逗子の市民運動

池子米軍住宅建設反対運動と民主主義の研究




 『逗子の市民運動 −池子米軍住宅建設反対運動と民主主義の研究』は、1982年秋から1995年まで続いた、神奈川県逗子市の市民運動についての社会調査をもとにして書いたものである。「緑と子供か、それとも日米安全保障条約か」、「住民投票による直接民主主義か、伝統と妥協を大事にした議会主義か」など、最近の諸問題に直接関係する種々の諸課題に、いろいろな成果を残した。ある時代には、「成功した運動」「新しい社会運動」「普通の主婦の運動」というように表現されたこともあったが、他の運動と同様にある結末に至った。その最終段階まで、緻密に社会学の調査手法を用いて記録・分析していくことで作り上げた作品である。

以下に示すように、『逗子の市民運動』としてまとまるまでに、種々の調査が繰り返された。


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資料・文献

1.調査資料

 本書で用いた調査資料は、アンケート調査(調査1、3、5)で得られた回収調査票 およびそれをもとにして作成された集計・統計データと、インタビュー調査(調査2、4) で得られた面接録音テープ、その録音記録をそのまま文字化した記録および要約しなが ら文字化した記録などから成っている。それぞれについて詳細を示すと次のようになる。

1)調査1

 逗子市選挙人名簿に記載されている逗子市民(女性)1,298人を単純系統抽出し、郵送 留置調査員派遣回収法によりアンケート調査。1987年11月18日(水)から20日(金) にほとんどすべてを回収。87年10月の市を二分する激しい市長選挙戦直後であったため、 回収票(率)は、619票(47.4パーセント)にとどまった。調査員は、1987年度早稲田大 学第一文学部社会学演習IICの学生22人と著者であった。自由回答欄以外は、統計パッ ケージSPSSで集計・分析が可能なデータにして用いた。

2)調査2

 1987年7月10日(金)から21日(火)に実施した準備調査と、同年11月20日(金) から12月14日(月)に実施した本調査とから成っている。ともに面接法による調査であ る。準備調査は、米軍住宅建設反対運動に関わっている人々(11人)に対して実施した。 面接対象者を選ぶにあたっては、運動に一定の役割を演じていると考えられた人(SM さん)に、著者と協力者が直接面接し、知人11人を紹介していただき、質問内容を標準 化するための細かいマニュアルを作成して学生調査員が面接調査した。この準備調査の 結果と方法をもとにして、53人に同様の方法で面接調査を実施したのが本調査である。 この本調査の面接対象者紹介にあたっては、やはり運動におもに関わっていた人(14さ ん)に依頼し、35人を紹介していただいた。その35人に面接調査を実施するとともに、 その35人から新たに紹介を受けた人たちのうち17人にも面接調査を実施し、合計53人 の方々からさまざまなデータを得た。調査員は、準備調査も本調査も、どちらも調査T と同じく1987年度早稲田大学第一文学部社会学演習IICの学生22人であった。  面接で得られたデータは、事前に郵送し回答していただいた調査票(調査Tと一部共 通の設問で構成)録音テープ(のべ165時間を超える)とからなるが、膨大な時間に及ぶ ので、全対象者の面接データを定型化するために、構造化した記録用紙に学生調査員が テープを聞きながらまとめ記録した二次データを作成した。本文中「 」内に示した対 象者の発言は、録音の承諾を得られなかった箇所など、テープに録音されていない情報 については、学生調査員が記録した構造化された記録用紙の情報をもとにしているが、構造化した記録用紙といえども、当然のことながら、まとめ方により調査員の個性が反映 される二次データであるため、本書で用いるにあたっては、上の例外を除いて、筆者が 改めて録音テープから起こし直したものを用いている。

