Vol. 6      

 『親父』鑑賞レポート
 2007/8/259/7 渋谷QAXシネマにて


2007年、夏、渋谷GAXシネマで、『親父』公開。
初日8月25日、最終日9月7日と親父鑑賞。
初日、25日の舞台挨拶では、
ゲストの話から、千葉ちゃんの熱い演出の様子がちらり、
9月7日二度目の鑑賞では、
じっくりと久々にスクリーンで見る千葉ちゃん演じる”親父”の
その表情を堪能し、テーマソング”ありがとう”を聞き、
後ろ髪を引かれながら、ラスト上映を見終わりました。




   出演:千葉真一(JJ.Sonny Chiba)

   共演:田中好子 斉藤慶太 北川弘美 榊英雄  
      筒井康隆 松重豊 亀石征一郎 堀田眞三 他

   監督:千葉真一/井出良英(共同監督)
   
   原作:もりやまつる「親父」(小学館刊)

   脚本:亀石太夏匡/井出良英

   製作プロダクション:近代映画協会

   製作:チェイスフィルム
 
   配給:チェイスフィルム エンタテインメント

   108分 

   8月25日〜9月7日 渋谷QA−Xシネマにてレイト公開

                            
                
 《 あらすじ 》


 ボクシングジムに通う伸吾(斉藤慶太)は、素質はありそうだがいまひとつ真面目に取り組む気配が無く、悪い仲間に利用され金に困り引ったくりをして、内職の疲れで横になる事が多い母・敏子(田中好子)の目の前で警察に連れて行かれる。敏子はそんな伸吾を見つめるだけだった。

 盆入り。伸吾が警察から戻り、敏子は息子と、飾られた祭壇の夫・竜道(JJ.Sonny Chiba)の遺影に手を合わせる。姉の洋子(北川弘美)も、久しぶりに帰り3人揃ってのお盆に、微笑む敏子。だが、突然、洋子の夫・津川(榊英雄)が乗り込んできた。やくざの夫の暴力に耐えかね実家に戻ってきた洋子を、必死に守ろうとする敏子だが、かなう訳も無く、飛びかかって行った伸吾も全く歯が立たない。

 「止めて〜!」敏子が叫んだ。稲妻が光り、ひときわ大きく雷鳴がとどろいた。玄関に、白久人影が浮かび上がると、黙って家にあがり、津川を跳ね飛ばし家の外に放り出した。電流が全身を駆け巡ったかのように、その場に立ち尽くし、じっと男を見つめる敏子。目の前に現れたのは、17年前の死んだ竜道だった。「親父?何で今頃帰ってくるんだ!」親父がやってきたのを受け入れられない伸吾。洋子も、戸惑うばかり。

 敏子は、17年の空白が無かったかのように、酒を用意し食事の支度をする。洋子は、嬉しそうに夫の世話をする母の姿に、夫婦の姿を改めて思う。鉄鋼場で働き出した竜道の下には、昔の従業員達も戻ってきた。ひっそり暗く沈んでいた家の中に、活気が戻ってきた。

 悪仲間たちに呼び出された伸吾の前に現れた竜道は、身体を張って、伸吾を守り、怪我をものともせず戦う。目の前の親父の姿に、伸吾は今までの寂しかった思いをぶちまける。そんな息子をしっかり抱きしめる竜道。

 どこからとも無く現れた、屋台のおでん屋。息子とすわり、酒を飲む、竜道。その昔、この屋台で主人と酒を飲みながら、子煩悩で愛妻家だと言われていた竜道。しかし、竜道のおさない日々は、全く違っていた。戦地から足を負傷して戻った飲んだくれの父は、毎日、酒を飲んでは母に暴力をふるい、母が死ぬと、お前のせいだと、息子をなじり殴った。じっと、悔し涙をこらえ歯を食いしばり、父を睨んだ日々。 そして、やっと掴んだ家族の幸せを、今度は地上げ屋が壊した。息子を火の海になった我が家から救い出し敏子に渡した竜道は、地上げ屋の仕業と知り激怒。火をつけたやくざの事務所へ、単身乗り込み、一人残らず倒したものの途中で息絶え、病院で敏子が対面した時には、すでにもう冷たくなっていたのだった。敏子の手には、幼い息子とその姉が残された。

