シンデレラ



 プロローグ

 幕が閉まったままで、センターにスポットライトが当たっている。
 上手、下手を問わず、あちらこちらから、シンデレラを呼ぶ声がする。

     「シンデレラ」
     「シンデレラ」
     「シンデレラ」

 すべて命令口調で。

シンデレラ「ハーイ!!」

 幕の間から、スポットの中へシンデレラ登場。

シンデレラ「うるさいわね。今度は何?」

 第一場

 シンデレラの、ソロ。

シンデレラ『何の因果で、朝から晩まで 掃除に洗濯、食事の支度。私、これでも、お嬢様』

 歌の間に幕が開く。継母、義理の姉の二人スタンバイしている。

継母 姉 『シンデレラ 灰かぶり 貴女には お似合い』

 姉の二人、退場。

シンデレラ「それも、これもお母様が、私のお母様じゃないからなのよネェー!!」
継母   「何か言った!?」
シンデレラ「いえ別に…。」
継母   「アー肩凝ちゃった。シンデレラ肩揉んで」
シンデレラ「ハイ、ハイ…」

 渋々、肩を揉む。

継母   「喉が乾いたわネェー!!」

 シンデレラ、まだ肩を揉んでいる。

継母   「喉が乾いたの。気の利かない子ネェー!!」
シンデレラ「ハァ?! アッ!! ハイハイ…」

 飲み物を、取りに行く。
 飲み物を、取って来て、ソロ。

シンデレラ『何の因果で、朝から晩まで
      それも、これもお父様が、お母様が死んでしまって。
      たったの三年で、新しいお母様を連れて来たせい』

継母   「シンデレラ!!」
シンデレラ「ハーイ!!(客席に)しかも、コブ付き」
シンデレラ「はい、どうぞ」
継母   「ありがとう」

 シンデレラ、行こうとする。

継母   「シンデレラ、肩!!」

 シンデレラ、チョット、ムットして。

シンデレラ「ハイ、ハイ…」

 再び、肩を揉む。姉二人登場。

姉1(シャルロッテ)「お母様、お母様」
 2(マリアンヌ) 「招待状よ、招待状!!」


継母    「何よ、騒々しい(姉二人招待状を、差し出して)何よこれ?!」
シャルロッテ「お城から届いたのよ」
マリアンヌ 「舞踊会ですって」
継母    「舞踊会?!」

 急に立ち上がる、シンデレラ尻餅。

シャルロッテ「王子様の、お后選びらしいわ」
マリアンヌ 「玉の輿よ、玉の輿!!」
継母    「お城…王子様…玉の輿…金持ち…好きだわー!!」
シャルロッテ「ワ・タ・シ・モ…」
マリアンヌ 「ワ・タ・シ・モ…」

 玉の輿に乗る為にの、コーラス。

継母    『玉の輿に乗る為に
シャルロッテ 毎日 毎日 努力した』
マリアンヌ
      『太らないように ダイエット
       エステに 脱毛
       ジャズダンス』

シャルロッテ『私の美貌で 何時か かならず』
マリアンヌ 『いいえ、私の方が、キ・レ・イ』
シャルロッテ『お母様』
マリアンヌ 『お母様』
継母    『私の自慢の二人の娘。お金持ちに嫁がせて。豊かな老後』
三人    『絶対射止める、王子様』
継母    「そうと決まれば、新しいドレス」
二人    「作ってくれる!!」
継母    「モチロン!!行きましょう」

 三人下手に退場。シンデレラ、アッケに取られて見送る。

シンデレラ 「何あれ?!舞踊会って言ってたわねー?!王子様、玉の輿。私だって…。そう私の方がカワイイと、
     思いません。(客席に同意を求める)ハァ、でも、ドレスなんて持ってないし…」

シンデレラ 『私だって娘らしく 綺麗なドレスを着て
       お城へ行って 王子様と踊ってみたい

       お母様と お姉様達が来てから
       楽しい事なんて 何にもなくて 泣けてきちゃう』

      「お母さん…ママー…」

      『私だって 幸せになりたい』

魔法使い  「お嬢さん…」 (小声で)
魔法使い  「お嬢さん…」 (いくらか大きめに)
シンデレラ 「誰?!」
魔法使い  「ここです。ここです。私です」

 魔法使い登場。出来るだけ意表を突いて。

シンデレラ 「誰?!何者…?!」
魔法使い  「貴女お城へ行きたいとか」
シンデレラ 「何で、知ってるのヨッ!!」
魔法使い  「いえ、通りがかったら聞こえまして…」
シンデレラ 「で、何ヨッ!!」
魔法使い  「行かせてあげましょうか?!」
シンデレラ 「本気?!」
魔法使い  「そのかわり、旨くいったら」

 okマークを出して、料金の催促。

シンデレラ 「分かったわ」
魔法使い  「それでは、私と来てください」

 二人退場。カーテン閉まる。

   第二場   カーテン前

 お城へ行く人々が通って行く。歌いながら、踊りながら、賑やかに。

   第三場    舞踊会

 カーテン開くと、エトワールか、継母の、アリア風の曲でソロ。
 きっかけで、何組かのダンスになる。
 途中美しく着飾ったシンデレラ登場。最初とまどっているが、奥から現れた紳士(王子風に美しく)の、
 目に止まるように振る舞い、二人のデュエットダンスになる。(ワルツ)

シンデレラ 「夢のようですわ」
紳士    「(無言…)」
シンデレラ 「貴方のような方と出会えるなんて。」
紳士    「(更に、無言…)」
シンデレラ 「皆羨ましがっている。ネェ、そうでしょう。」

