つじ耳鼻咽喉科クリニック 鷺沼駅前、耳鼻科

漢方薬



漢方薬は鎮痛剤のように即効性がないと思われている方もいますが、短時間で効果の出る芍薬甘草湯のような即効性の薬も多く存在し、決してお薬の効果の出るのに何ヶ月もかかるものばかりではありません。



陳皮 陳皮 蘇葉 蘇葉



またみかんの皮、シソの葉などの食品から採取された生薬などを使った漢方薬もあるため、副作用が比較的少なく妊婦さんや授乳中に使えるお薬も数多く存在しています。

そのため体質、体格(これを漢方医学では”証”といいます)、病状、病勢などを考慮して適切に用いると副作用がなく西洋薬よりも効果が出るような場合もあります。



漢方薬が特に有用であるのは次のような場合です。

@副作用が強くて西洋薬が使えない場合

花粉症だが抗アレルギー剤で眠気が強かったり、ぼうっとしてしまう場合には小青竜湯苓甘姜味辛夏仁湯は眠気もおきずに有効です。イライラが強いが安定剤を飲むとぼうっとする場合は抑肝散は緩やかに気分を落ち着けます。夜の寝つきが悪いが睡眠薬を飲みたくない場合は酸棗仁湯、黄連解毒湯は緩やかな眠りに導いてくれます。便通が悪いが便秘薬を飲むと腹痛がひどい場合には漢方には数多くの便秘に有効なお薬があります。

A西洋薬の効果を増強する場合

インフルエンザでタミフルなどを内服する場合、悪寒や関節痛が強い場合には麻黄湯葛根湯を併用すると早く解熱する場合もあります。また単独でも効くといわれています。細菌性扁桃炎で抗生剤を内服する場合にも炎症や熱感が強い場合は小柴胡湯加桔梗石膏を併用すると効果的です。

B妊婦さんや授乳中の場合

漢方薬といえどもお薬はお薬です。麻黄附子細辛湯のように妊娠中の内服は避けた方が良い薬や大黄(主に便秘薬)のように授乳中に飲むと乳児が下痢しやすくなる生薬もあります。しかし例えば蘇葉(シソの葉)、陳皮(みかんの皮)、生姜(ショウガ)、甘草、香附子で構成された香蘇散はそのほとんどが食品の成分であり、妊娠中や授乳中でもかぜの初期に安全に使用できます。

C西洋薬に効果的なお薬がない症状の場合

のどのつまり感、体力の低下、手足の冷え、虚弱体質、夜泣き、月経困難症、むくみ、寝汗、つわりなど西洋薬には適当な薬のない症状や病態にも適当な処方が種々あります。

原因のはっきりしないのどのつまり感には半夏厚朴湯、体力の低下には、補中益気湯十全大補湯は有効です。お子さんの虚弱体質には小建中湯は飲みやすく効果的です。生理の前に落ち込んだり、生理痛が強く日常生活に支障がある場合には加味逍遥散桂枝茯苓丸当帰芍薬散などを症状に応じて使い分けます。また寒気だけが強く、鼻も咳ものどの痛みもないようなかぜには麻黄附子細辛湯は最も有効です。

Dその他

五苓散は水毒に用いられる薬で下痢にも嘔吐にもめまいにも用いられます。体内の水分が多いときには尿量を増やし、水分が少ないときには尿量を減らすという不思議な効果が解明されてきています。



漢方薬には有効な処方が多くある反面、にわかには理解しにくくそれぞれ全く関係ない複数の症状に有効である処方が数多くあります。これには気血水や実証、虚証の判断や六病位(今、病期がどの辺にあるか?)、脈、舌、お腹の所見などを参考にして処方の決定が行われます。そのため全く同じ症状でも患者さんによって処方が異なったり、全く違う症状なのに同じ処方が出たりする場合もあるのです。



ここ10年近く漢方について学んできました。また4年間は昭和大学で勉強させて頂き、漢方専門医を取得しました。



漢方薬は決して万能ではありません。また漢方薬で対応できない病態もあります。しかし西洋薬と効果的に組み合わせることで病気を効率的に治療することができる場合があります。また漢方には耳鼻科も内科も精神科もありません。耳鼻咽喉科領域以外の症状についてもお困りのことがありましたらお気軽にご相談下さい。