2005年9月26日福岡高裁判決に関する、厚生労働省ホームページ公表資料 @2005年9月27日(火) 尾辻厚労相の閣議後記者会見における記者との質疑応答の内容A2005年9月30日(金) 尾辻厚労相の閣議後記者会見における記者との質疑応答の内容 |
@2005年9月27日(火) 尾辻厚労相の閣議後記者会見における記者との質疑応答の内容
※「厚生労働省ホームページ」内「大臣等記者会見 平成17年9月27日付閣議後記者会見概要」より一部抜粋
(記者)
昨日福岡高裁で、在外被爆者の健康管理手当等の支払に関して、被爆者援護法は海外に住んでいる人も援護の対象であるという趣旨の判決だったようなんですが、まず訴訟への対応というのと、行政的な対応を何かご検討されているのであれば、ちょっとお聞きしたいと思います。
(大臣)
まず、国側にとりましては、大変厳しい判断が示されたというふうに考えます。
そこで、これに対応するか、すなわち上訴するかどうかということについての判断をしなければなりません。 このことに関しましては、この後長崎市、それから法務省とも協議をしなければならないことでありますので、協議をして結論を出したいというふうに考えております。
一方、かねてより、行政的な手続きとして在外公館を利用して、海外におられる被爆者の皆さんに対する手当等の手続きを進めたらどうだろうということがございます。このことについては、ご報告を申し上げておりますように外務省とどのように実施できるかということについて検討作業を進めている最中でございます。
以上でございます。
…<中略>…
(記者)
先ほどの在外被爆者のお話なんですけれども、上告するまでの期限として2週間あると思うんですが、この期限としてはいっぱいいっぱい使って十分考えてというようなおつもりでしょうか。それともできるだけ早く、よりもう少し早い形で結論を出したいというふうに今の段階で思われていますか。
(大臣)
先ほども申し上げましたように、長崎市が一番の当事者でありますし、それからまた国の立場としても法務省もありますので、そうしたところとの協議をしなければなりません。
従って私があまりここで先に申し上げるのもいかがかとは思いますが、ご質問でありますから今の私の気持ちだと思ってお聞きいただきたいのですが「1週間くらいで結論を出したい」とは思っております。
(記者)
1週間くらい。
(大臣)
1週間くらいで。これは今私の気持ちだとお聞き下さい。いろいろと協議をしなきゃなりませんので、あまり私が先に申し上げるのも協議をする皆さんに対して失礼な話でもありますので。私の今の気持ちだけを申し上げますとそういうことであります。
(記者)
結論に当たっては昨日の判決でもかつて大阪の高裁判決と同じような形で、援護法の性質をどう見るかという部分について、これまでの政府見解とはちょっと違う形であると思います。
ここでの援護法がどういう法律かという法律論と、一方で高齢化している被爆者、この人道的な部分。人道的配慮と法律の見方のどちらに立脚するかというところが決断に大きな関わりを持つんですが、これも協議の後の話だと思うんですけれども、大臣ご自身のお考えとしてはそういった法律論、それと高齢化する被爆者への人道的配慮をどうするか、どのあたりに重視して立脚点を置いて考えられるのか。
(大臣)
今まさにおっしゃったことがポイントだと思います。そのどちらを採るかということになるわけでありまして、これはいわば私がこれまで申し上げてきた表現で言いますと「そこのところが政治決断なんだろう」と考えております。
ただ再三今日も申し上げましたように各方面との協議が必要なことでありますので、今私のそこに踏み込んだ思いとか考え方は、今日申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
(記者)
長崎市の方が上訴をしない旨のことを昨日表明しているようなんですが、これは今後の協議に、国との相談だということだと思うんですけれども、この長崎市の意向というのは大いに影響を与えるというふうにお考えですか。
(大臣)
長崎市のお考えは十分お聞きをしなければならないと考えております。
いずれ長崎市長にお見えいただくと思いますから、その際によく話をさせていただきます。
(記者)
その関連ですが、行政手続きの方の在外公館を利用するというお話についてはかなり外務省と話をされていると思うんですけれども、こちらの方の結論というのはいつ頃出る予定なんですか。
(大臣)
外務省との協議をしております事務的なことで申し上げますと、大きくは2点あります。
1つは本人確認をどうするかということであります。
それからもう1つはお医者さんの判断をしてもらわないといけない。じゃあそういう判断をしてもらうに当たってどういうお医者さんに診てもらうのかというようなことがあります。
大きくこの2点があるわけでありまして、今そうしたことを事務的に詰めておるところでございます。
