8トラック・レコーディング方法
( 2014/5/30 作成 )
「SMPTE タイムコード」というのは、「Society of Motion Picture & Television Engineers」が同期用に制定した、
テープに”絶対時間”を記録するもので、他のデッキや、MIDI シーケンサーと同期させる為には必要不可欠な信号です。
しかし、録音する内容&方法によっては、必ずしもテープに記録しなければいけない信号でもありません。
もし、SMPTEタイムコードを使う場合は、通常は末端トラック(8、または16等)に記録しておきます。
SMPTE 信号の録音レベルは、16トラック以上なら「0dB」、8トラックなら「-7dB」前後がクロストーク上、無難です。
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SMPTE タイム・コードを使わない録音 (ケース1)
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テープ・レコーディングの場合、テープ端のトラックは、超高域の周波数特性の安定度に欠ける傾向があります。
以下のトラック割りを参考にしてみて下さい。
「 JAZZ - トリオ」の場合
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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Kick
| Drums_L
| Drums_R
| Bass
| Piano_L
| Piano_R
| 会場_L
| 会場_R
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「 JAZZ - カルテット」の場合
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
|
Bass
| Drums_L
| Drums_R
| Piano_L
| Piano_R
| Sax 等
| 会場_L
| 会場_R
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「 JAZZ - カルテット + ボーカル」の場合
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
|
Bass
| Drums (Mono)
| Piano_L
| Piano_R
| Sax 等
| Vocal
| 会場_L
| 会場_R
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「 Rock - カルテット + ボーカル+コーラス」の場合
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
|
Bass
| Drums_L
| Drums_R
| Piano (or Guitar)
| E.Guitar
| Vocal
| Chorus
| E.Guitar (Solo)
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「 Rock - 5ピース + ボーカル+コーラス」の場合
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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Bass
| Drums (Mono)
| Piano (or Guitar)
| E.Guitar
| Keybord
| Vocal (E.Guitar_Solo)
| Chorus_L
| Chorus_R
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ドラムをステレオに仕上げたい場合は、1トラックずつ後ろにズラして、コーラスはモノ録音に留めます。
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SMPTE タイム・コードを使わない録音 (ケース2)
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日本の1970年代前期・歌謡曲やTV音楽の録音には、いくつもの手法が存在していた様です。
以下のトラック割りは考えうる例の一部ですが、参考になさってみて下さい。
「 オケ一発録音 」の場合 1
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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Bass
| Drums
| Stereo_L
| Stereo_R
| Inst (Solo)
| Vocal (完成Take)
| Chorus
| Vocal (編集用)
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「 オケ一発録音 」の場合 2
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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Bass
| Drums
| Band_L (ST_Mix)
| Band_R (ST_Mix)
| Orchestra L
| Orchestra R
| Vocal
| Chorus
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「 オケ一発録音 」の場合 3
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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Drum+Bass (ST_Mix_L)
| Drum+Bass (ST_Mix_R)
| Band_L (ST_Mix)
| Band_R (ST_Mix)
| Orchestra L
| Orchestra R
| Vocal
| Chorus
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次は、Band録音&仮唄後、クライアント(芸能事務所など)のOKを貰って最終仕上げの場合。(通常はこのケース)
OK後、別の8トラック・デッキを使ってトラック整理(一部MIX処理)を行い、歌手本人の唄をオーバーダビングします。
唄の上手い歌手の場合、「1-2」はせず、仮唄トラックに本テイク録音で仕上げる事も可能だったかと思われます。
「 バンド録音 + オーケストラ 」の場合 1-1
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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Bass
