No.4 「顔のない男」 ’68/ 4/27

「まさか、ジョニーにいかれたわけじゃないだろうな。

― 記憶を取り戻し復讐鬼となった殺し屋に恋した啓子


村岡室長から黒木の下へ、研究開発をめぐる殺人事件捜査依頼が来る。
島と風間がガードと情報収集、啓子は殺し屋をマークする。
殺し屋の意外な過去を知った啓子は、
恋心を抱き、命をかけて殺し屋を説得する。
新たに発覚した新妻の陰謀を、風間は阻止できるのか?

危機一発、黒木の登場で事件は解決するが、傷心の啓子。
笑顔を取り戻させたのは、変わらぬメンバーの笑顔だった。

スタッフ プロデューサー 近藤照男 坪井久智
監 督 鷹森立一 脚 本 池田雄一
撮 影 西川庄衛 原 案 海渡英祐
録 音 岩田広一 照 明 酒井信雄
美 術 北郷久典 編 集 大橋四郎
記 録 古村史子 助監督 栗田邦夫
擬 斗 日尾孝司 音 楽 菊池俊輔
進行主任 松野幹朗 現 像 東映化学工業(株)






キャスト 黒木鉄也 津川啓子 谷口ユミ 島 竜彦 風間洋介




 

ゲスト 伊丹十三 真理明美 清川新吾 小塚十紀雄
細川俊夫 田沼留美子 木村修、他
プロフェッショナル キイハンター
≪赤いシグナル≫

プロフェッショナル キイハンター 次の赤いシグナルは・・・
湯浴みする女。狙いは、男か?金か?
謎の大金を儲けた科学者と、アメリカから帰ってきた女。
一度殺され、復習の執念にしがみ付く男。
この科学者の秘密を巡って起こす殺人。
キイハンターへのシグナルは、その真相を突き止めろ。
結末は冷たい海が知っている。
キイハンター、次は、「顔のない男」

 ストーリー 

夜の街を歩く一人男の後姿。電話ボックスに入った男は、大きなマスク、額の大きなガーゼが痛々しい。ホテルへ電話をかけるとウイルソンを呼び出し、『橋爪』と名乗り、殺し屋を送ったと告げる。ウイルソンはホテルの地下駐車場へ急ぐ、車に辿り着いた時、走ってきた車からサイレンサー付きの拳銃が、ウィルソンめがけて火を噴いた。

