「ブラック・マジシャン・ガールが演奏してるところが見たいんだ。」

「・・・なに言ってるんですかマスター?」

いつにもましてわけのわからないことを言い出すマスターの話を

いつにもまして冷めた調子でブラック・マジシャン・ガールは聞き返した。

「だからこれからは歌って踊れなくちゃダメなんだよ。」

「そんなのデュエルに関係ないじゃないですか?」

「だって、フィギュアの次はキャラクターソングとか出るかもしれないじゃん。」

「出るわけないでしょ!だいたい歌はどうするんですか?」

「大丈夫。もうバンド名は決めてあるから。ファイヤーバーニングって言うんだ。」

「いや、そんなロボットに乗りそうなバンド名のことじゃなくて・・・あーっもうっ!」

叩きたくなる衝動を懸命に抑える。

歌とかじゃなくて根本的にいろいろ間違っているので言っても無駄なのだが

これが自分のマスターなので自分が何とかしなければならないのだった。

「とにかくこのギター持って歌ってくれればいいから。」

「くれればいいからって・・・・・。」

(はあ)

溜息をつきつつもとりあえずギターを受け取ってしまう。

ブラック・マジシャン・ガールの衣装に合わせたような目の覚めるようなピンク色のギターだった。

その自分のために用意してくれたとしか思えないギターを見て嬉しくなる。

(いけない)

これじゃ新しいランドセルを買ってもらって喜ぶ子供みたいだ。

我に返り、嬉しさを隠すため質問を浴びせた。

「だいたいわたし歌ったことなんてないですよ。」

「大丈夫。ブラック・マジシャン・ガールは声がきれいだから歌も上手に決まってるよ。」

「えっ。」

ダメ押しのような褒め言葉に危うくギターを落としそうになる。

まあ、今回はエッチな事じゃなくて、歌とかだし少しくらいなら付き合ってもいいかな・・・。

結局、いつも通り押し切られてしまうのだった。

ブラック・マジシャン・ガール



























「やってみると意外と楽しいですね。」

特に歌うのは気持ちがいい。

大きな声を出すのはストレス発散になる。

まあそのストレスの原因はマスターにあるんだけど。

「じゃあそろそろ踊りの練習もしようか。」

「踊り?」

「歌や演奏に合わせてた振り付けだね。」

「どうしたらいいかわからないんですが・・・。」

率直に疑問を投げかけた。

マスターはそれを受けて得意そうに待ってましたとばかりに説明を始める。

「大丈夫。ブラック・マジシャン・ガールのかわいい魅力を引き出す振り付けを考えてあるから。」

「かわいい魅力ってなにいってるんですか!?」

恥ずかしげもなく言うマスターとは正反対に耳まで真っ赤になってしまう。

「しょ、しょうがないですね。その振り付けってどうすればいいんですか?」












「ここでジャンプ、あ、そこでもジャンプ。」

「え〜、なんでこんなにジャンプしなきゃいけないんですか。」

「胸を揺らすためだよ。」

「・・・揺らす?」

「だって。ブラック・マジシャン・ガールの魅力っていったら胸に決まってるよね。」

「・・・・・。」

「それか蹴りポーズで眩しい太腿を見せるのもいいかも。」

「・・・・・。」

「どっちがいいかな?」

「・・・・・。」

「あれ、どうしたの!?」

振り返るとブラック・マジシャン・ガールがギターを斜め上段に構えていた。

「わたしもいい振り付け考えましたよ。」

バキィッ!!!

「ギターで叩いちゃダメーっ!!」

(ちょっと気を許すとこれなんだから)

せっかく歌って発散したストレスが前よりもたまってしまうのだった。

ブラック・マジシャン・ガール




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