 津川から、雷の夜の復讐だ電話かかってくる。洋子を連れ戻そうと、津川がやくざ仲間と待ち構える建物の中へ、伸吾は親父と一緒に飛び込み、姉を救い出す。無敵の親父に、ぼろぼろになりながらも、結婚したいと何度も向かっていく、津川。その姿に、結婚したいと父親に訴える、洋子。竜道は、堅気になることを条件に、二人を認め、意を決し親分衆のもとへ単身乗り込んだ。

 息子とのジョギング、一家4人揃っての花火・縁日と、久しぶりに家族で笑顔で過ごした盆が明ける前、見つめる敏子の前から、竜道は消えて行った。

 あれから、しばらくして・・・・今、鉄工所を引き継ぎ、昔からの従業員と汗を流して働いているのは、堅気になり洋子と結婚した津川。伸吾は、自分自身の力で、ボクシングの試合に勝った。そして、火事の夜、突然、失った竜道との絆を、再確認し実感した敏子には、明るい幸せそうな笑顔が戻っていた。


                     
   《見どころ》

 井出良英監督と、千葉ちゃんとの両監督の作品。見ていると、温度の違いに監督の撮った場所が微妙に分かる気がします。井出監督の舞台挨拶では、撮影が、雨にたたられ、苦戦したそう。最後は諦めて雨のシーンにしたとか。傘を差したチラシの写真は、とてもほほえましく仕上がっていましたが、花火のシーンも雨では難しい!CG効果と荒々しいアクションシーンのバランスにも気を配っている気がしましたが、やはり東映バイオレンスの、匂いぷんぷんのシーンでは、斉藤慶太さんノファンなど若い女性にはきつかったようで、「イヤ〜!」「キャ〜〜!!」と女性の叫び声も聞こえてきました!幼い子ども達と過ごした日々のシーンが、雨で苦戦したのでは?費用と時間がもう少しあったらと、思うシーンのいくつかありましたが、完成にこぎつけたこと、そして、こうして見られた感激に酔わせてもらいました。フィルムではないのが残念です。!

                       


”伸吾”演じる、斉藤慶太さんは、父親という心の支えを失い悩む青年の姿を熱演。アクションシーンはあまり体験が無く頑張っていたと、舞台挨拶でも話していたが、荒っぽいシーンを、千葉ちゃんと一緒に、頑張っていました。父に抱きしめられて涙するシーンは、胸が熱くなりました。ボクシングシーンも、奮闘振りが伝わってきました。短いシーンだっただけに、もう少し長く見せてもらえたら・・・と、ファンはきっと思ったのでは?  

                        
 
 姉役の北川弘美さんは、チャーミング!荒々しい作品のなかに、花を添えていました。やくざの夫とのシーンでは、本当に怖くなったとか?!荒っぽく激しいシーンを熱演。母親の隣で、夫が現れ生き生きとしていく妻、浴衣を揃え、盆の支度をし、夕食の準備をする一家の暮らしを仕切ってゆく母親の姿を、女性として間近で見つめ再確認してゆく大切な役を好演していました。

 その夫役の榊英雄さんは、ラストのひょうきんで優しい表情を前半封印し、DV夫役を熱演。千葉ちゃんに投げ飛ばされつつも、向かってゆくシーンに拍手。(笑)どうにも好きになった、チンピラやくざの、どうしようもない男を、熱演!ラストの、工場で働く姿に、思わず微笑んでしまいました。
 
 そして、共演人も華やか。おでん屋の親父で幽霊仲間?!(笑)の亀石征一郎さんは、この作品のファンタジー的要素を引き受けて、不思議な屋台の親父を、好演。千葉ちゃんと二人語り合うシーンでは、長年の二人の歴史が伝わってくる感じがしました。筒井康隆さんの大親分の貫禄、優しそうで怖い感じが、ピッタリ!流石とニンマリ。個人的に注目していた、堀田眞三さんの登場シーンは、ニヤリ。長いお付き合いを一人振り返っていました。松重豊さんの悪役ぶりも楽しめました。殴りこまれたときのあわてぶりには、クスクス笑ってしまいました。