 曲と会話の間、始めは紳士がリードしていたが、次第に、シンデレラが、リードする。
 お供を連れた本物の王子登場。(出来るだけ間抜けに)

王子    「爺、いい娘が居ないノォー?!」
ジイ    「ハイ!!」
王子    「この国の娘は、この程度か」
ジイ    「そうでもないと思いますが」
王子    「サビシイノォー!!余のお妃選びに集めたのであろう」
ジイ    「ハイ!!」
王子    「あれはどうじゃ!!」
ジイ    「ハァ!!」
王子    「ウン、そうじゃあれが良い。良い子を産めそうじゃし…」

 曲が終わって、王子ツカツカと、シンデレラに歩み寄る。
 他の娘達も、一斉に紳士に群がる。
 シンデレラ、王子突き飛ばされて。

シンデレラ 「何よー!!その方は私のヨォー!!私の王子様なんだからー。」
王子    「エッ?!王子は私だが…」

 近くで、ひっくり返って居た王子起き上がって、シンデレラの手を取って。

王子    「娘、余の妃になれ」
シンデレラ 「イッヤー!!」

 王子、振りほどかれて、腰抜かし。

王子    「ナゼジャー!!余の妃になれば贅沢のしほうだいッ!!」
シンデレラ 「私にだって選ぶ権利はあるわ。あんまりヨォー!!私は、私は、(紳士のほうえ歩み寄り)貴方が良いの」
紳士    「エッ!!困ります」(チョト、声が高い)
王子    「娘、娘、余の妃になれ」

 王子かなり、しつこい。

シンデレラ 「イッヤー!!」

 と、駆け去って行く、そのとき丁度鐘の音がして、慌てたために大きめの靴が落ちて居る。

王子    「娘、絶対、余はお前を妃にするゾォー!!」

 カーテン閉まる。

   第四場  カーテン前

 息を切らせて、シンデレラ登場。

シンデレラ 「冗談じゃない、幾ら玉の輿しでも、あれは酷いわよ。マァ、最初にあんないい男見てなきゃ考えたけど。
       ハァ、しかし、どうしょう。お母様やお姉様にバレてなきゃ良いけど。(気を取り直して)
       ハァ、帰ろう、帰ろう」

   第五場   シンデレラの家

 カーテン開く

継母    『何で、こうなる
シャルロッテ 何で ああなる
マリアンヌ  何で シンデレラが』
シャルロッテ『お城へなんか現れる』
マリアンヌ 『しかも、綺麗にドレス着て』
継母    『盗んでいないりゃ、良いんだけれど。』
三人    『しかも王子様に気にいられた』

 シンデレラ、恐る、恐る登場。

シンデレラ 「あら帰ってたの。お早いですわネッ!!」
継母    「ただいま」
シャルロッテ「貴女も、もうお帰りなの」
シンデレラ 「(ギック!!) 」
マリアンヌ 「お楽しみ、みたいだったけど…」
シンデレラ 「(更に、ギック!!) 」
継母    「シンデレラ、お話しがあります」
シンデレラ 「お母様、お鍋が掛けてありますのみてこなくっちゃ」
継母    「シンデレラ!!」

 シンデレラ逃げようとする。ノックの音。

ジイ    「お城から参りました!!」
継母    「ハーイ!!」

 王子とジイが、シンデレラの靴を持って登場。

王子    「その方の家に娘は居るか?」
継母    「ハイ!!二人」
王子    「二人!!よし、この靴を履かせてみよ」
継母    「靴…?!」
王子    「そうじゃ、靴ジャ!!今夜城の舞踊会で余の妃となる娘の忘れ物じゃ探しておる」
継母    「ハイ、ハイ。」

 姉二人歩み出て、靴を履く。モチロン合わない。その間に、シンデレラ逃げようとユックリ、ユックリ動き出す。

王子    「そこの!!お前!!お前も履け!!この者達は合わなんだ!!」
シンデレラ 「いいえ、私なんか…」
王子    「いいから、履け!!」

 シンデレラ渋々履くが、モチロン合う。

王子    「やはりお前か、余の目は騙せなんだナッ!!ハッハハー!!」

 開き直って、継母と姉二人逃げようとする、シンデレラを捕まえて王子に差し出そうとする。

シンデレラ 「イヤョ!!イャ!!私は私はあの方がいいの助けてー!!愛しいお方」
紳士    「ハーイ!!呼んだのは私の事かしら?!」

 と、ドレス姿で、きらびやかに登場する。

シンデレラ 「ア・ナ・タ…」
紳士(実は淑女)「ごめんなさい、男装は趣味なの。ネェお兄様」
シンデレラ 「お兄様…」
王子    「そう、余の妹じゃ良く似ておるじゃろう」
シンデレラ 「ウ・ソ…」

 シンデレラ、立ち直れない。

淑女    「お兄様の、お妃になるんでしょう。貴女みたいな可愛い方って好きヨッ!!仲良くしましょうネッ!!」
シンデレラ 「私の夢。私の初恋が…。バッカッヤロー!!カエセー…!!」
ジイ    「イヤーメデタイ、メデタイ!!」
王子    「幸せにするぞョ!!」
シンデレラ 「イヤ!!イヤヨォー!!エーイ、こんな国、デテヤル。」

 シンデレラ、客席へ飛び下り走り去る。王子とジイそれに続いて追い駆けて行く。

王子    「待て、待てと言うのに」
ジイ    「王子、王子様ー!!」

 あっけに取られる舞台上の人々を残し。

            幕

 




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