                      タイトル 【顔のない男】

 
 街灯の下、黒木が村岡室長から調査依頼を受けていた。捜査は完全に暗礁に乗り上げている、事件はプロの殺し屋の手口で、殺されたウイルソンはかつて燃料電池の研究をしていた事、同僚の一人は橋爪徹、もう一人の同僚・矢代修作は、アメリカから間もなく帰国、新車を購入した事などを聞いて、黒木は去る。矢代家に一通の手紙が届いた。中には自家用運転手の紹介状が入っていた。
 黒木の部屋では、キイハンターのメンバーが相も変わらず、黒木は昼寝、風間は洋雑誌を見ながらゴロゴロ、その隣で啓子はカード占い、島はプラモデルに熱中、電話がかって来ても誰も出ようとしない。しぶしぶ電話を取った島。「運転手が欲しい?あんたいったい誰ですかァ〜」と、間違い電話に大きな声を出すと、黒木が島から受話器を取り上げ、運転手養成所と名乗り相手の名前と住所を聞き電話を切った。黒木は何も告げぬまま、島を運転手として送り出す。しぶしぶ矢代家に出かけた島だったが、新車の外車を見てご機嫌。電話は矢代修作の甥・和夫からだった。新車、新築の家の主、アメリカから帰国する伯父・矢代修作を出迎える為に、羽田へ向かう。矢代は、帰国する一ヶ月前にニューヨークで知り合ったと言う、若く美しい科学者の卵、明美を伴って現れた。和夫も島も戸惑いながら車を発車させると、その後を追って、駐車場からもう一台車が走り出す。運転していたのは橋爪だった。後部座席でいちゃつく二人に急ブレーキで冷やかしを入れる島だったが、橋爪の運転する車が突然、追い越してきて拳銃を向けたのに気が付き、とっさに切り抜ける。矢代も狙われたこと知りボディーガードを雇うことにする。島は黒木に電話で狙われた事を報告、ボディーガードの派遣依頼をする。黒木は、殺されたアメリカの自動車会社重役・ウイルソンが、3年前、矢代の研究所で矢代たちと燃料電池の研究をしていた事から、成金科学者となってアメリカから帰国した矢代にも、危険が迫る事を予測し、島を送ったのだった。今度は、風間がボディーガードとして派遣された。矢代の屋敷では、明美が、バスタブに浸かりながら、自分の人生を変えた、二ヶ月前の電車事故を思い出していた。彼女は、救急車の中で偶然聞いた男・橋爪のうわ言で、事件の秘密を知り、アメリカに渡り矢代に近づいたのだった。
 翌朝、婚姻届を書いた矢代と明美は、和夫にニューヨークで式を挙げてきたことを告げるが、和夫は彼女の目的は財産目当てだと言い放つ。弁護士に届けを出すように言って送り出すと、黒木ボディーガード協会から派遣された風間がやってくる。矢代は、人に恨まれるような事は無いと言う。風間が、矢代がアメリカに渡った3年の間に巨万の富を得た事について聞くと、明美が燃料電池の話を始めた。世界中が必死になって、排気ガスを出さずに電気で自動車が走る燃料電池の開発していること、それを和夫も研究していた事、アメリカの自動車会社が高金でその研究を買い取った事などを話す。風間が二月前に殺されたウィルソンのことを話し出すと、明美は話を遮り矢代を部屋へ連れて行く。
 黒木の部屋では、ユミが黒木に頼まれ3年前の記事を見つける。その記事には、矢代研究所職員が自殺し、本人の筆跡による遺書が発見された事、自殺したのは研究員・橋爪徹で、学問上の行き詰まりが原因だと書かれていた。しかし黒木は、ウィルソンが殺される直前、橋爪と名乗る男から電話が掛かってきたと言う情報をつかんでいた。ユミは信じないが、黒木は何か確信が有り気だ。
 和夫が、一人でドライブに出かける。島と風間は、車を見送ると顔を見合わせる。黒木が、啓子を車で待機させていた。和夫がやって来たクラブには、橋爪もいた。啓子はカウンターでバイオレットフィズを頼むと、店内を見回す。橋爪が頼んだシャンパンを店員が開けた直後、和夫が胸を撃たれる。悲鳴でごったがえす店内に啓子は開いたテーブルを発見し橋爪を追う。橋爪はゴーゴークラブに入ると、恋人と酔いしれ踊る若者たちに紛れ、店の奥に座っていた。一緒に飲みたいと言う啓子の申し入れを快く承諾した橋爪は、啓子の為にバイオレットフィズを頼む。一瞬、驚いて、今夜は酔いたいとブランデーを頼む啓子。橋爪は『ジョニー』と名乗り、仕事を忘れる為、仕事の後はいつもここへやってくること、自分の故郷は深く冷たい海だと話す。店を出て別れを告げる橋爪に、啓子は、一緒に居たいとねだるが、銃を向けられ、矢代の雇ったボディーガードの仲間だと見破られ名前を白状した啓子だったが、ピストルから弾丸を抜き取っていた。『ジョニー』の拳銃が火を吹く、弾丸は既に入れ直されて次の標的、啓子を狙う。目を閉じ覚悟する啓子。だが『ジョニー』は引き金を引かずに、依頼人の無い殺しはしないしない、明日、矢代を殺すのが最後の仕事で、邪魔をすると殺すと言う。依頼人の名前を聞き出そうとする啓子に「橋爪徹」と告げると、銃を構え振り向かず帰るように言われ、啓子は引き下がった。
