A8LR テープ速度の調整
( 2013/08/28 作成 )
前書き

 A8-LR の Service Manual を読むと、ワウ・フラッターやテープ走行速度の調整には、
 自社で作成した専用テープ(P/N 82260080)を用いて調整している様である。
 実際のメーカー・メンテナンス調整も、高価な専用測定器にて綿密に調整されていた様だ。

 そこまで厳密に修理調整を追い込みたい場合は、オープン・デッキ専門修理業者に素直に依頼した方が良い。

 ここでは、専用調整テープが無い場合での、私なりに調整してみた方法を記載してみる。

速度調整用の録音テープ加工


 調整リファレンス・テープが無い場合、まず最初に、調整用テープとして次のように磁気テープを加工しておく。

 1.4メートル以上のリーダー・テープ(磁性体の塗布されていないテープ)に、
   190.5 cm の磁気テープをつなげる。
 2.磁気テープの後ろに、同じく 4メートル以上のリーダー・テープをつなげる。

 テープ同士の接続は、スプライシング・テープがあればベストだが、
 無い場合は、長さ=1cm 程度、幅=6 mm にカッターで切ったセロハンテープでも調整用としては問題ない。


 これは、テープ走行が 38cm/秒 の場合、[ ( 2.54 x 15 ) x 5 = 190.5 ]
 10秒以上の録音不可な部分に、5秒ジャストの録音可能部分のテープをつなげた…という事になる。

走行調整に使用するフリー・ソフトの入手


 以下、WINDOWS-PC でのレジストリを汚さないフリー・ソフトを紹介してみる。
 マッキントッシュしか持ってない場合、相応のソフトを入手して下さい。

 まず、WINDOWS-PC にデッキの音を録音するソフトを入手する。(特別、ライン録音専用ソフトという訳でも無い)

                    「S Rec ver.0.70

 次に、テスト信号生成ソフトと周波数測定ソフトを入手する。

                    「WaveGene」 … テスト信号生成ソフト
                    「WaveSpectra」 … 周波数測定ソフト

作成した速度調整テープへの録音方法


  1.電源系統のメンテナンスが終了したら、走行系を清掃しておく。
  2.デッキに、加工作成した走行調整用テープをセットする。
  3.「WaveGene」から 3KHz の信号を発生させ、PCのヘッドフォン・ジャック OUT を手持ちのキミサーに入力する。
  4.ミキサーで、信号出力を「-6dB」に持ち上げ、デッキの入力に入れる。
  5.磁性体塗布の部分まで「10秒以上」かかるポイントまでテープを戻し、録音を開始する。( NR は切っておく)
  6.録音開始後、磁性体塗布部分の終了テープ・ポイントが過ぎたら、録音を停止する。

 「 WaveGene 」は、左の矢印部分のように、
 周波数に「3000」と入力し、プレイ・ボタンを押すだけでよい。

 これで普通、PCヘッドフォン・ジャックから信号が出力される。
 出力されていない場合、PC側のオーディオ設定、
 または、ジャックのガリとかも疑ってみる。


 周波数の「3KHz」は、オープンリール・メーカーが何処も
 速度調整用として使っている周波数ではあるが、
 なぜ「3KHz」なのかの理由は、ココでは記載しない。

 興味ある方はググってみても面白いかもしれない。
速度調整の実際の手順

  上記の項目で、再生速度の調整用テープに信号が録音されたら、以下の手順で調整する。

   1.デッキの PITCH がFIX位置なのを確認し、OUTPUT を、PCのマイク・インに入力する。
   2.「 S Rec 」ソフトを起動させ、ソフトの録音を開始する。
   3.テープの信号記録部分より約10秒前から再生し、信号出力が終わったら「 S Rec 」録音も停止する。
   4.出来上がった WAV 波形データを、波形編集ソフトで開く。
   5.録音波形の立ち上がりポイント、および立下りポイントの時間を確認する。( 5分ジャストであるかどうか )
   6.デッキ側の基盤でのトリム調整を行う。
   7.2〜6ステップを何度か実行し、デッキのスピードを追い込む。
  
 S Rec の操作は単純。
 録音ファイルの保存先を指定し、
 ファイル名も入力しておく。

 例えば、「TAKE-0」という様にでも入れておけば、
 あとは録音する度にファイル名の語尾に、
 自動的に「002」「003」…という様に、
 リネームまでしてくれて保存できる。


 あとは、「REC」「STOP」を押すだけである。

   波形編集ソフトは、「Sound Engine」とかの使用で良いと思う。
   波形の始まるポイント部分を拡大表示し、正確に音の立ち上がるポイントから前部分を削除する。
   こうする事で、音の終了部分の時間尺を正確に読み取ることが出来る。



       基板上の調整箇所は、上記写真の示す場所、「 R94 」である。
       絶縁プラス・ドライバーにて、テープが5秒以上なら半時計回し、5秒以下なら時計回しにトリム回しする。
       間違って隣の抵抗ボリューム(R92)を動かさない様、ドライバーをあてる際には注意する必要がある。

       電源基盤の電子パーツ(コンデンサ等)を入れ替えていれば、「 R94 」は殆ど微調整だけで済むと思われる。

調整後の新たな再生速度基準テープを作成する

  38cm/秒のスピードが確保できたら、速度調整テープの後ろに新たに磁気テープを追加し、
  そこに「 WaveGene 」にて「 3KHz 」信号を出力、テープに1分間ほど記録しておく。( NR は切っておく)

  今後は、そのテープを使って、以下の様に簡単に、短時間で再生速度を調整する事が出来る。

          1.デッキの出力をPCのマイク・インに入力。
          2.「 WaveSpectra 」を起動させる。
          3.リアルタイム測定できるソフトなので、計測しながら「 R94 」をトリム調整する。

「 WaveSpectra 」を使っての調整方法は、
「計測」をオンし、「計測開始」ボタンを押す。

矢印で示した「3KHz」ラインを目標に、
デッキ基盤上の「R94」を微調整する。
厳密に見るには、「周波数」箇所で確認できる。

まとめ

特記なし