酉小屋で購読している新聞は、長野県で圧倒的な購読率を誇る(らしい)信濃毎日新聞です。これに週3回、松本近辺の話題を集めた「タウン情報」という小新聞が付いてくるのですが、ある日、自転車を通じて環境問題に取り組む市民団体の活動の記事が載っていて、こんな一文がありました。
「市役所を出発、湯川沿いの湯川自転車道を東上し、松本市かりがね自転車競技場−針塚古墳などを経由して教育文化センターまでの約5キロコースを走った。」 タウン情報(松本・塩尻・南安曇・東筑摩・池田・松川)2002年12月18日版より引用
「湯川自転車道」なんて名前、聞いたことありません。試しにGoogleで検索してみたけど、何も引っかかりません。地図を見ると、自転車競技場の近くを通って市役所方向へ流れる小さな川があります。どうやらこれが湯川だと思われますが、地図上には併走する道路はありません。「実際はどうなってるのかな?」と興味が湧き、実地調査に出かけることにしました。
この日は非常に良い天気。今年は12月に何度かまとまった雪が降りましたが、ここ数日の好天ですっかり解けてしまいました。雪をかぶった北アルプス、常念岳がとても綺麗です。田んぼに立っているのは、小正月に燃やす「どんど焼き(松本では「三九郎」と言います)」の中心部。ここで正月の松飾りや前年のお札、ダルマなどを燃やし、その火で焼いたモチやダンゴを食べて一年間の無病息災を祈ります。
(写真:雪の常念と、出番を待つ三九郎)
自宅から30分ほどで、松本城に到着。白い北アルプスと黒い松本城の組み合わせって、やっぱりいいなぁ(^_^)。
新聞記事でコースのスタート地点になっていた松本市役所は、松本城のすぐ東側にあります。市役所の周りをグルッと走ってみましたが、自転車道の案内らしきものは見当たりません。とりあえず、湯川(と思われる川)が女鳥羽川と合流している地点まで行ってみることにしました。
(写真:冬の松本城)
松本城をグルリと取り囲むように流れている女鳥羽川。この川は、松本城の外堀の役割を持っていました。地図を持ってくるのを忘れた(弱)ので、記憶を頼りに湯川が女鳥羽川へ流れ込んでいると思われる地点に行ってみると・・・ありました。小さな川と、歩行者用道路の標識。どうやらこれが、湯川自転車道の入口のようです。その道は、すっかり駐車スペースと化していました(怒)。松本の中心部を走る道路には自転車専用レーンがあるのですが、そちらは路上駐車場と化しています。自転車通学をしていた高校時代、何度ケリを入れてやろうと思ったことか・・・(爆)
(写真:湯川自転車道?入口)
右に左にと湯川を何度か渡りながら、予想以上にしっかりした歩行者用道路が続いています。自転車歩道通行可の標識があるので、もちろん自転車もOK。「湯川自転車道」という名前は、特にどこにも書いてありません。どうやらタウン情報の記者が勝手に付けた呼び名のようです(?)。
しばらく走ると、左手に「かりがね自転車競技場」が見えてきます。でもこの歩行者用道路は、競技場へつながっているわけではなく、そのまま湯川に沿って続いています。どこまで続いているのか確かめるべく、さらに上流へさかのぼってみました。
(写真:湯川と、併走する歩行者用道路)
やがて湯川はどんどん細くなり・・・とうとう、こんな側溝のような姿になってしまいました。写真の左側が歩行者用道路、右側は車道です。そして美ヶ原温泉に入ったところで、他の側溝に入り混じってその姿を確認することはできなくなってしまったのでした。
(写真:湯川・・・か?)
湯川消失地点で、初めて案内標識を発見。そこには(写真では読めないけど)「田園遊歩道」と書いてあります。やはり、先ほどの歩行者用道路は「湯川自転車道」という名前が付いているわけではないようです。何となく釈然としない気持ちを抱きつつ、次の目的地、針塚古墳を探して、走り出しました。
(写真:田園遊歩道入口)
事前に見てきた地図には、針塚古墳の位置は載っていませんでした。「現地へ行けば、何か表示があるだろう」と思っていたのですが、どっちの方角に行けばいいのか、見当もつきません。手掛かりを求めて美ヶ原温泉街をウロウロ走り回っているうちに、再び川と併走する歩行者用道路を発見しました。さきほどの側溝よりもずっと川らしい川。しかも看板には「湯川水系」の文字があります。「もしかして、さっきはどこかで道を間違えたのか?こっちが本命の“湯川自転車道”なのか??」謎は深まります。この謎を解くべく、この川に沿って下っていってみることにしました。
(写真:こっちが本物の湯川?)
しばらく川沿いに走っていると、ありゃりゃ?道がない。田んぼのあぜになって、そのまま道が消えてしまいました。川の反対側にもありません。やはりこの道は湯川自転車道の続きではなく、この区間だけの独立した歩行者用道路だったようです。ここで引き返すのも中途半端なので、この川がどこで先ほどの「湯川自転車道」にぶつかるのか確かめるため、迂回コースを探すことにしました。
(写真:道が・・・ない!)
500mほどの距離を迂回し、再び川と併走する道に出ました。こちらは車道です。そして程なく、最初に通った歩行者用道路との分岐点に着きました。写真の左側の道が歩行者用道路。左側から合流してくる支流に沿って、左へと分かれていきます。やはり最初に通ったコースは間違っていたわけではなく、途中で湯川の本流から離れて続いていたんですね。
(写真:湯川合流点)
しばらく針塚古墳を探して走り回ったけど見つからず、誰かに聞こうと思ったけど「針塚古墳」という名前自体がウロ覚え(実は「針倉古墳」だと思ってた)だったので聞くに聞けず、とうとう古墳は断念しました。
それでも、最終目的地がないまま終わるのは尻切れトンボなので、新聞記事に載っていたゴール地点「教育文化センター」に行ってみました。ここには写真のような、「開知学校もどき」の建物があります。小学5年生の時に社会見学でこの中に入ったら、中は民族資料館のようになっていました。
(写真:なんちゃって開知学校)
とその時、教育文化センターのすぐ前に、針塚古墳の案内表示が出ていることに気付きました。「何だ、このすぐ近くだったんだ。」ということで、そちらへ行ってみました・・・が、田んぼの中にでてしまい、どこが古墳なんだか???
しばらく走り回っていて、ようやく古墳を見つけました。もっと背の高い、小山のようなものを想像してたんだけど、実際にはこのように土饅頭のようなもの。これではすぐに見つからなかったのも無理はない。
(写真:針塚古墳)
こうして、今回の「湯川自転車道探索」は、「“湯川自転車道”というちゃんとした自転車コースが整備されているわけではなく、単に市民団体の人達が走ったコースに、新聞記者が名前をつけただけらしい」という結論で終わったのでした。
コース名称:田園遊歩道(湯川自転車道)
距離:2.45km
標高差:29m
スタート地点:松本城東側、女鳥羽川と湯川の合流点
ゴール地点:美ヶ原温泉、旧ラドンセンター近く
感想:歩行者用道路なので、特に危険を感じることなく走ることができる。しかし道中はほとんど住宅街と畑しかないので、別に走っていて楽しい道ではない。新聞記事にあったように途中から針塚古墳方面へ向かっても、やはり住宅街ばかり。観光用コースとしては魅力に欠ける。あくまで生活道路という位置付けなのだろう。