3)調査3

 逗子市内4地区(逗子、久木、新宿、池子)について逗子市選挙人名簿に記載されてい る逗子市民を各地区男女200人ずつ、合計1,600人を系統抽出し、郵送留置調査員派遣に より回収したアンケート調査。1989年11月17日(金)から20日(月)にほとんどすべ てを回収した。回収票(率)は、882票(55.1パーセント)であった。調査員は、1989年 度早稲田大学第一文学部社会学演習IICの学生25人であった。自由回答欄以外は、統計 パッケージSPSSで集計・分析が可能なデータにして用いた。87年に実施した調査1 は、面接調査(調査2)と連動して設計されていたため、地区比較、男女比較をするの に多少無理があったため、それらが可能になるように、また建設準備工事がさらに進み、 一般的な意見が変化していると考えらことから、この調査を新たに企画し実施した。

4)調査4

1991年7月30日(火)から9月17日(火)に実施した運動の主要メンバー6人への面 接調査。6人全員、調査Uの対象者であり、87年以後の運動および対象者それぞれの活 動の状況について、面接法によりデータを収集した。調査は、すべて著者単独によるも のであり、録音テープ(およそ12時間)すべてについて著者がすべて逐語的に文字に起 こした記録を基本データとして用いている。

5)調査5

 1995年10月に、調査TおよびVの対象者のうち何らかの回答を得た対象者(調査1: 675人、調査3:889人)と調査2の対象者(63人)を合わせた1.627人(したがって、質 問全問遺漏なく回答いただいた対象者のみならず、一部については回答をいただけなかっ た対象者も含んでいる)に対して、郵送法により実施した自記式アンケート調査。回収 票(率)は、575票(35.3%)であった。調査票は、90年以降の市政選挙における投票行 動を訊ねるA票(回収553票(34.0%))と自由に意見を書き込んでいただくB票(同537票 (33.0%)、そのうち記入のあるもの465票(28.6%))とから成っていた。A票については、 調査1および調査3と参照・比較可能なように加工を施したデータを作り、統計パッケー ジSPSSにより集計・分析を行った。なお、この調査実施のために、94年11月と95年 9月にそれぞれ別の対象者に面接調査を、また94年11月にはまた別の対象者に電話に よる調査を実施している。この調査も、著者自身によるものであったが、録音テープ(お よそ3時間)を文字に起こす作業については協力者に援助を求め作成した記録を基本デー タとしている。

 上記の5つの調査のうち調査Tから調査Vについては、調査実習に参加した学生たち が報告書をまとめ公刊している。

『調査報告書 池子米軍家族住宅建設問題をめぐって』早稲田大学文学部社会学研究室 1988年。(調査1、調査2についての集計と分析結果)

『調査報告書 逗子市民の社会意識調査』早稲田大学文学部社会学研究室 1991年.(調査3についての集計と分析結果)

『調査報告書 逗子池子米軍住宅建設問題の諸相』早稲田大学文学部社会学研究室 1991 年.(調査1、調査2、調査3の集計表ならびに収集した新聞、ビラ、ちらし類の分析結 果)

2.調査報告書類

神奈川県『湘南国際村基本計画』1988年5月.

神奈川県『湘南国際村基本計画 −主要計画書』1988年5月.

神奈川県環境部環境政策課『環境アセスメント10年のあゆみ』1991年11月.

逗子市環境部環境管理課『環境から見たまちづくり計画 −逗子市環境管理計画』1992 年.

逗子市環境法政調査研究会編『逗子市環境法政調査研究報告書』1991年3月.

逗子市情報公開制度調査研究会『昭和62年度逗子市情報公開制度調査研究報告書』1988 年3月.

逗子市情報公開制度調査研究会『昭和63年度逗子市情報公開制度調査研究報告書』1989 年10月.

逗子市都市政策室都市政策課『21世紀へのまちづくりプラン 逗子市総合計画 基本構 想・基本計画』1993年.

逗子市都市憲章調査研究会『〈逗子市都市憲章条例〉を考える(報告書)』1992年3月.

