含水率を計る


 画像は、木材の含水率を測定する装置である。オーストリア製の品物で、フランスで暮らす友人に頼んで、帰国の際に買ってきてもらった。日本でも代理店を通じて買えるが、かなり割高となる。輸入品だから仕方のないことであろうが。

 木材は乾燥した状態で使わないと具合が悪い。乾燥が不十分な材で家具を作ると、製品になってから歪んだりガタがきたりする。だから、木工家は木材の乾燥に気を使わなければならない。

 この含水率計があれば、材がちゃんと乾燥しているか否か、瞬時にして分る。木材の表面に当ててスイッチを押せば、含水率が画面に数値で現れる。材の比重による6段階の切り替えスイッチがあり、いろいろな材種に対応できる。深さ4センチまで測定できるから、家具の材ならこれでたいてい間に合うだろう。

 地域による気候の差で若干の違いはあるが、木材にはその環境に於いてこれ以上乾燥が進まないという限界がある。その状態での含水率を、気乾含水率という。この装置を使って含水率を測定し、それが気乾含水率に近ければ、その材は使って良い状態にあると言える。

 含水率を把握することは大切なことであるにも関わらず、なかなか良い測定器具が無かった。従来一般的だった含水率計は、2本の電極を材に打ち込み、その間の電気抵抗を測ることで含水率を知るものだった。しかしそれだと、材の表面に近い部分しか測定できない。また、材に傷が付くので、材を購入する際のチェックには具合が悪い。その点、この装置は安心である。材に傷を付けずに測定できる。また、測定精度は高く、オーストリアはもとより、日本の検査機関の認定も取得している。

 今まではこの装置無しでどうしていたのか、と言われるかも知れない。今までは、言わば時間の経過に委ねていたのである。生の材でも長い期間大気中に放置すると、少しづつ水分が抜けていく。これを自然乾燥、あるいは天然乾燥と言う。板の厚さ1寸(約3センチ)当り1年かければ、実用上問題ない程度に乾燥すると言われている。含水率を測定しなくとも、ある年月を経た材なら使っても良いのである。これはこれで、伝統的な正しい木工の考え方と言える。

 では何故この装置を入手する必要があったのか。それは、すぐに使う目的で材木を買う時に役立つからである。

 すぐに使うためには、売られている材木が乾燥しているか否か、見極めなくてはならない。売り手を信用しないわけではないが、自然素材である木材は、扱い方によって品質に差が出る。同じストックの山の中でも、乾燥度合いが違うものすらある。材木の一つ一つを調べ、良く乾いている材を選ぶ必要がある。そのような時に、この装置は抜群の働きをする。

 含水率計を手に入れて、半ば嬉しさのあまり、工房の中や材木置き場の木材を、片っ端から測定してみた。これがなかなか面白い。材の保管場所や保管の仕方で、含水率は随分違って来るのである。几帳面にデータを取れば、これで論文が一つ書けるのではないかと思われるくらいであった。


(Copy Right OTAKE 2009.11.24)





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