MAKING OF KEYHUNTER

       こうして「キイハンター」は作られた

スタッフが語る制作秘話

No.1)
佐藤肇監督、キイハンターを語る 


  第5話  『必殺の瞬間』の思い出

No.2 菅原プロデューサーの話し 

No.1)  佐藤肇監督、キイハンターを語る 
― その1 ―
 佐藤肇監督にとっての、「キイハンター」とは・・・
 このシリーズこそは、私の映画作りの”青春時代”だったし、力いっぱい自分の”やりたいこと”を、誰に気がねすることもなく、自由にぶっつけ、花開かすことの出来た”楽園”だった。(中略)逆にいえば、それらの作品の中に、すべて私の”資質”が手を変え品を変えて現れているはずだ。私の大好きな”運命論”的に言ってみれば、「キイハンター」でやろうとしたことを悔いなく仕上げるために、それまでの作品でいろいろな事を試していたんだと言っても、決して過言ではない。過去の作品の”いしずえ”があったからこそ、「キイハンター」で、どんなに”奇想天外なこと”をやろうとしても、ビクともしなかったのだから・・・・。 
 (中略)
 ちょうど「キイハンター」もタケナワなころ、”劇場映画”をやらないかという話があった。私が東映育ちだからだろうか、珍しく他社から”やくざ映画”をつくってくれという話だ。(中略)ずっと”テレビ映画”がつづいていたので、ちょっと触手がうごいたことも確かだ。ところが、どうしてもヤル気がしない。だったら断わってやろう。
 さっそく、その映画のプロデューサーに会った。それで説明したこと、が「『キイハンター』をやるのが面白くてたまらないので、この話はちょっと・・・・・・」すると、そのプロデューサーは、驚いて私の顔を見つめた。でも、”やりたいこと”を次から次に脚本にして撮っている現状を説明すると、「なるほど、そうでしたか。だったら、いみがわかりました」と、今度は感心したように頷いた。
 そんなとき、近藤照男も心配して「遠慮なく”劇場映画”をやったら」というのだが、わたしは「遠慮なんかしていないよ。『キイハンター』が面白いんだ」と答える。しまいに彼さえも、あきれ顔になって「あんたは、変わってるよ!」という始末だ。
(中略)
ほかのシリーズと比べても、これほど自由に題材が選べて、いつでも”やりたいこと”を追求できるシリーズは、「キイハンター」以外に、二度と再びで会えなかった・・・・。(略)その意味からも、日本テレビ界において、このシリーズは稀有の”異色編”の集合だったと断言できる。


★「私の映画作りの”青春時代”だったし、力いっぱい自分の”やりたいこと”を、誰に 気がねすることもなく、自由にぶっつけ、花開かすことの出来た”楽園”」
★「これほど自由に題材が選べて、いつでも”やりたいこと”を追求できるシリーズは、「キイハンター」以外に、二度と再びで会えなかった」
  制作したスタッフが語る、これらの言葉が、キイハンターがいかに型破りで、いかに多くの魅力を持った作品だったかを、証明してくれている。局長、感激!

― その2 ―
 佐藤肇監督が担当した、「キイハンター」
 
 このシリーズは、5年続き、最後に私が担当した作品を調べて驚いた。合計して四十八本。なんと後二本で、一年の放映本数に迫るのだ。ということは、5年間の「キハンター」のうち、平均して五本に一本は私の作品だったことになる。しかも”監督”ばかりか、積極的に”脚本”にも関与している。大変な仕事である。その点では、よきパートナー・高久進に負うところが多いが、「キイハンター」の末期になると、お互いに溜め息まじりにつぶやいたものだ。 「最初のとき、この本数をやれと言われても、絶対にできないよなあ」たしかに、これほどの千変万化のネタを集めなければならないとしたら、たちどころに、どうやったらよいのかわからず、ウロウロしてしまったに違いない。

「合計して四十八本、後二本で、一年の放映本数。平均して五本に一本は私の作品だった」バラエティーに富んだ、様々カラーの作品たちにも注目!
★「”監督”ばかりか、積極的に”脚本”にも関与・よきパートナー・高久進
 1クール12本程度の作品たちが多くなった今、キイハンターが作られた時代の勢いが伝わて来る。
― その3―
 佐藤肇監督と、近藤プロデューサーと、脚本家高久進
(略)近藤プロデューサーの全てをマカしてくれた”度量の広さ”にも感謝しなければならない。私の場合、彼のテリトリーのなかでも、ほとんど”独立国”を呈していた。電話がくるのは、きまって「こんど、**編をやってくれる?じゃあね」の連絡だけだった。すると、私は高久進を喫茶店に呼び出して、お互いに持っているネタを検討し合って、直ちに脚本をつくりはじめる。”**編”というのは、例えば、丹波哲郎の主演だったら”黒木編”というわけで、つまり、レギュラーのローテーションなのだ。極端な時には、三本さきの脚本の打合せまで、撮影の合間を縫ってやっていた。

「近藤プロデューサーの全てをマカしてくれた”度量の広さにも感謝」ファンとしても、心から感謝!
「”極端な時には、三本さきの脚本の打合せまで、撮影の合間を縫ってやっていた。」次から次に作品が生み出されていった様子がわかる。
佐藤肇回想録、恍惚と不安 「キイハンターT」より、抜粋
SPECIAL THANKS to ”睡蓮75”様

     No.2 菅原プロデューサーの話し  
 ― その1 ―
   菅原プロデューサーの話し
  
 ーTBS番組宣伝部 テレビニュース 新番組紹介より −
 従来の事件もの、ハードボイルドものは、事件や仕掛けが主人公、人間は非人間的でアクションは機械のようで、たとえ人物が誰であっても面白さにかわりはないような作り方のように思えます。この番組では人物の充分な人間的個性を与えることによって、この種の番組のユニークさをねらってみました
 丹波哲郎をキャップに、野際陽子、千葉真一、谷隼人、大川栄子ら、彼らでなければやれない役柄の個性を設定するために、人物設定は七転、八転しました。事件にまきこまれる過程や、事件に対する処し方が、際だったそれぞれの強い個性にふさわしく、血の通った人間としてハードボイルドなアクションが一層生きる、そんな作り方をしたいと思います。


★「人物の充分な人間的個性を与えることによって、この種の番組のユニークさをねらってみました」「彼らでなければやれない役柄の個性を設定するために、人物設定は七転、八転この言葉に、個性豊なメンバー設定に納得し、スタッフの努力の賜が魅力的なキイハンターを作り上げた事を確信しました。
★「際だったそれぞれの強い個性にふさわしく、血の通った人間としてハードボイルドなアクションが一層生きる、そんな作り方」
バラエティーに富んだ作品の数々が、一人一人、一話一話、アクションもストーリーも、丁寧に作られて行った事を確認できる嬉しい言葉です。

SPECIAL THANKS to ”睡蓮75”様