逗子市都市憲章制定検討研究会『逗子市都市憲章制定検討研究会』1993年3月.

逗子市都市憲章市民研究委員会『逗子市都市憲章市民研究委員会報告書』1994年.

逗子市名越切通史跡公園計画調査検討プロジェクトチーム『公園再編成部会報告書』1994 年3月.

逗子市名越切通史跡公園計画調査検討プロジェクトチーム法制検討部会『法制検討部会 報告書』1994年1月.

逗子市緑政課『(仮称)名越切通し史跡公園基本計画報告書』1992年3月.

横浜防衛施設局『池子米軍家族住宅建設事業を皆様にご理解いただくために』(発行年記 載なし).

横浜防衛施設局『池子米軍家族住宅建設事業 −環境影響予測評価書案のあらまし』1985 年8月.

3.新聞・雑誌・議事録

『会報ずし』緑と子供を守る市民の会(最終号 1995年3月)。

『議会だより』逗子市議会議会報編集委員会.

『広報ずし』逗子市市長公室市民相談課.

『逗子市議会定例会議録』逗子市議会事務局.

4.引用・参考文献

伊織二郎「池子問題と環境アセスメント」『世界』(84年12月号)岩波書店.

池子米軍住宅建設に反対して自然と子供を守る会

『池子アセス公聴会 公述記録集(完 全版)・・・語り尽くせないあつい思い・・・(モーション第15号)』1986年.

井上節子『海と緑と女たち −三宅島と逗子』社会評論社 1990年.

上野千鶴子・電通ネットワーク研究会『〈女縁〉が世の中を変える』日本経済新聞社 1988年.

Katz, Elihu/Lazarsfeld, Paul F., Personal Influence, Free Press 1955.

佐藤慶幸編『女性たちの生活ネットワーク』文眞堂 1988年.

篠原一編『ライブリー・ポリティクス −生活主体の新しい政治スタイルを求めて』労 働総合研究所 1985年.

逗子市編『池子の森 −池子弾薬庫返還運動の記録』ぎょうせい 1993年. 「

緑と子供を守る市民の会」記録・編集委員会編『市民協奏曲』みみずくぷれす 1985年.

生活クラブ生活協同組合総合企画室編『代理人運動 −その可能性』生活クラブ・ワー クブックbP.1988年.

田口汎『海辺の小さな〈緑〉のふるさと』スタジオ梵 1994年.

時任英陽「長洲一二神奈川県知事の動向 −発言から見た〈中間者〉の関与姿勢の軌跡」

『調査報告書 逗子池子米軍住宅建設問題の諸相』(早稲田大学文学部社会学研究室 1991 年)所収。

富野暉一郎『グリーン・デモクラシー −いま池子から訴える』白水社 1991年.

  − 『地方政府・地方主権のすすめ −小さなまちこそすばらしい』三一書房 1994 年.

西平重喜『比例代表制』中公新書 1981年.

Habermas, Juergen, Theorie des kommunikativen Handelns, Band 2., Frankfurt am Main 1982.

〔川上倫逸他訳『コミュニケイション的行為の理論』(未来社 1987)412頁〕

Parsons, Talcott, "On the Concept of Influence", in: Politics and Social Structure, Free Press 1969.

〔新明正道監訳『政治と社会構造』下巻(誠信書房 1974年)〕。

森 元孝「おおぜいの私の組織論 −生活クラブ生協における支部委員層の再生産を中 心に」

(佐藤慶幸編『女性たちの生活ネットワーク』文眞堂 1988年)所収.

  − 『アルフレート・シュッツのウィーン −社会科学の自由主義的転換の構想とその 時代』新評論 1995年.

   − 『モダンを問う −社会学の批判的系譜と手法』弘文堂 1995年.

Luhmann, Niklas, Oekologische Kommunikation,

Kann die moderne Gesellschaft sich auf oekologische Gefaehrdungen einstellen?, Opladen 1986.