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30年以上前の事だが、松本市内にこんな広告の看板があった。「万人受けのする〇○屋のソース」。調味料のソースのことである。これを見た時には、思わず苦笑をした。
「万人受け」という言葉には、ネガティブなイメージを持っていたからである。特徴が無い、当たり障りのない、月並みな、と言うようなイメージ。それを、キャッチフレーズに使っていたのだから、「えっ、何故?」という驚きと共に、「何かのジョークか?」という感じすら覚えたのである。
しかし、この広告を考え付いた人は、たぶん裏もひねりも無く、真面目だったのだと思う。この言葉を添えれば、良い広告になり、ソースが売れると考えたに違いない。そして、ソースは売れたと思う。その当時、ごく普通にこのソースの名前を聞いたから、広く世間に出回っていたのは想像できる。
その頃の私は、いささか嘲笑的にこのキャッチコピーを見ていたのだが、今の私は少し違う。
物を作って(創作して)販売する。あるいは、観客の前で音楽を演奏する。そういう時に、多くの人に受けるのは、つまり万人受けのする物を作り出すのは、難しい。そんな事を、最近になってつくづく感じるのである。
ずばり「万人受けのする」という言葉を自社の商品に冠したのは、よほどの自信や裏付けがあったからに違いない。また、その時代、その地域の消費者の心理や消費動向を見抜いて、核心を突いている。これはなかなか出来ることでは無い。