 黒木の部屋では、啓子と黒木が殺し屋のことを話していた。橋爪は生きている、ジョニーを追えば必ず橋爪に辿り着くと言う黒木。一方、啓子は、手を引いてくれと頼んだジョニーの言葉を思い出していた。「まさか、ジョニーにイカレタのか?」と言う黒木。昨夜のジョニーの表情を思いだしながら、ポケットから抜き取った”ホテル古城”と書かれたマッチを見つめる。君が会いに行き橋爪徹と呼べば・・・と言う黒木に、生かして返してくれないかもしれないと啓子は思いつつ、ジョニーに会う決心をする。
 矢代の屋敷で、弁護士が婚姻届を出し正式に夫婦になった事を報告すると、矢代と明美は抱き合い喜ぶ。風間は目のやり場に困って咳払い。そこへ電話がっかって来た。矢代は、和夫殺しの依頼人と名乗る電話の相手に言われるまま、風間と明美を電話から遠ざける。相手が橋爪徹と名乗り殺し屋に依頼したと言うと、矢代は言うだけの金を出す、二億円なら何とかなるから用意する、許してくれと頼む。昼までに用意するように言い電話は切れた。窓から周りを見回す矢代、ベランダから聞いていた風間は急いで屋根づたいに着地。車の掃除をしていた島と顔を見合わせ、笑ってウィンク。橋爪は、机の引き出しの中の拳銃を確認していた。
 ホテルのロビーにやってきた啓子は、ジョニーを呼びだす。付きまとえばあなたも殺すと言った筈だと言うジョニーに、啓子は、あなただったら殺されてもいいと、ドライブに誘う。煙草をくわえるジョニーの横で、楽しげにハンドルを握る啓子だったが、港に着くと車から降り、橋爪徹の話を初めた。顔を引きつらせ怒りの表情で見つめるジョニーこと、橋爪徹は、拷問を受け無理やり遺書を書かされ車で崖から転落させられたこと、漁師の家で気がついた時には記憶を失い、二ヶ月前の列車事故で記憶を取り戻した時には、殺し屋のジョニーとなっていた事を告白する。啓子は、矢代のことは、自分達に任せて欲しいと言うが、俺を甘く見すぎていると橋爪徹は銃を突きつけた。
 12時。矢代がジュラルミンケースを用意し待っていると、電話のベルが鳴り、2時間後に女と来いと言う。風間がドアから立ち聞きしようとすると、明美が追い払う。矢代が引き出しを見ると拳銃が無くなっていた。どうかしたのかと聞く明美を無視して、風間に小切手渡すとクビを言い渡して取引場所へ向かう矢代。島は見送ると黒木の所へ連絡。車で2時間の場所は、3年前の事故があった崖とにらんだ黒木は急行する。
 待ち合わせの場所では、橋爪が崖の下の波飛沫を見つめていた。車の中には気を失った啓子が乗っていた。矢代の車が到着する。怖がる明美に、むざむざ餌食にはならないと橋爪を探す矢代。車の後ろから現れた橋爪が『橋爪徹に雇われた殺し屋』だと拳銃を構えると、明美を見て2ヶ月前の事故であったことを思い出す。明美と矢代に向かって、汚らしい奴が揃ってると迫る橋爪。その様子を車のトランクから覗いて、隠れようとして手を挟む風間は。矢代が渡したジュラルミンケースを開けた瞬間、銃弾が中から発射されのた打ち回る橋爪。拳銃を拾い矢代が狙いを定めた時、風間が後ろから飛びかかった。弾丸を避け崖から崖へ、飛び、転がり、跳ね回る風間。弾丸が切れ崖に追い詰められた矢代は、足を踏み外し落ちて行った。見つめる風間の背に、今度は明美が矢代の銃を突きつける。矢代の財産を国が没収する前に、自分が遺産相続すると、風間を撃とうとした時、黒木の投げたチャーチルコインが明美に命中した。啓子も黒木と、風間に所へやってくるが、立ち上がった橋爪がふらふら崖へ向かって歩いて行くのに気が付く。追いかけ止めようとする啓子に、「来るな!これでいいんだ。お休み。」と言い残し、橋爪は海へ身を投げた。ジョニーの名を呼ぶ啓子。
 黒木の部屋で、揺り椅子に揺られながら物思いにふける啓子。忘れるようにと、黒木が声を掛ける。ジョニーは故郷へ帰ったのだと、自分に言い聞かせる啓子。電話のベルが鳴るが誰も出ようとしない。ユミが入ってきて電話を取ると、「運転手が一人欲しいですって?というユミの言葉に、島は張り切って上着を着て準備を始める。黒木は、隣で俺は知らんよとニヤり。間違いですとユミが電話を切った瞬間、島はガッカリ!黒木が笑い出すと「フン」といじける島を見て、風間とユミも笑い出す。つられて啓子も笑い出し、黒木は皆の笑い顔に、また笑顔。



