ある夏の日


つららはリクオにお使いを頼まれた。



「つらら、雪大福買ってきて!」

「雪大福ってなんですか?」

「白い饅頭みたいなアイスだよ。」

類似したアイスは他にないからすぐにわかるとのことだった。

それはともかく、

「アイスなら私のカキ氷があるじゃないですか!?」

他の菓子ならまだしもアイスなら自分のつくるカキ氷の方が美味しいという自信がある。

なにより早くて安くて(自分でつくっているからほとんどタダ)美味しいし!

「いったい私のカキ氷のどこが不満なんですか!?」

そういった気持ちを込めてリクオにぶつけた。


「毎日そればっかりだからたまには違うのも食べたいんだよ。」



そういえば毎日おやつにカキ氷ばかり出していたのを思い出した。


自分のような雪女なら朝昼晩毎日でもいいが

夏とはいえいつもカキ氷じゃ美味しくてもさすがに飽きる


「わかりました。」


しぶしぶと買いに出かけるつららの背中にリクオは

つららなら溶かさず持ってこれると余計な一言を加えた。


「人をクーラーボックスみたいに・・・・・」

ぶつぶつと文句を言いながらも買いにでかけた。


目的のアイスは近くのコンビニですぐに見つかり買ってくることができた。


「さすがつららだ少しも溶けてない。」

コンビニ袋に入った雪大福を受け取ったリクオは満足そうに呟いた。


溶けないうちにとさっそく封を開ける。


「うん柔らかくて美味しい」

一口食べて満面の笑みを浮かべた。

この皮の部分が美味しいんだよと熱心に説明する。


そんな幸せそうなリクオの顔を見ると

暑い中お使いに行かされた労苦も吹き飛ぶ。


そうやって、リクオの顔を見つめていると



視線に気づいた。


「つららも食べたい?」

「えっ」

じっと見つめていたのを勘違いしたのだ。


特に食べたいとは思わなかったが

雪大福じゃなくて若の顔を見ていたんですと

正直に言うわけにもいかないので

「ひとくち食べたいです。」

と言ってしまった。


「ひとつ上げるよ。」

気前良く残っているもう一つの雪大福を串に刺しつららの方に向けた。


「はい、あーんして」


(えっ、えええぇ〜〜っ!)


予期せぬリクオの行動に内心でかなり焦る。

自分で食べれますと言おうかと思ったが

逆に変に意識していると思われるのもイヤだったので


緊張しつつも小さな口を開けた。

雪大福の白い輪郭が眼前に迫るなか

ふとその雪大福ではなく串のほうに目がいく


(そういえばこの串、若が口をつけて・・・・・)


そう思った瞬間、びくんと体が硬直した。


ーあっ!

急に口を閉じたため唇にぶつかって

雪大福が落ちた。


マフラーの中をつたって着物の中に吸い込まれる。



「ひゃっ!!ふ、服の中に入って・・・・・」


「動かないで!動くと余計奥に入っちゃうから・・・・・」


「そ、そんなこと言っても」


ギンッ!(心の目の音)


「む、そこだーっ!!」

リクオはつららの着物の不自然な膨らみを串でとらえた。

手応えあり!

感触が柔らかい。間違いなく雪大福だ!


「さあ、今のうちに取り出すんだ!」

しかし、つららの顔を見るとそれどころではないようで

眼をぎゅっと閉じて真っ赤になって震えている。



「ちょっとそれっ、ゆっ、雪大福じゃないです・・・・・」


えっ、だって白くて柔らかくて・・・・・

あれっ!?

「雪大福と思ってたのはつららの胸だった!!」

「だったじゃないです。はっ、早くどけてください〜っ!!」


「なんか固いものが引っかかって串が取れないんだけど・・・・・」


「ひゃあうっ!!」

つららの体がビクンっと跳ねる


「ちょっとそこは・・・・・ひっ、ぱぁっちゃだめぇーーっ!!!」



この後、怒ったつららに氷の串でつつかれて身も心も雪大福気分を味わうのだった。

雪女(及川氷麗)


羽衣狐の鉄扇は何尾?

一尾

二尾

三尾

四尾




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