こうしたことも含めてこの度結論を出すに当たってはその見通しなしでは結論も出せないわけでありますから、今回この訴訟に対する私どもの対応をどうするかという際にはそうしたことまで含めて申し上げたいと思っております。
(記者)
長崎市の伊藤市長と面会しないとやはり結論は出せないというお考えでしょうか。
(大臣)
協議を。
(記者)
長崎市という行政機関としてというよりも伊藤市長と最終的にはやっぱり腹を合わせなきゃいかんというお考えですか。
(大臣)
あまり分けて考えておるわけでもありませんが、長崎市を代表する市長さんとやはり話をさせていただかないと長崎市のご意向ということを十分お聞きするということにはならないだろうと考えます。
(記者)
そういう意味では先ほど大臣ご自身のお気持ちとして1週間くらいで結論を出したいとおっしゃられましたが、伊藤市長の方が北欧の視察に行かれているみたいですけれども、帰ってくるのが1週間ちょっとくらいかかると思うんですが、その辺はどうお考えですか。
(大臣)
私も長崎市長の日程については承知をしておりませんので、今のお答えどうお答えするかなというふうに戸惑っておるところでありますが、むしろ私がお聞きしたいのですが本当に海外にお出かけなんでしょうか。
(記者)
そういうことで聞いております。
(大臣)
私の気持ちを申し上げると大事なときにいていただきたいとは思いますが、お出かけであれば仕方がありませんので、場合によってはお帰りをお待ちしてと考えます。
A2005年9月30日(金) 尾辻厚労相の閣議後記者会見における記者との質疑応答の内容
※「厚生労働省ホームページ」内「大臣等記者会見 平成17年9月30日付閣議後記者会見概要」より一部抜粋
(記者)
先日の会見でも出ましたが、在外被爆者の問題ですけれども、長崎の助役もこちらの方に来られまして上告を断念したいという申し入れがあったそうです。その後、厚労省の方の検討の結果、現段階どこまで。
(大臣)
今お話がございましたように、長崎市から助役がお見えになって、上告はしたくないと、避けたいというお話がございました。それについて、そのお話をお聞きをいたしましたので、それも踏まえて国の方の協議を、すなわち法務省などと、今進めておるところでございまして、まだ協議の段階でございます。
B2005年10月7日(金) 厚生労働省 報道発表資料「福岡高裁判決について」
※「厚生労働省ホームページ」内「報道発表資料 福岡高裁判決への対応について」より全文抜粋
福岡高裁判決への対応について
1. 本年9月26日、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)に基づく健康管理手当及び葬祭料の国外からの申請に関し、福岡高等裁判所の判決があった。
2. 今回の判決は、被爆者援護法が、健康管理手当の支給要件に関する認定等について「都道府県知事」と規定し、「居住地の都道府県知事」とは規定していないことから、長崎市長が行った次の処分を取り消した一審判決を、維持したものである。
(1) 被爆者健康手帳の交付を受けた者(以下「手帳所持者」という。)が出国して国外から行った健康管理手当の申請を却下した処分
(2) 国外で死亡した手帳所持者の葬祭を行ったとする者からの葬祭料の申請を却下した処分
3. 今回の判決は、被爆者援護法について、その前文を根拠に国家補償的な性格を強調しているが、政府としては、この前文の「国の責任において」とは被爆者援護対策に関する事業の実施主体としての国の役割を明確にしたものと考えており、判決とは見解を異にしている。
4. しかし、今回の判決の結論は、法律が明文で「居住地の都道府県知事」と規定していないことから導かれているものであること、また、直接の訴訟当事者である長崎市からは、上訴しない方向で進めたく、国もその方向で考えてほしい旨の強い意向が寄せられていること、そして、次に述べるとおり、国外からの申請についても適正に審査できる新たな仕組みを設けることが可能になったこと、更には、在外被爆者の方々の高齢化に思いを致す必要があることなどを総合的に勘案し、長崎市に上訴を促すことは行わないこととした。
5. また、健康管理手当等の国外からの申請については、かねてより進めてきた外務省との協議の成果に基づき、今後は、次のとおり可能とすることとしたい。
(1) 手帳所持者が国外から健康管理手当を申請する場合は、在外公館を経由してこれを行うこととし、国外で死亡した手帳所持者の葬祭料の申請についても、同様とする。(いずれも、申請は、日本国内における最後の居住地の都道府県に対して行うこととする。)
(2) 在外公館は、上記(1)の申請があったときは、本人確認や受給要件の確認に関し、一定の事務を行うこととする。