 Tik局長の感想記 ―

キイハンターの台詞はクールで、オシャレで、カッコイイ!そして愉快?!
局長の感想と、セリフと一緒にまとめてみました。
セリフ・・・・黒木鉄也津川啓子島竜彦谷口ユミ間洋介村岡室長

夜の街を歩く男、殺しの予告電話が日本語字幕入りの英語で始まった、サスペンス仕立ての第四話は、第一話のオープニングを思い出させる。島は車の運転手として潜入、”カー狂”の本領を発揮している。風間は、今回も逆立ちや、屋根や崖でのアクロバティックで素早い動きを、披露。(ラストに駄洒落も、一発!)啓子は、殺し屋とのスリリングで切ない恋に落ちる女スパイをぐっとロマンチックに演じている。黒木は、切ない恋心を知りつつも”非常の掟”にしたがい啓子に捜査を続行させるシビアな面と、笑顔でメンバーを見守る優しいまなざしも見せてくれる、もちろん、今回もお得意のコイン投げでバッチリ決めてくれるユミは、ラストの重苦しかったメンバーのムードを一気に明るくする貴重なムードメーカー!

人影のない夜の街角、公衆電話が一台

伊丹十三演じる殺し屋は、ガーゼとマスクで、顔がわからないが、電話の英会話が流暢。第一回目に引き続き、こちらも字幕が登場。「Hello , Mr. Wilson ? /This is Hashizume./You wouldn't forget me , would you ? Listen Wilson , I send a man for you . He's professional killer and he will be there in anymoment . Go to hell , Wilson !(字幕:忘れたのか、橋爪徹だ。俺の雇った殺し屋がそっちへ着く頃だ。地獄へ行け!ウィルソン。)」ドラムのサントラをバックにいっきに駐車場の射殺シーンへ。そしてタイトルへ。ここまで、スピーディーで短いが、サスペンスのムードがたっぷり味わえる。

夜、人気の無い街灯の下

暗闇の中、村岡と、黒木の会話。カメラがローアングルから映し出すと、なんとも怪しげな雰囲気。「警視庁の捜査は暗礁に乗り上げた。」「プロの殺し屋の手口だ。」「ウィルソンはかつて日本で燃料電池の。」「そのときの同僚が橋爪徹。」「アメリカにいる矢代修作が戻ってくるらしい」「すると、あの橋爪徹が。」「矢代家でベンツを買った。」「ベンツ。」頷く村岡。非常のライセンスがバックにゆったり流れ出し、今度は、街灯の上からキャメラが二人を映し出す、黒木が去り、村岡も去っていった。手紙のアップ、宛名が矢代修作と読める。封を開くと中には、「運転手の御用命お待ちします!」と言う大きな文字で始まる勧誘の手紙が入っていた。二人の会話は早くて用件のみなのは、編集でカットした為?手紙のシーンまでは説明もあって最短時間で進んでいく感じ。街灯しかない夜のシーンは、バックに流れるギターのゆったりした非常のライセンスが効果的。

黒木の部屋、電話が掛かってくる

非常のライセンスの音楽は、ゆっくりと流れ続け・・・黒木が、長いすに寝転がる。島は黒木の椅子の前の藤のテーブルに、トラックのモデルカーを広げている。計3台のトラックのプラモデルカー?がテーブルに。啓子が島のトラックの荷台のトランプを取り、部屋の奥へ。奥のテーブルの長いすには風間が寝転び雑誌を読んでいる。電話のベルに、一瞬振り向く啓子、あれでないの?と風間が指差し啓子を見るがそのまま風間の隣に座る。島がしぶしぶ受話器を取るのを、笑顔で見ている。「はい、もしもし。えっ、なんだって?うんてんしゅがほしい?冗談じゃないよ、あんた一体誰ですか?えっ?」いつの間にか黒木が起き上がって受話器を取り上げ「はい、もしもし、あ、こちら自家用運転手専門に養成しております。」訳がわからず黒木を見る島「品性教養共にもう、はっ、はっ、ちょっとお持ちください。」島に「おい、メモメモ」メモを渡し受話器を持つ島「は、どうもお待たせたしました。は、はい。は、早速伺わせます。は、解かりました。どうも。」黒木、商売人に変身。「黒木さん、何時から口入れ屋なんか始めたんですか?」「これが向こう様の住所だ。矢代さんとおっしゃってな、科学者だ。」「又なんか企んでますね」不安そうな島に、黒木は強引に「文句言わずに言って来い」奥から啓子と風間がニヤニヤ「ぼうや!」「はい」「可愛い子には旅をさす!」「頑張ってね!」二人、ウィンク「バイバ〜イ!」啓子が手を振る。口答えも出来ず、風間と啓子の追い立てられ、ボスに言われるまま出発する、むっつりの島ちゃん。矢代家に行ってみると外車のニューカーが待っていた。カー狂の島ちゃんいっきに復活!ご機嫌!!