| Drums
| A_Piano
| Guitar
| Guitar
| E_Piano 等
| 仮唄
| Solo_Inst Chorus
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「 バンド録音 + オーケストラ 」の場合 1-2
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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Vocal (編集用)
| Drums + Bass(Mix)
| Band_L (ST_Mix)
| Band_R (ST_Mix)
| Orchestra L
| Orchestra R
| Vocal (完成Take)
| Solo_Inst Chorus
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Band のMixトラック部分ですが、リバーブまで含めた処理はしない方が賢明です。
ドラムスに薄くリバーブを足したい場合には、EFFECT-SEND 信号に「EQ」をはさみ、
Kick&Bassの周波数成分を出来るだけカットしてから、リバーブへ送ります。
オーケストラの楽団は、演奏1回でいくら…の高額な世界なので、たぶん他の楽器と合わせてのトラック・ミックスは
まず、されていなかったのが一般的と思われます。(最終Mix調整もしやすい)
これで、かなり細部まで調整の行き届いた、重厚で華やかなサウンドに仕上げる事が出来ます。
ただこれも… 1975年前後までの楽曲の事で、以降は歌謡曲でも16トラック録音が当たり前になっていった様です。
楽曲によっては、編集用トラックを利用して、ボーカルのサビ部分等をダブル音声にする事も多かった様です。
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SMPTE タイム・コードを使った録音 (レコーダー1台のケース)
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SMPTEタイムコードを使った場合、MIDI音源の同期等で、いくらでも音源&演奏テイク等の差し替えが出来るので、
思い切った自由な録音スタイルも構築できます。
ここでは、8トラックでは一番厄介な、個人録音で「ボーカル類を全てダブル仕上げにする」方法を記述してみます。
まず、MIDIシーケンス上で、ほぼ完成のカラオケを作成し、1トラックへ音量は小さ目のモノラル録音しておきます。
続いて、コーラス入れのガイド用に、7トラックに仮歌を、やはり音量は小さ目に録音します。
「 SMPTE 利用録音 」 ボーカル・ダブルの場合 1-1
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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MIDI伴奏 (Mono)
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| Vocal (仮歌)
| SMPTE
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次に、コーラス・パートを5〜6トラックにダブル用で録音、2〜4トラックへ順次ピンポンMIX記録して行きます。
4トラックにピンポンする際は、6トラック+同時歌唱にて4トラックにまとめます。
(5トラックを使用すると、隣接トラック・ピンポンとなり、信号が暴れてしまいます)
「 SMPTE 利用録音 」 ボーカル・ダブルの場合 1-2
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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MIDI伴奏 (Mono)
| Chorus_1 (Mix)
| Chorus_2 (Mix)
| Chorus_3 (Mix)
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| Vocal (仮歌)
| SMPTE
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総コーラスのMIX加減が調整できたら、6〜7トラックへ最大0dB近辺を振れる音量でまとめMIXします。
この時、まとめコーラスに、リバーブ処理はかけません。
6〜7トラックのまとめMIXを音チェックして、問題がなければ、一旦2〜4トラックは消去しておきます。
「 SMPTE 利用録音 」 ボーカル・ダブルの場合 1-3
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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MIDI伴奏 (Mono)
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| Chorus_L (Mix)
| Chorus_R (Mix)
| SMPTE
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3 & 5 トラックに同時にボーカルを録音し、3トラックにもOK テイクを残します。
次いで、ダブルMIX用ボーカルを 2 トラックに追加録音します。
「 SMPTE 利用録音 」 ボーカル・ダブルの場合 1-4
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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MIDI伴奏 (Mono)
| Vocal (ダブル用)
| Vocal (本テイク用)
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| Vocal (本テイク)
| Chorus_L (Mix)
| Chorus_R (Mix)
| SMPTE
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ボーカルをダブル化するポイントで、2 + 3トラックを再生しつつ、5トラックにパンチ・インして
完成ボーカル・トラックを作成します。
「 SMPTE 利用録音 」 ボーカル・ダブルの場合 1-5
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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MIDI伴奏 (Mono)
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| Vocal (ダブル_MIX)
