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>>過去のマルタケ

 この夏も、暑くなりそうである。当地でも、梅雨明けを待たずして猛暑日がポツポツ出現し、この先の暑さが思いやられる。

 4年前の夏、初めて奥の和室にエアコンを設置した。帰省する長女一家、特に孫たちが、夜暑くて寝苦しいだろうと想像した故の決断。私とカミさんだけなら、今まで通り扇風機などでしのぐが、都会のクーラーの生活に慣れた人たちには、エアコン無しでは辛いのではないかと想像したのである。

 今年は、次女が第二子を出産のため、6月末からおよそ3ヶ月間の予定で滞在する。そこで、娘と二歳の孫娘が泊まる部屋に、エアコンを設置した。設置のために来た業者は忙しそうだった。「穂高に移り住んだ30数年前には、エアコンを入れるなど想像もしなかったです」とカミさんが言うと、長髪で昔のグループサウンズを思わせる風体の男性は、「工事に伺ったお宅は、皆さんそうおっしゃいます」と答えた。

 地球規模の温暖化が、年々進んでいるのは間違いないと思われる。それでは、この傾向がいつごろから始まったのかと思い返せば、自分として明確に覚えている出来事がある。

 今から46、7年前の事だったと思うが、年末に友人たちと苗場スキー場へスキーをしに行った。現地に着いて見て驚いたのだが、スキー場の雪が極端に少なかった。麓の辺り、プリンスホテルの前のエリアなどは、ほとんど雪が無かった。所々に雪の付いた部分が見られるものの、それよりも冬枯れの草地の方がはるかに多かった。草地には合板が並べて敷かれており、通路のようになっていて、スキーヤーはその上を移動するように言われた。「スキーヤーの方は、フェアウエイに入らないで下さい」と言う場内アナウンスが繰り返されていた。通路の上を、スキーを履いたまま、バタンバタンと音を立てて、スキーヤーが移動する様は、まことに異様な光景だった。

 その当時は、地球温暖化という言葉はまだ一般的では無かったと思う。しかし、暖冬異変という言葉は使われ始めていた。その暖冬異変が、降雪量の減少につながり、スキー場が困っているなどというニュースも聞かれ始めていた。それをはっきりと目の前で体験したのが、あの苗場スキー場であった。目を疑うような光景に接して、「これは何かおかしな事が起きているな」と感じたのを記憶している。

 それからおよそ50年。「おかしな事」は着実に進行している。