島の運転手

羽田空港で、明美に見とれた島は運転しながらベンツの後部座席の矢代と明美のいちゃいちゃする姿に、ブレーキをニ度、ちょっとチョッカイ。ムッとする矢代に、すずしい顔で、「非常のライセンス」を口笛で吹く島ちゃん。やっぱり普通の若者です!いきなり隣から外車が異様に近づいてピストルを向けるシーンも、オープニングと同じく、東映アクション映画でもよく使われるドラムの音が緊迫感を盛り上げている。

矢代の屋敷&黒木の部屋、

黒木が受話器を取る「あっ、もしもし、あっ島か?あっ、どうした、え?うん、うん、」島が矢代の屋敷から電話している「やっぱり事件だったんですね!そうこなくっちゃ。エッ、なんですって、(和夫が来たので焦って話し方を変え)つまり、矢代さんがおっしゃるにはですね、その黒木ボディーガード協会から、腕のたつ人を一人回していただければ、最高の条件で応じると・・・・」「ハハハ、黒木ボディーガード協会ねぇ、俺を本気で口入れ屋にするつもりか?そう、いや、腕の立ちそうな奴が一人・・・」風間が、ワイシャツ脱いでベストだけ着て、奥のテーブルの上で逆立ち腕立て伏せの最中ってこれも洒落?笑!J.C.「レッドブロンクス」を思い出す「フフフ、はい、はい。了解。了解。早速そちらに伺わせますでございます。」「(逆立ちしながら)島の奴やりやがったな。」「フフフ、(風間の顔を下から覗き込んで)可愛い子には旅をさせろ」とテーブルから見事に着地、さすが体操選手!「え〜、俺(って可愛い子)?」自分を指差す。「うん。」啓子ちゃんなんだかとっても楽しそうニコニコ。口笛で返事をする風間。「アメリカ帰りの成金科学者そいつが狙われている。」「裏に何かあるんですか?」「東京で殺されたアメリカンの自動車会社の重役。」風間が黒木の隣へ来て、ベストのボタンをはめながら「ああ、あのウィルソンて言う」「うん。3年前までは、矢代研究所の研究員だった。」「はあ」「ところで、今度は矢代が日本に帰ってきたとたんに狙われた。島を潜入させた狙いがどうやら的を得てきたなぁ。」黒木はニヤリ。「風間君!」啓子が風間のYシャツとネクタイを放り投げ「おっ」とキャッチ!第二段、階作戦開始。
矢代家のバスルームで、湯浴み(予告の言葉から)する明美の回想シーンは、久しぶりにお色気サービスシーンだが、パトカーのサイレン、橋爪の叫び声、実際の電車事故のニュース映像を織り交ぜ、明美と橋爪の事故による偶然の出会いに、現実味を帯びさせている。 

黒木の部屋ーユミが新聞記事調べ中

 黒木の部屋では、黒木が揺り椅子で外国雑誌の読書中。ユミが黒木に頼まれ、3年前の新聞記事を探している。「3年前の記事だなんて探すのに骨が折れるわ。少しは手伝ったらどうかしら?」嫌味っぽく、黒木を見るが黒木は全然気にしていない夫婦の会話みたい?!やけに貫禄あるユミちゃん。「フン。あった!あった、あった、これだわ。」ちょいと目を上げるが、又本を読む黒木「矢代研究所の所員が自殺。遺書の筆跡は本人のものと断定されたが、死体は発見されていない。自殺した橋爪徹は矢代研究所へ勤務する科学者だが、学問上の行き詰まりを苦にして・・・(怒って)聞いてるの?」雑誌から顔をあげて「ウィルソンが殺される直前、橋爪と名乗る男から電話が掛かってきたと、交換手が証言してるんだ。」「まさか〜、橋爪は3年前に死んでるのよ。」全く信じないユミ。でも黒木は確信有り気。黒木がダーツ矢を投げると見事、80点に命中!

殺し屋と啓子。

ゴーゴークラブの啓子と殺し屋ジョニーこと橋爪の会話は、大人のムード満点。店にじめ流れるのは、スパイダースの「バン、バン、バン」。なつかし〜、と言うか子供の頃に聞いたものが、こんな大人っぽく流れているのが新鮮。店を出た二人の、殺し屋とスパイの駆け引き二人たっぷりの会話と表情には惹き付けられる。啓子はジョニーに完敗。場所は銀座か、有楽町?

