バンドソーの目立て 


 バンドソーは、日本語では帯鋸盤と言う。帯状の刃の両端をつなげてリングになったものが、上下二つの車輪の間でグルグル回り、垂直に下降する部分で木材を切るしくみである(右の写真は、バンドソーから刃を取り外しているところ)。

 製材所で使う製材機はこれの巨大なもので、大きな丸太を片っ端から板に挽く。私の工房にあるものは、製材所のそれとは比べるまでもないが、木工所で使うものとしては十分な大きさだと思う。製材所の帯鋸盤が直線切り一辺倒なのに対して、私のは細い刃を取り付けて曲線切りが可能である。けっこう曲線や曲面を使う私の仕事には、無くてはならない機械と言える。

 細い刃は目も細かい。その目立てを研磨業者に頼んでも、作業が面倒だという理由で嫌がられる。それで仕方なく自分でやっている。

 以前は金工ヤスリを使って研いでいた。刃先の数は10センチ当たり23ケ、全長4.5メートルの刃全体では1035ケになる。それを一つづつ順番に研ぐ。一本仕上げるのに1時間くらいかかったものである。

 その後、研磨業者から教わった方法に変えた。グラインダーを使って研ぐのである。これも手作業だが、ヤスリと比べれば能率が良い。調子が出れば、30分くらいで研ぐことができる。

 左の写真はその方法で研いでいるところ。工房の天井付近に滑車を設け、それにバンドを掛ける。そして、滑車の垂直下方に置いたグラインダーで、一目ごとに手で送って研ぐのである。グラインダーの砥石は、刃先の形に合うものを選んであるので、おおむね同じ形の刃先に揃えることができる。

 研ぐと言ってもほんの一瞬グラインダーに当てるだけ。なかなかデリケートな作業である。両手の指でつまんだ刃を、グラインダーにスッと当てると、チュンと音がして火花が出る。その瞬間に刃を引っ込める。グラインダーの砥石の先が、刃先の谷間にピッタリと合うように当てるのがコツ。作業の精度はスピードとの兼ね合いで、慌てればミスも多くなる。

 この数十分間の単調作業は気が滅入る。しかし、研ぎ終えた刃は素晴らしい切れ味となる。その切れ味をあてにして、目のピントが狂うような細かい反復作業が続く。


   

 
 







(Copy Right OTAKE 2009.10.25)

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