役にたつことと立たないこと。あるいは記憶のパラドックス。
じぶんで自分の足の裏を触ってみる。くすぐったくもなんともない、他の人にそっとなぞってもらうと、身をよじるほどくすぐったい。ニンゲンの場合、感覚の受容体は手の指先に集中しているからだそうだ。くすぐったい足の裏の感覚よりも指先の感覚優先で知覚するので、自分で触ってもくすぐったくないんだとか。

記憶しようと思って頑張って暗記する。一念発起頑張った記憶はありありとのこるけど、暗記した内容は意外に残らない。ぜんぜん覚えようと思わず、何気なく見聞きしたものごととほどよく覚えている。そういうのはえてして役にたたない雑学だ。掛け算九九は役に立つから記憶するのだけども、大概の人は憶えようとしてあれこれ苦労した記憶のほうが多いはずだ。この記憶自体は役に立たない。
暗記しようとしているとき、暗記それ自体が目的となってしまうからではないかしら? 足の裏にさわる自分の指先のように。意識して指先の感覚を鈍らすことができないように、記憶の逆説をひっくり返すことはできないように思う。




2004.02.23
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