黒木の部屋の黒木と啓子。

黒木が、新聞を読んでいる。「事件直後バーから姿を消したシャンペンを注文した男と、バイオレットフィズを飲んでいた女の行方を探している。ハハハ、君まで疑われてる。」黒木の後ろから「でも凄い腕だったわ、あの殺し屋」「ウィルソン、和夫、そして今度は矢代を殺そうとしている。依頼人の橋爪徹はその3人と一者に矢代研究所に勤めていた男だ。死んではいなかったんだ。間違いなく生きている。それが3年後の今になって忽然と現れた。」カウンターの椅子に座り「何かの復讐・・・」「3年前の橋爪徹の偽装自殺。その直後に矢代とウィルソンは燃料電池の研究を持ってアメリカに渡り、ウィルソンは自動車会社の高い地位に着き、矢代は巨万の富を得た。津川君(まだ呼び方が啓子ちゃんではない)ジョニーを追うんだ。ジョニーを追えば、必ず橋爪に辿り着く。」啓子は考えている。「どうした?」「ジョニーは私を撃たなかった。私の駆け引きを隅々まで見通していたはずなのに。手を引いてくれって頼むのよ。人懐っこい目つきで。」遠くを見たまま言う啓子。「まさかジョニーにいかれたわけじゃないだろうな。」「あたしの故郷は海。人の心を凍らせる海。」昨夜のジョニーを思い出していた啓子だったが、ポケットから、《ホテル古城》と書いたマッチを取り出す。黒木がカウンターの啓子の所へ来て、「ホテルのマッチじゃないか。」「ええ、ジョニーのポケットに入ってたわ。もしかすると・・・」顔を見合わせる。「津川君」「ジョニーが私を橋爪徹に会わせてくれそうな気がする。」「俺もそんな気がする。君は橋爪徹と会い、面と向かって橋爪徹と呼べば・・・」黒木に背をむけながら「生かして返してくれないかもしれないわ。」「それでも行くか?」覚悟を決め頷いて「行くわ。」グッと大人のムード漂う啓子の、切ない表情がたっぷり見られます。

波が打ち寄せる断崖、
矢代VS風間&新妻明美VS風間、黒木と啓子の登場と橋爪の最後


風間が、いつの間にか矢代の車のトランクから抜け出し崖の上へ、倒れた橋爪の留めを刺そうと銃を構える矢代の後ろから飛びかかった。風間は、駆け回り、飛び跳ね、バク転、前転して、銃弾を避ける。今回、アクションシーンのバックに決まって流れるのは、激しくドラムを打ち鳴らす東映ギャング映画のサントラのよう。弾丸使い切った矢代は崖から足を滑らせ海へ転落した。見下ろす風間の背後に明美がやって来る。「矢代家で生き残ったのは私一人になったわ。財産はそっくり私のもの。」「漁夫の利って言いたいんでしょ。矢代のように悪事を働いた財産は、国家に没収されるんだ。」「でも指をくわえて見ているわけには行かないのよ。死んでもらうわ」風間の背に矢代の拳銃が。風間は一瞬驚くが、手を上げ振り向き、明美の顔を見ながら「可愛い顔して殺しのプロかい?プロなら殺され甲斐も有るけど。」「うふっ、あたしは科学者よ。彼の記憶が戻る現場に立会い、全てを知ったのよ。」二人は、倒れている橋爪を見る。「記憶を取り戻した彼は自分を殺そうとした矢代に復讐心を燃やした。あたしはアメリカに渡り、矢代に近づき妻となった。それから後は、黙っていてもあの男が矢代と甥の和夫を殺してくれる。」得意げな明美に「全くこれだから、とーしろーは怖いって言うのよ。プロの定石に無い事をおやりになる。」「あんたこそ、ボディーガードを雇ったらどうなの。」「今度はそうさせていただきます。」どんな時でも、ユーモアを忘れない風間君。ピストルが風間に狙いをつけた瞬間、明美の手にチャーチルコインが命中!素早く拳銃を拾って構える風間。「ご紹介しましょう、僕のボデーガード。」向こうからやってくる黒木と啓子を見て、ニヤリ。「言い男でしょ。」ボスは、コートと帽子で今回もバッチリ決めて「おい風間、君は一体何時になったら一本立ち出来るんだ。」すかさず、片足立ちになって「立ってますよ!ボス。(笑)」駄洒落はともかく、スラリとした足がカッコいい!ジョニーが断崖へふらふら歩いていくのを見つけて追射掛ける啓子。それを見守る黒木と風間。「ジョニー待って!ジョニー」ここから二人の表情のアップが続く。啓子を見て後ずさりしながら「来るな!」と訴えるように言うジョニー。崖の下の海を見る二人。「バカだわ・・・バカだわ!」後ずさるジョニーに、啓子は思わず口走る。後ずさりながら「これでいいんだ」と、啓子を見るジョニーに、啓子は首を横に振る。「おやすみ」と言い残し、ジョニーは海の底に消えた。「ジョニー!」駆け出しジョニーが消えた海を見つめる啓子。波が激しく打ち寄せては砕けていた。涙がないだけ、よけい悲しい別れのシーン。

