唇に息を重ねる 言葉が解け出す 身体が溶け出す ─ 熱い
ロウ ・ ブレス
Low Breath
《 焔 VS 鋼 》 と、命名されて始まった、大総統公認の戦いも、[ 焔 ] の
勝利に終わり、後片付けも終わった勢いで、外や窓の下では、お祭り騒ぎ
が続いている。
エドワードは、医務局のベッドの上で半身を起こし、機械鎧の指で少し焼け
焦げた前髪の先いじっていた。
売り言葉に買い言葉で、よもやこんな状況になるとは思わずに。
「ちぇ やりすぎだっつーの」
声に出すと余計頬や顎に付いた傷が痛み、眉がつい寄る。
「 [ 兵は詭道なり ] なんてさ」
その原因を作った勝利者はベッドの端に座り、エドワードの指に自分の指を
絡ませて無言なまま。
「聞いてんの?」
イライラして強く言ったが、顔も上げずにロイは、ただ頭を動かして肯定した。
「ムカツクーっ!!」
だけどロイの指は優しく手を撫でるばかりで。
「すまないな。そんな怪我をさせるつもりはなかったのだが」
「え?」
いつもならここで、はぐらかされたり、からかわれたり、笑われたり ─
それのどれでもなくて。
「大佐が気持ち悪い」
思わず口に出して、顔を覗き込んだ。
「 ・ ・ こんなのすぐ治るさ。なんで謝るんだよ。変だ?」
「そうかな」
「うん」
エドワードは、そっとロイに身を寄せた。直ぐに大きな手が背中を抱く。
「それにしてもすっかり大事にしてしまったな」
「あの騒ぎ?の事か」
エドワードは、時々歓声が上がりそれが、波が引くように静まるその繰り返しに
耳をそばだてて聴く仕草をした。
「ただ、君に逢いたかっただけだったんだが」
胸から顔を上げたエドワードは、ロイの前髪を引っ張り、顔を近くに聞いた。
「あんたが元凶?わざと仕組んだとか?」
「ヒューズが、君が中央に来ていると ・ ・ な。君ときたら糸の切れた
カイトの様だから。どこをふらふらとしているのか、連絡も無いしね」
薄情で ─ 最後の一言は耳元でキスになった。
「それにしては手加減一切無しだったな。ホントにオレに逢いたかったのか?」
「本当だよ。信じないか?」
「そうじゃないけど ・ ・ 」
「けど? なに?」
「 ・ ・ ・ ・ 誰か・・来るかもしれないから離せ」
今の自分の感情と鼓動を知られたくなくて、エドワードは、ドアを気にする
ふりで身を振った。
「却下だな」
「大佐」
「 [ ロイ ] だよエドワード」 ─ 囁く唇 ─ 囁く瞳
「それとも君は、私なんかに逢いたいと思いもしなかった?」
瞬かない強い光 ─ 心を見抜かれてしまいそうで、エドワードはその目を、
両手で隠した。
その下で、ロイがつくため息は熱い ─
「あんたに逢いたくない」
逢うと心の中が、嵐が起こったみたいに乱れる・・触れると、もっと荒れる。
「 ── そういう事・・もう訊くな」
嘘を言っているつもりは無い、だけど嘘かもしれない。
だから ─ 喉が痛くて泣きそう。
「何回でも訊くよ、私は」
目を隠したまま唇 ─ 重なる
その場所から一つになりたくなる
「それとも ・ ・ 逃げたい?私から」
「バカヤロウ」
抱きついて呟く
軍服の背中は堅い ─ いつもそれが邪魔
頬や指にある裂傷にそっと押し付けられる唇 ─ 痛い ─
胸の中が火がついた棒で混ぜられている ─ 熔ける、内側から。
「オレだって ・ ・ 」
言葉になるはずだった想いはため息に変わった。
─ 逢いたかったんだ ─
何もかも見通していたようにゆっくりと一度頷いてくれた人
また胸が灼けだす
─ 好きだよ ─
唇から熱が流れ出す ─
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