2/9ニュース(「Yahoo! JAPAN」掲載より全文引用)

在外被爆者が逆転勝訴 「権利濫用」と広島高裁(共同通信 2月8日)

 被爆者援護法に基づく健康管理手当の未払い分を支給しないのは違法として、ブラジル在住の被爆者向井昭治さん(78)ら3人が広島県に計290万円の支給を求めた訴訟で、広島高裁は8日、「行政側の時効主張は権利の乱用に当たり許されない」として、支給を認めなかった1審判決を取り消し、請求全額の支給を命じる原告側逆転勝訴の判決を言い渡した。
 時効主張を認めなかった判決は高裁レベルでは初めて。
 判決理由で草野芳郎裁判長は、国が被爆者援護法の海外適用を認めない旧厚生省局長通達(402号通達)について「正当な法律の解釈を誤ったもので、被爆者の権利を長期間にわたり否定してきた」と批判した上で「(時効適用は)著しく正義に反し、原告の権利行使を妨げた」と判断した。




 2006年2月15日

 「在ブラジル被爆者健康管理手当等請求控訴事件」の上告を断念して頂きたく、在ブラジル原爆被爆者協会では、広島県知事様宛に下記の書簡をお送り致しました。 
 在外被爆者の願いを聞き届けて頂きたいと願っています。


広島県知事
藤田雄山様

 広島高等裁判所で裁判を行われていた、在ブラジル被爆者健康管理手当等請求控訴事件で広島県は敗訴致しました。

 この件で広島県、その代表知事である貴殿は最高裁判所に上告する権限を与えられているただ一人の方です。

 世界で最初の被爆都市の県知事として、ただ外国に居住権が有るというその理由だけで、日本の被爆者と差別されている被爆者の声を聞き、この裁判の上告を断念して頂きたいと思います。ブラジルでは連日この裁判の問題が報道機関で大きく取り上げられ、人権を尊重した事に賛辞の言葉が寄せられています。もし上告されますと日本政府に対する人々の感情は変わるでしょう。

 裁判をしています3人の被爆者は、被爆当時日本の戦勝を望んで國のために働き、そして國の奨励により移住し、今は移住国で日本人として誇りを持ち老いて、病弱の日々を送っている方です。

 この方達は日本政府から帰国治療をするようにと広島に呼んでもらい、健康管理手当の申請をして、日本滞在中は管理手当を支給されましたが、ブラジルに帰るとそれを打ち切られ、当地で自費で診察治療を行ってきている方です。日本にそのまま住んでいればその心配は無かったのでしょうが、やむにやまれぬ気持ちから裁判に踏み切った方です。

 世界で最初の被爆地平和都市広島を統括する知事である貴方様に重ねてお願いします。勇気と、移住者の心情を思い上告を断念して頂きたくこの書をしたためました。この権限を持っているのは貴方様だけです。

 もし上告されますと今裁判で戦っている方々は、最高裁の判決を聞く事は出来ないでしょう。

 以上簡略な書簡となりましたが。重ねてお願い申し上げます。

2006年2月15日

在ブラジル原爆被爆者協会会長    森田 隆