黒木の部屋

揺り椅子に座って物思い沈む啓子の肩を叩き、微笑みながら優しく「津川君、いい加減に忘れるんだ。」と言うと、藤のテーブルでプラモデルをいじる島の隣で、黙ってトランプ占い(?)啓子は気を取り直して「そうね、ジョニーは故郷へ帰ってたんですものね。」椅子を揺らし心はまだ晴れない。電話のベルが鳴る。風間は、寝ぼけて(狸寝入り?!)表紙がヌード写真の雑誌を被ったまま手だけ伸ばしてすぐ諦める。島もプラモデルをいじり、黒木はカード、啓子は考え事底へユミが入ってきて、しょうがないわねといった感じで、電話を取る。「もしもし。は?運転手一人が欲しいんですってぇ?」島が《運転手》の言葉に反応して、早速上着を着て身支度を始める。黒木がそれを見る。風間も島を見てニヤリ、黒木にウィンク。啓子も顔を見合わせ、みんなで、張り切って背広やネクタイ直す島を見ているが、黒木は「俺は知らんよ」と知らん顔。「もしもし、何番へおかけ?違います。」「?!」「番号が違います!」「へっ?」ユミが受話器を置くと「はーっ」と、がっくりの島を見て黒木が笑い出す。「フン!」とふくれる島を見て、風間とユミも笑い出し、啓子もつられて笑い出す。笑い声が大きくなり、仲間たちの笑顔を眺めながら、黒木は、又、笑顔になる。なんともほほえましいシーン。
殺し屋、スパイ、記憶喪失、拷問、列車事故、そして3台の外車まで見られる見所盛り沢山の4話。しかし、なんと言っても今回の目玉は、殺し屋ジョニーと啓子の悲しい恋。非常のライセンスの歌詞そのままに、《非常の掟に命をかけて》任務を遂行する啓子。黒木と村岡の怪しげなムードから始まり、おもちゃの車いじりから外車の運転まで島は、カー狂の本領発揮。最後は、早とちりで、坊やの本領も発揮し?!仲間の笑いを誘う。風間は、テーブル上の逆立ち、ベランダから屋根伝いに降りる軽業師のような身のこなし、断崖でバク転やら飛んだり跳ねたりと、身体で魅せる!駄洒落のおまけ有り。(苦笑)ラストはユミの出番、持ち前の明るさで、重苦しかったムードを一変!笑いがなくっちゃキイハンターじゃない!?!軽そうで、でも仲間思いの、優しい笑いに包まれる啓子。これでこそ、我らがキイハンター、チームワークは4話目にして、もうバッチリ!と、確認した黒木の笑顔が印象的。


 Tik局長、ゲスト考察記 ―
伊丹十三 流暢な英語を話し、非情でどこか物寂しい気な、悲しい過去を背負った殺し屋・ジョニーと、復讐に燃える研究員・橋爪の二つの顔を好演!啓子ならずとも惚 れそう。とっても若い!
真理明美 スタイル抜群。ストレートのロングヘアーに、超ミニのAラインのワンピース(今ならジーンズと一緒に着こなす?!)や、お色気たっぷりのバスタブ入浴シーンで美脚を披露している。
清川新吾 アメリカ帰りのハイカラ成金科学者らしく、蝶ネクタイ?!似合ってます。

- by tik. 2004. 5. 14.-

tik局長 鑑賞ノート