然主義派の表現から、ちゃんと客席に向かって
話しかけたり表現したり投げかけたり、っていう方に変わってきて、
そのずっと先にアングラ劇とかがあるんだけど、そのあたりの、変わり始めた頃の話を、確か書いたんだった。
花; ふうん
C ; それで、深いところに衝撃を与えるーっていう・・・
だからやっぱりあれだ、ただ発表するだけじゃいやで(笑
下手でもいいから、何か伝わらなきゃーって、それはその頃できた考え方なのかもしれない。
私にしてみれば当たり前でしょう〜ってことなんだけど、その頃からかもしれない。
C ; だから、映画でもなんでも「何が言いたいの?」ってわかんないのがイヤかも。
k; 一貫してますね
花; 何にも残んない時ってね、いっぱいありすぎる時もそうかも。
いっぱい投げられてー
なんか、ひとつひとつはわかる気がするんだけど、なんか、どれかにしてくれた方が
いいような気がする。
それは、私の感じ方なのかもしれないけど。
「ラストサムライ」なんかがけっこうそうだったかなーって。
で、この間、映画じゃないんだけど、知り合いのお子さんの大学の入学式のお話をきいたの。
学長さんがね、20分くらいしゃべってらしたんですって。温厚そうで人柄もいい方だったらしいけど
テーマがいっぱいありすぎて・・・余りにも多すぎるから、いくら大学生でもね
何をキャッチしていいのか、
わかんなかったそうなの。それって・・・
C ; それはね。ご本人もわかってないんじゃないんじゃない?
花; そうかなー
C ; だからね、表現はね、たとえば恋愛が素晴らしいってことであっても
いいし、
命が素晴らしいでもいいし、
なんでもいいんだけど、それをちゃんと自分のものにして表現してくれないと、こっちまで届かないんだよね。
言うだけならなんだって言えるじゃない。映像なら、なんでも言えるし。
だから、セカチュー(世界の中心で愛を叫ぶ)と「いま、会いにゆきます」
だったら、 ダントツ「いま、会いにゆきます」の方が面白かったんだけど・・・
今、私は、なんで、あんなにセカチューが面白くなかったんだろうって考えてて・・・
k; だけど、あれ、ベストセラーになったんですよね、メッセージがシンプルだったからって・・
C ; だけどさーあんな話いくらでもあるよねー何がそんなによかったんだろう。。。
k; でも、テーマってそんなに変わらない気がするんですけどね、映画もそうだし。
それを、今生きている人にどう伝えるかーって伝え方のような・・・伝え方の違いのような
花; うーん、今の若者たちってね、ああいうのすごく新鮮なのかなーって
C ; そうなのかなー今の子は、情報がありすぎるのかな
それに、ストレートに言うのはかっこ悪いー
ひねって言うのが当たり前になっている子達にとっては、
ああいう風にストレートに言われると、かえって感動するのかもしれないね。
花; ・・・なのかな。ほどよく、くすぐってくれちゃってーなのかしら。
けっこう男の子が泣いちゃってーってきくから。
k; なんか、結局、伝えようとするテーマが同じだとしたら、
なんで、また?映画を観にいくのかなーみたいに思えないこともない・・・
C ; でもね、ああ、こういうことを、こんな風に伝えられるのね、とか、
こういう風にとらえるんだーとか
そういう発見がマイナーな映画にはけっこうあるのよねー
映画の可能性っていうか、まだまだあるんじゃないのーって気はする。
C ; 私ねー大学出てコーラス辞めたでしょ?その時に、
こう、なんかむなしくて
コーラスって、いくらその時に自分たちが歌って感動しても残らないでしょ?
テープとかには残るけど、それは残ったうちに入らないし。
だから、何のためにやってるんだろうっていう時期があったのね。
でも、また再び本気で20年くらい前に、はじめた時に、あ、それはそれでーって。
PTAコーラスの、指揮者になる前に、初めて入ったひとの挨拶の時に
「昔はそう思ってたんだけど、その時に歌った音は消えちゃうかもしれないけど
心を込めて歌った、
そのことは自分たちのからだに積み重なっていくっていうのが
この年になってわかりました」ーって言ったら、
「えー、この人はどういう人なの?」ってことになって、で、指揮者になる羽目になったのー
k; へえー
C ; だから、その時点ではもうむなしくなくなってたの。
自分の中に、中から促されて出たがっていることがあるかどうかーかな。
それがあればちゃんと経験として着地するっていうか。
コーラスとか、歌に関していえばー演奏している人にそれがあるかないかで、
私が聴いてる感じがぜんぜん違うの。
C ; 映画の音楽はねーああ、こういう音楽がなってるんだーってわかるときもあるんだけど
それさえ気がつかないで、音楽に連れて行かれちゃうっていう音楽が多分、いい音楽なのかなって。
映画の場合は。
あれね、音楽がついてなくて、ただ観てるだけだとぜんぜん違うでしょ、たぶん。
でも、ぜんぜん音楽があるから、、ここまで連れて来てもらってって意識しないけど、
そいう効果がある音楽っていうのがーきっと、ね。
k; 気になっちゃう時ないですか?音楽が
C ; 気になる時もあるし、あ、これ何の曲だろうって思う時もあるけど、
気がついたら、音楽の力でここまで気持ちを連れて行かれちゃってるってこともあるね。
花; 「いま、会いにゆきます」はね、オレンジレンジなの。
で、それって若い子達はよく知っているけど
ぜんぜん私は知らなかったから。
でも、あれは映画も良かったし、ぜんぜん音楽もジャマじゃなかったし
でも実は若い子達はすごく知っててー
で、曲を聴きたくてーっていう子もいるでしょ、たぶん。 でも、それも違和感なくて。
k; それにしても、こんな、TVも衛星放送もレンタルビデオもある時代に、
映画館が生き残っているって、すごいことですよねえ。
C ;
うん、それに、一時期よりも若い人がけっこう観てるよね、最近ー
花; そう、観てる。
k; シネコンとかもできてますしねー
C ; そう、で、ちゃんと人が入ってるの、それはなんか良いことのような気がするねー
k; 私なんて、今日八時から練習があるんですよー
時間があきますよねえ。
こういう時、おふたりなら、映画観るんだなあーて。
でも何時から始まるかわかんないし、
2時間もなあーってつい躊躇しちゃってー
C ; もったいないー
花; 私はねー電話してきいちゃうの。今から、一番早く始まるのは何ですかーって。
で、時間見て、行っちゃう。
だって、蠍座とかなら、お茶飲むくらいで観れちゃうし。
朝なら、安かったりするのよ、10時からは1000円、とかね。
そうそう、早く60歳になって、いつでも1000円になりたいかなーなんて思ったりもします(笑
k; トシとってから、映画を観るって、二時間観ぬくーっていうのは体力的に大変じゃないですかー
花; いやーそんなこと・・・ない
C ; 慣れてるからーそれはないと思う、だいじょうぶ!!(笑
映画ー演劇ーコーラス〜綿綿とつながっているcosmosさんの「表現論」で、おふたりの対談は締めとなりました。
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