| Chorus_L (Mix)
| Chorus_R (Mix)
| SMPTE
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この時点で、歌だけOKテイクのマルチ・テープが完成しました。
次のステップとして、MIDI同期演奏で各トラックに音源を戻し、更に以下の様に生演奏に差し替えて行きます。
「 SMPTE 利用録音 」 ボーカル・ダブルの場合 1-6
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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Bass ( 生演奏 )
| Drums ( MIDI演奏 )
| Piano ( 生演奏 )
| Guitar ( 生演奏 )
| Vocal
| Chorus_L
| Chorus_R
| SMPTE
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ギターを2本入れたい場合は、同期MIDI演奏にて2トラックは「ドラムス+ Piano 」とし、
以下の様に、基本演奏をまとめて行きます。
その他の上モノ系音源は、最終のMIX時に MIDIで同期演奏させ、完成マスターを作成します。
「 SMPTE 利用録音 」 ボーカル・ダブルの場合 1-7
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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Bass ( 生演奏 )
| Drums Piano
| Guitar ( 生演奏 )
| Guitar ( 生演奏 )
| Vocal
| Chorus_L
| Chorus_R
| SMPTE (MIDI同期)
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編曲内容によっては、以下のまとめ方でも良いと思います。
「 SMPTE 利用録音 」 ボーカル・ダブルの場合 1-8
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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Bass ( 生演奏 )
| Drums E_Piano
| Piano ( 生演奏 )
| Guitar ( 生演奏 )
| Vocal
| Chorus_L
| Chorus_R ( + Solo_Inst )
| SMPTE (MIDI同期)
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以上、トラック間のクロストーク影響を考慮しつつ、音質劣化も極力最小に留めた録音方法の一例です。
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SMPTE タイム・コードを使った録音 (レコーダー2台のケース)
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ここでは、8トラックを2台使用した、個人録音で「ボーカル類を全てダブル仕上げにする」方法を記述してみます。
「FOSTEX A-8」はスレーブ同期機能が無い為、スレーブ機能尽きの「TASCAM DA-78」を用意します。
まず、MIDIシーケンス上で、ドラムス&仮BASS&E_Pianoパートを作成し、「A-8」の1〜2トラックに記録しておきます。
「 SMPTE 利用録音_デッキ2台 」 ボーカル・ダブルの場合 1-1
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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Bass (仮)
| Drums E_Piano
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| SMPTE
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次に、3〜5 トラックに楽器を追加録音していきます。それらを聴きながら、1トラックのBASSも手弾きに差し替えます。
「 SMPTE 利用録音_デッキ2台 」 ボーカル・ダブルの場合 1-2
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
|
Bass (生演奏)
| Drums E_Piano
| A_Piano (生演奏)
| Guitar (生演奏)
| Guitar (生演奏)
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|
| SMPTE
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この時点で、一旦、「DA-78」をスレーブ同期させ、仮MIXを1〜2トラックに記録します。
ボーカル類は全て「DA-78」単体で録音していきます。
「 SMPTE 利用録音_デッキ2台 」 ボーカル・ダブルの場合 1-3
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
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ST-Mix L
| ST-Mix R
| Vocal_1 ( メイン )
| Vocal_2 ( サブ )
| Chorus_1
| Chorus_2
| Chorus_3
| Chorus_4
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再び、「A-8」に「DA-78」をスレーブ同期させ、それぞれの歌をMIXして6〜7トラックに記録します。
こうする事で、ボーカル類は全て「DA-78」側にMIX前の状態が残せる…という利点も生まれます。
「 SMPTE 利用録音_デッキ2台 」 ボーカル・ダブルの場合 1-4
1 tr
| 2 tr
| 3 tr
| 4 tr
| 5 tr
| 6 tr
| 7 tr
| 8 tr
|
Bass
| Drums E_Piano
| A_Piano
| Guitar
| Guitar
| Vocal ( ダブルMix )
| Chorus ( 4声Mix )
| SMPTE
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「Chorus」トラックの隙間に、サックス等のSolo楽器をパンチ・インすれば、豪華なBandサウンドの完成です。
もし、更に「Strings」や「Brass」を追加したい場合は、「MIDI」同期演奏で最終MIXをかけます。
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