 この作品の中で、重要な、そしてなくてはならないのが妻役の、田中好子さんの存在。演技には定評がある、スーちゃん。(思わず愛着をこめて、呼ばせていただきます!笑)その笑顔の明るさ、さりげない微笑み、戻ってきた夫の好きな酒を買うシーンの嬉しそうな笑顔が、忘れられません!思いも寄らない指輪のプレゼントに驚きながら、嬉しそうに受け取る姿も、現代の女性にあっては、珍しいかもしれませんが、それをさりげなく見せていく演技力に拍手。千葉ちゃんにはもったいない?!若く素敵な奥様です。現れた瞬間の表情、そして、ポツリと発する、意味深なセリフ、去ってゆく夫を見送る表情、それら、彼女の演技で、この摩訶不思議な夫との数日間の日々の出来事の物語に観客を引き込んでいけるかどうかが決まる、重要な役どころを、見事に演じきっていました。(拍手!!)「どっかで見てるんでしょ?!」と、語りかける最後のせりふを聞きながら、涙がポロリ。母親でありながらも、常に、千葉ちゃん演じるだんな様を慕い続ける、素敵な奥様。まさに、男性にとって理想の役?!(笑)

                      
 
 そして、千葉ちゃん!!この作品から出演者としての名前は、JJ.Sony Chiba。千葉真一監督シーンはやはりアクションが中心だったと想像。

 あの世から帰ってきた親父は、以前にもまして、口数が少ない。つまりセリフが少ない!(笑)でもその表情が、とにかく説得力があり、迫力が伝わってくる。
 まず登場シーンで、妻と見つめあうシーン。そのパワーがびんびん伝わってきて、言葉はいらないと納得。荒っぽいやくざの男を有無を言わせずつまみ出す迫力は千葉ちゃんならでは!一変、子ども達とのシーンでは、暖かく優しい父親表情に心も温かくなりました
 汗を流し働く姿が、カッコイイ!!真剣な表情は「冒険者カミカゼ」のパラグライダーを作るシーンが蘇えり、やかんで水を飲む姿は「二本暗殺秘録」のカステラ工場のシーンを思い出し、その年月を一人思ってしんみり。(笑)
 そして、千葉ちゃんがこだわったのは、やはり殴りこみのシーン!?息子と、倉庫でのアクションも、見応えありだが、狭い建物の中で、スコップ片手に、ばったばったと敵をなぎ倒してゆく迫力!いろんな小道具も使い戦うアイデア満載!そして、机に飛び乗る身のこなしは、とても○十代には見えない!!迫真の目力、表情、この動きテンポが見られただけで、感激!!もちろんCG無し、カット数も少なめと嬉しいアクションシーンでしたが、東映作品になれていない若い女性は、悲鳴を上げておりました。(苦笑)
 そして、倒れうずくまるシーンは、竜道の思いが伝わってきて、涙。もう一つ、息を呑む迫力のシーンは、足を洗うように頼みに親分衆の中へ乗り込むところ。指をくわえた表情、その緊張感が芝居と思っても、弱い自分は胃の辺りがふわ〜〜ッ(爆)鬼気迫るシーンです。
  
 ホット笑わせてくれるのが、CGで見せる、竜道の驚異のパワーを披露するシーン。人間ではないから可能!?と納得してしまうのですが、ビックリ!笑える愉快な、縁日シーンです。
 
 最後の別れていかななくてはならない、寂しそうに困ったような表情の、千葉ちゃんが切なくジーン。エンディングの”ありがとう”の曲と共に心に沁みて行きました。考えれば、これが現代アクション披露の最後の作品になるのかも?!(噂のリメイク作品?!「七色仮面」の演技がどうなるのか分からないので・・・・笑) 


   DVD発売を心待ちにしています。

 
― by tik 2008/5/31 ― 

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