6. 今後、各在外公館並びに広島市、長崎市及び都道府県において所要の準備を進めていただくとともに、政省令の改正を行い、できる限り早く、上記5.に示した新たな仕組みに移行することとしたい。
なお、今回の訴訟とは別に係争中である保健手当の国外からの申請についても、上記に準じて取り扱うこととする。
C2005年10月7日(金) 尾辻厚労相の閣議後記者会見における記者との質疑応答の内容
※「厚生労働省ホームページ」内「大臣等記者会見 平成17年10月7日付閣議後記者会見概要」より一部抜粋
《福岡高裁判決への対応について》
(大臣)
去る9月26日に在外被爆者に関する福岡高裁の判決がございましたので、これにどう対応するかということで関係省庁と協議をしてまいりました。その結果についてご報告を申し上げたいと思います。
あらかじめ、今日申し上げることの要旨をまとめてございますので、今お配りをいたします。
述べておりますことをご説明を申し上げたいと思います。まず、1と2で最初に経緯を述べておりますけれども、これはご案内のとおりでございますから、改めて申し上げません。3と4で今回の判決にどのように対応するかということを述べております。
3に述べておりますように、今回の判決には、政府の私どもがこれまで述べてきた見解と異なるところがある、ということを改めて述べてあります。3で書いてありますように、これまでの私どもの見解と判決で述べられておることは相容れないところがありますけれども、しかしながら、として4でございます。
まず、今回の判決の結論が法律が明文で「居住地の都道府県知事」と規定していないこと、−すなわち、法文に居住地という言葉が入っていないという意味であります−ここから導かれておるということが1点。それから、直接の当事者であります、被告は長崎市でございますから、そういう意味で直接の当事者である長崎市からも上訴しない方向で進めたいという考え方が国の方に伝えられておりまして、そのご意向が強いということ、これが2点目であります。さらに、3点目として、この後ご説明をいたしますけれども、国外からの申請について適正に審査できる新たな仕組みを設けることが可能になりました。このことが3点目。そして、4点目として、このことも非常に強い私どもが今回の決断をしたことの理由なのでありますけれども、在外被爆者の方々の高齢化に思いを致す必要があること。以上4点を申し上げましたけれども、こうしたことを総合的に勘案致しまして、国の意見として長崎市に上訴を促すことはしないということに決めました。
まず、上訴しないということを申し上げているところでございます。
今後どうするかということについて、5と6で述べております。健康管理手当等の国外からの申請の取扱いであります。これは、可能とすることにいたすということであります。健康管理手当等の国外からの申請を可能とする、ということにいたしました。これは、先ほど申し上げましたように、そうした取扱いとする仕組みを設けることが可能になったことを上訴しないことの理由の1つにしておりますけれども、具体的に申し上げますと、在外公館の活用について、このところ外務省と協議を進めてまいりました。このことは、ご報告を申し上げてまいったとおりであります。この協議が実を結びまして、国外から健康管理手当等の申請は在外公館を経由することとし、在外公館は一定のチェックを行った上で申請先の自治体にこれを送付するという仕組みを設けることにいたしました。
上訴しない理由の中でも申し上げましたけれども、在外被爆者の方々大変高齢化しておられます。この新しい仕組みは一日でも早く実施したいと考えておりますので、事務方には来月中の実施を目指して準備作業を急ぐように指示したところでございます。今日、ご報告申し上げようと思っておることは以上でございます。
《質疑》
(記者)
在外被爆者の関係なんですけれども、先ほどの理由のうちの「居住地の都道府県」と規定していないことからという部分なんですけれども、これは要するに、これ以上法律論で争うことはかなり難しい、そういう判断だと理解してよろしいでしょうか。
(大臣)
難しいというよりも判決文に「居住地という言葉が抜けているじゃないか」ということの指摘でありまして、これは援護法を作ったときのいろいろな経緯があるんですけれども、今更これを言っても仕方がありませんし、ある程度、言うならば「受けざるを得ない部分」かなというふうには思っております。
(記者)
上告をしても勝つことは少し難しいかなというふうに。
(大臣)
そこまで詰めて考えたわけではないんですが、そういうふうに判決文に述べられておる、ということでもあるしというふうにご理解下さい。
(記者)
制度を見直すことで、今後支給申請が出来るようになる人の対象者は、これはどれくらいになるというふうに。
(大臣)
広島市、長崎市それから各都道府県で把握している情報を総合いたしますと、約1300人の方から新たに国外から手当の申請がなされる可能性があると考えております。従って、1300人というのは一番大きな数字であります。
