モーニング トーク





穏やかに目が開く。

遮光のカーテンの合わせ目から帯状に光が、薄暗い部屋に白い線を引く。

静かな朝。

サラリと髪を掬われて、くすぐったくて笑った。

それから何度も撫でられて、そこから暖かさが広がっていくようだ。

口数が少ない。

本当の所、この人はそんなふう。

自分と居る時は、少しだけ違う面をみせる。

だから、眼差しとか、動作とかが言葉の代わり。

だから、一生懸命見つめないと、取りこぼしそうになる。


うつ伏せから、くるりと仰向けになって、起き上がっている人に顔だけ向けると、

少し長い前髪の隙から細めた瞳が視線を合わせてくる。

まだ髪に触れている、指先にそっと自分の手を重ねて、同じように撫でると、

前髪を僅かに揺らしながら、くすくすと笑った。


[ 笑う ] という行為は大切だと思う。

[ 泣く ] という行為に並んで。


先に目覚めたこの人は、一体何を考えていたのかな。

本も読めない薄暗い部屋で。

目が覚める前に、耳元で名前を呼ばれた気がしたけど、ただの自分の

希望なだけかもしれない。


同じ上掛けの中で、違う呼吸で眠った。

同じ上掛けの中で、違う鼓動で目覚めた。


掠れたような記憶の中で鮮明な痛みを胸はいつも抱いて。

それを、宥めるように、あの手はいつも髪を撫でる。


「何か飲むかい?」

二人っきりなのに、ささやき声。

「今日は何をしようか?少し遠くの図書館」

こくりと頷くと、深いため息が吐かれた。

「たまには、カフェでデートとかいうのにも憧れるんだがなぁ」

「だれが、デートか」

ふいっとそっぽを向くと、それにあわせて手の平も追ってきた。

いつまでも撫でられたままでいるのは、気持ちがいいから。

起きたくないほどの心地良さ。

「では、図書館に行く前に10分だけ」

「やだ」

「鋼のー」

「オレはここがいいの。あんたの入れたコーヒーで充分」

ぴくりとして手が止まる。

「大佐?」

「ん?」

「何してんの?」

「止めた」

「何が?」

「出掛けるの」

するりとベッドへと潜り込んで、にっこりとほほ笑んだまま、脱力していた

身体をその腕の中へと引き込んで行く。

「君が悪いんだと思う」

「ちょっ・・」

「コーヒーは後で入れてあげる」

「大佐っ・・て」

肩口に顔を埋められて、ぞくりとして肩を竦めると、その場でまた声も無く

笑うから、昨夜の余韻を身体が思い出しそうに揺れた。

そのままきつく抱き締められて、唇も塞がれてしまったから文句の1つも

言えないまま、朝陽の姿をこの瞳はまだ知らない ─





                                            一条