日経新聞の朝刊に、渡辺淳一の小説を連載している。その名も「愛の流刑地」!。タイトルだけでちょっと噴きだしてしまうのだが、何気なく読んでみると、なんともおかしい。言語に絶するほと陳腐な台詞を吐く主人公の初老の小説家は、きっとパロディに違いない、きっと近いうちにずっこけるのだろうと期待していたのだが、どうもそうでもない模様。けっこう大まじめなのである。
こういうのってステレオタイプというのだろう。頼りなげで貞淑、だが夫と子供の世話に明け暮れる平凡な家庭生活にどこか物足りなさを感じている人妻と、百戦錬磨の年上の男性が恋におちる。閨事においては、シャイな人妻がいやがるのを、「よいではないか」的に思いのままにし、その「好色な」身体の反応を確認することに最上の快楽を覚える男。性器とその周辺を描写するtermがすごく「普通」なのが、分かりやすさのポイント。それぞれのtermを創案しつかい始めた人を調べると面白いかもしれない(笑)
で、見えてくることって、とりあえす、男性ってテクニシャンでなくてはならないというメッセージ。女性の表面的な「貞淑さ」は美化しつつ、やっていることは全然貞淑でないという矛盾。こういうのが、ある一定の年齢以上のおじさま(日経新聞の主要読者層)のイマジネーションなのかしら・・・
でも、いまどきそんな女性なんていないから、おじさまのお伽噺なのかもしれない。おじさま版ハーレクインロマンス!
いまどきありえない女性像をひたすら描いているのは、なんというか、一種の美学ですらあるののかもしれないね。
後日、件の人妻が36歳という設定であることを発見。「若くない」とか「3人の子持ち」とかいうから40半ばくらいで特に古風な人なのかな・・・と漠然と考えていたので、いささか衝撃。なんぼなんでもありえない・・・。渡辺淳一先生はきっと、「失楽園」がヒットした時代の36歳が、年齢を重ねているのを、お忘れなのに違いございません。
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