ライオンの話。
ライオンの雄って、群れに一匹しかいないのに普段狩もせずにごろごろして、なんて役立たずなのかしら!と思っていたら。意外に悲しい訳があったのをこの間「地球ふしぎ大自然」で知ってしまった。

ライオンは一部の類人猿と同じく、群れは母系であり(血縁関係のあるメスと、子供で形成される)、雄は一見ボスのようにみえるのだが、実ははげしい競争のために数年で外部からきた別の、えてして若くて強い雄に追い払われてしまうのだそうだ。メスの群れのいるところはつまり一等の餌場であり、そこに入れれば豊富な食料にありつけ、さらに子孫を残すことができる。

ライオンの狩りというのはチームプレイが特徴だそうだが、ライオンの身体的能力からしても、単独で獲物を取ることは難しいのではないかしら?チーターが単独行動できるのは、その俊足で狩りの成功率が非常に高いから。また、豹にしても、木登りできるほど身軽だし、身体はライオンの半分程度だから食料も半分で済む。身体を巨大化していけばパワーはあってもスピードは落ちる。しかし身体を維持するためにはたくさん食料が必要。そもそもバッファローなどの大物を群れでしとめるのに適した身体なのだ。単独では自分の体重の5-6倍あるバッファローを仕留めるのなんてとても無理だし、足の速いインパラの類も難しい。小動物にしても動作はすばしこいのだからパワーだのみでは駄目。

つまり、メスの群れのなかにいない雄ライオンは、生存上非常に過酷な状況に陥る。他の肉食動物が倒した獲物を横取りしたり、食べ残しをあさったり。ときにはそういった行為上競争相手であるハイエナに襲われることもあるそうだ。

いっぽうメスは、祖母・母の代から伝わる縄張りで代代培ったチームプレイの狩りの手法を身につける。群れの歴史が長ければながいほどそれは洗練されたものになるだろう。群れのなかにいる雄ライオンは、狩りをしないのではなく、できないのではなかろうか。

印象的だったのは、前のボスを負かして群れを乗っ取ったオスは、すぐにメスの群れに受け入れられる訳ではないこと。よそ者は無視され、当然餌の分け前もない。ある日水場でメスたちがアフリカ象の攻撃にあった。メスたちの隊形は乱れ、てんでに逃げ惑う。荒れ狂った象は逃げ遅れたメスのところに突撃しようとする。オスは象の前に飛び出し立ちふさがり、猛然と威嚇し攻撃を食い止めた。そして初めて認められ、受け入れられたということ。

メスにとってオスは用心棒なのだ。用心棒なら強ければ強いほどいい。また、強いオスを受け入れるほど強い子孫が残せ、群れの繁栄につながる。

同じ群れで同時期に生まれたメスとオスのライフサイクルを比較すると、なんとも哀しい。大人になるやならずやでオスは、すでにそのころには自分の父親と取って代わっているボスオスによって群れを追い出される。狩りのテクニックも身に付けていないのに過酷な状況に立ち向かわなければならない。結構死んでしまうのだそうだ。若いオスライオンは。

ライオンという種の生存戦略がこういった形になっている、という話なのだが、あの立派な鬣は伊達ではないのねえ・・・

こういったいわゆる「ハーレム」を形成する動物は、オスとメスの体型差が大きいそうだ。


2004.05.26
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