待ちに待った日がやって来た。


いつもよりも早く学校へ行く準備を終える。

「つらら学校行く準備できた?」


「今日は早いですね。」


笑顔を向けるつららを見てリクオは落胆した。
正確にはつららの服装を見て。


「はぁーあ」

リクオは溜息をついた。

今日から制服が夏服に変わるのでひそかに楽しみにしていたのだ。

つららも衣替えするとばかり思っていたが

いつもと変わっていない。

期待が大きかっただけにがっかりである。

なので溜息の一つも出てしまう。

そんな理由など露と知らないつららは

「なに私を見て溜息ついてるんですか!!?」

失礼なと怒気をあらわにした。

隠してもしょうがないので正直にわけを話す。

「だって今日から制服は夏服なのにいつもの格好だから。」



言われてつららは自分の服装に目をやった。

確かに季節に関係なく同じ格好である。

リクオの服装はいわゆる学ランから涼しげな半袖のシャツに変っていた。

もちろん女子の制服も半袖になる(その上にベストを着たりするが)。

まだ、それほど暑くないのだが薄い生地の夏服に変るだけで気持ちが夏へと切り替わるのだ。


つららが夏服に着替えないのにはちゃんとした理由がある。

「これは厚着して中に冷気を閉じ込めるためなんです。」

いつもマフラーをしているのもこのためなのだ。

「そうなんだ。」

そういえば前にそんな事を聞いたような気もする。

いずれにしてもつららの夏服姿はあきらめるしかないようだ。

まあ、学校に行けばいくらでも見れるし。

「そういう理由ならしょうがないな。」

やけにあっさりと引き下がったので逆に不審に思った。

「他の女子の制服を見ようとか思ってません?」

「えっ?」

ギクッと体を硬直させたリクオを見て、つららは頬を膨らませてムスッとした。

家長や陰陽師娘の制服姿に喜ぶリクオを想像すると無性に悔しい。

なにか負けたような気持ちになる。

正直、夏服になる事にはそれほど抵抗はない。

なにも熱い風呂に入るとか深刻な事ではないし、今日はそれほど日差しも強くない。

それに夏服といっても半袖になるだけなのだ。

そう自分に言い聞かせる。

あと自分の夏服姿を楽しみにしていたというのもちょっとうれしかった・・・・・


よしっ!

つららは決断した。


「わかりました!着替えてきます!」

「えっ」

「少しだけ待っててください!」

なんでつららが急にやる気を出したのかわからなかった。

わかっていたことは一度決めると止まらない性格だということだった。



3分後

飛び出した時の勢いそのままではあっはあっと息を切らせて戻ってきた。

「ど、どうでしょうか!?」

恥ずかしそうにクルリと回って見せる。

半袖に変っただけだがいつも長袖姿しか見たことがなかったのでとても新鮮に映った。

それと肌色が増えたのも嬉しい。


でも何か足りなかった。


「いいんだけど・・・・・」


「なにが不満なんですか!?」


褒められる事を期待していたつららはムッとなった。


ためらいつつも思い切って言ってみる。


「やっぱり、ベストは脱がなきゃ完全体じゃないと思うんだ!」


「なんですか完全体って!?」

完全体の意味はわからなかったがベストはない方が好みだということだけはなんとなくわかった。

しかし、なにかいやな予感もして躊躇われた。


「ほら早くしないと遅刻しちゃう」

急いだ急いだと捲くし立てられると正常な判断が出来なくなってしまう。

「まったく、朝っぱらからなんでこんな事・・・・・」

ぶつぶつと文句を言いつつ、結局いそいそとベストを脱ぎ始めた。


するとすぐに


あれ?


なにかおなかの辺りがスースーする。



見ると下の制服がベストを脱ぐのにあわせてめくれていた。



「きゃあああっ!!」


慌てて手で隠す。


「み、見ました?って、なにカメラ持ってるんですか!??」


「いや偶然持ってたんだ。本当だよ。」


「・・・・・」


「着替えを写真に撮ろうとか思ってないよ・・・・・」


ある意味正直である。

最初からこれが狙いだったんだとすぐに理解した。


凍てついた視線を受けて、リクオの頬に冷や汗が流れる。

つららはそれを指ですくって、凍らせると舌先で微かに触れた。

そのしぐさに一瞬どきりとしたがすぐに寒気に変わった。


「これは嘘をついてる氷の味なのです!!!」

「なにそれ!?」



「若のばかぁーっ!!!」



結局、この後のおしおきとかで遅刻してしまうのだった。

雪女(及川氷麗)


つららは家長カナをなんと呼んでる?

家長さん

カナちゃん

家長

団長




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