(記者)
今おっしゃったのは、健康管理手当についてということでしょうか。
(大臣)
そのようにご理解下さい。
(記者)
今回の訴訟では、葬祭料、亡くなった場合に支払う葬祭料も訴訟になっていたと思うんですけれども、それは在外被爆者の方全員が対象になるということですかね。
(大臣)
葬祭料は、被爆者が亡くなったときに、その葬祭を行う方が申請できるものでありまして、国外にお住まいの全ての被爆者健康手帳所持者が約3600人おられます、その方々のご遺族が国外から申請できることになりますので、今後のことでございます。
(記者)
そうなりますと、被爆者手帳を持つことによって受けられる恩恵と言いますか、援護が拡充されるということになると思うんですけれども、これを受けてもっと来日して手帳を欲しいという人が増える可能性があると思うんですけれども、来日を支援する予算措置としての事業をもっと拡充するというような、その辺りに関しては何か検討されていますか。それの予算規模の拡大。
(大臣)
既にその仕組みを作ってありますので、それをご活用いただくように出来るだけお知らせはしなくてはいけないと思っていますが、制度そのものは既にございます。
(記者)
確認なんですけれども、広島市が被告の裁判は判決を待たずに途中で控訴を取り下げることになるというふうに受け止めていいんでしょうか。
(大臣)
先ほどから申し上げておりますように、裁判の当事者は広島市でございますから、そういう意味では広島市がどうするかということになりますが、常識的には取り下げになる方向というのはこれは言えると思います。ただあくまでも当事者は広島市であるということは申し上げておきます。
(記者)
今回の措置で、手当には確か他にも全部含めて確か6種類くらい手当があったと思いますが、今回のこの制度改正で認められる手当というのは、健康管理手当と保健手当ということになるんでしょうか。
(大臣)
今言われたようなことは、今後更に詰めなければならないところもございますので、詰めて今月中にも明らかにしたいと考えております。早急に整理して、今月中にまた改めて申し上げたいと思います。
(記者)
もう1点ですけれども、葬祭料ですが、これまで過去に海外で亡くなられた被爆者で、ご遺族が出ないということで申請しなかった例などもあるかと思うんですが、そういったところまで遡及して認めるということ、そういったことは特には考えていらっしゃらないんですか。
(大臣)
そういうことも含めて検討します。
(記者)
国家補償的な性格のところなんですけれども、これで言うと要するに国としてはまだ援護法の位置付けというのはこれまでと認識は変わりはないということでいいのでしょうか。
(大臣)
そういうことです。援護法の位置付けにおいては、私どもの考え方を変えているものではございません。
(記者)
税源に基づく社会保障ということですか、位置付けとしては。
(大臣)
そうです。そのとおりです。
(記者)
そうするとそれでも上告を断念したというところは高齢化ということもおっしゃっていましたが、人道的なところが大きいと思うんですけれども、そこら辺の大臣のお気持ち、どういうお気持ちで上告断念されたというところをもうちょっとおっしゃっていただきたいのですが。
(大臣)
私が大臣になりましてからこうした在外被爆者の皆さんに係る判決がいろいろ出ました。その都度思っていたことでありますけれども、私どもの理屈は理屈でありますけれども高齢化しておられる、そして日本で今は海外にお住まいですけれども、被爆なさったという極めて重い事実もあります。そうした中で「何ができるんだろう」、「どうすればいいんだろう」ということをずっと思ってまいりました、考え続けてまいりました。そうした中で今回理屈は理屈として、どういう表現がいいんでしょうか、政治的決断とでも言いましょうか、私も途中ではずっと政治決断がどこかで必要だということは言い続けてきましたので、その表現で申し上げますとまさに今回政治決断をしたとご理解を下さい。
…<中略>…
(記者)
戻るようで申し訳ないんですけれども、野党の方が在外被爆者の手帳の取得の方も外在公館を使ってできるようにというような法案を議員提案されています。今後そういう声が広島・長崎の方からも出ると思うんですが、それにはどのようにお答えになりますか。
(大臣)
この民主党が出された、昨日お出しになったというふうに聞いておりますけれども、前にお出しになったものは私も見ておりますが、改めて昨日お出しになったものは全く同じものなのか、少し変化しておるのか、ここもまだ確認をいたしておりませんので、よく見せていただきたいなと思っております。いずれにいたしましても、今国会に法案が出されたわけでありますから、今後国会の場でどういうふうに取り扱うかということは決められるものでございますので、それを待ちたいと思います。