木ー (キー)
木工家だから、キーホルダーを木で作るというようなことは、当たり前のようにやる。ここではちょっと毛色の変わった、キー関係の木工細工をお見せしよう。自家用車のキーの取っ手部分を、木で包むというものである。写真の軍配型のものが、その木ー(キー)である。となりの金属製のものは、加工前のスペアキー。
このような遊びは、だいぶ昔に米国の木工雑誌で知った。加工は別に難しいものではない。二枚の板を張り合わせて、キーを挟み込むのである。板の合わさる面に、キーの形を写し取って、キーの厚みのぶんだけ掘り込んでおく。そして、エポキシ接着剤を使ってキーもろとも板を貼付けるのである。エポキシ接着剤は固化する際に収縮しないので、充填も兼ねた接着に向いている。固まってから輪郭を切り抜き、形を整えて出来上がりとなる。
キーはあらかじめ金ノコで切って小さくしておくのがポイント。そうしないと、出来上がりがむやみに大きなものになってしまう。
材は、よごれが目立たないよう、濃いめの色を持ったものが好ましい。この材はシュリ桜。桜の中でも色の濃い材で、年月が経つとチョコレートくらい濃い色になる。また艶も良い。以前作ったものは、ブラックウォールナットだった。それは色が濃過ぎて、ちょっと地味だったように思う。これは、どんな感じに落ち着くか。
こんなことは、まったくどうでもいいような遊びである。しかし、使ってみるとなかなか気持ちが良いのも確かである。まず手触りが良い。これに慣れると、金属のままのキーはまことに味気ない触感である。また、見た目のかわいらしさも良い。運転台でキーを抜き差しするときに、ハンドルの向こうに見えるこの木の小物体が、プラスチックと金属だけの周囲からくっきりと際立つ。なんだかとても愛らしい小物なのである。
(Copy Right OTAKE 2009.9.29)