Vol. 2     


  東京国際ファンタスティック映画祭
 
『映画秘宝』10年記念オールナイト
「直撃地獄拳、大逆転」鑑賞レポート
 2005/10/15 新宿歌舞伎町ミラノ座にて


新宿歌舞伎町、ミラノ座の大スクリーンに、
直撃地獄拳が映し出される!?あの東映三角マークが映る!?
その夜、想像すらした事がなかった、夢のような出来事が起きた!!

2005年10月15日、朝10時、オールナイトチケットを購入する為、ミラノ座へ、マイ・サイクルで、向った。まだ、オールナイトの盛況を予感させる様子は無く、全指定席で空いているのは極僅かだが、数席まとまって残っていた10列目、通路側30番を購入する。

 夕方から降り出した雨は、オールナイト開催時間が近づくにつれ益々雨足が強くなる。帰りを考え、レインコートを着て(ワールドカップ決勝戦使用)自転車を漕いで歌舞伎町へ。10時の開場を過ぎミラノ座に到着、チケットを手に入ると、配布されたチラシやPRのDVDで手の中は一杯に。ロビーは観客でワイワイガヤガヤ、熱気もじわじわ伝わってきて、今朝までここに来る事を迷っていた思いは吹っ飛んでしまった。中年から若者、アベック、男性だけでなく女性数人のグループなど、様々な観客がロビーに溢れ、秘宝10周年記念のTシャツの売れ行きもなかなか良さそう。久しぶりに見た、男性トイレの行列、女性トイレは、がらがらで、少々不安な気持ちで劇場内に入ると、広い会場は、ほとんど満席状態だった。女性の姿も多く、一見して「秘宝オールナイト」のファンとはっきりわかるような空気(?!)は感じられない。席は、舞台向って右寄り、思ったより舞台がなかなか良く見える。舞台の前方の照明ライトが、東京国際ファンタスティック映画祭のお祭気分を、感じさせてくれる。開演前、まだ明るい中、スクリーンに映画の予告編やCMが写し出されていた。


 10時半過ぎ、遂に、「秘宝10周年記念オールナイト」が始まった!舞台端から色とりどりの照明が場内を照らし、右手前の扉から、いといせいこう氏と、太田氏が登場、舞台に駆け上がり、これから始まる秘宝オールナイトを紹介し、その前に本日のスポンサー、コナミからの特別映像を紹介する事になる。プレステ3のMGS3の映像が大スクリーンで、(途中で止まって再度上映のハプニングのおまけ付きで)上映された。この手のものは全く体験した事が無い(ゲームって、時間かかりすぎます)が、迫力ある実写のような映像、音響に驚く。こんな映像音響を体感したら、バーチャルから抜け出す為の、専用画像やプログラムを終了時に見るようにしないと、ゲームの興奮状態から、現実の世界へ戻れなくなる人間が出てきそう?!で、怖くなった。(自分はやっぱり、頭が古いのか・・・)

 二人の司会者が消えると、スクリーンには、秘宝のオールナイトの歴史を、まとめた映像が映し出された。三池監督やリュー・チャーフィーのお祝いコメントまで入っていて、観客のテンションが一気に上がった所に、観客の大拍手の中、又も、右前方扉から、『映画秘宝』編集部、町山氏、柳下氏、大矢氏、ギンディ氏が舞台へ登場!場内大拍手!!『映画秘宝』がどうやって生まれたのか、『映画秘宝』誕生(内輪)話(左遷されてきた洋泉社は借金一杯でマンション一部屋しかなく、編集長に「何が好き?」と聞いた時、「ブルースリーが好き」と、ボソッと言ったいった編集長の言葉が始まりだった?!?とか、面接全て落ちて入って来た新入社員だったとか、元倉庫番のアルバイトだったとか)が、ひとしきり。十周年を迎える『映画秘宝』オールナイトの第一回目から参加されている人を聞くと、舞台左手前方、先ほどから異様に盛り上がっている一画から、すばやく手が上がる。やはり、濃〜い秘宝ファンが来ているようだ。

 そしてゲスト、橋本新一氏と杉作J太郎氏登場!会場のテンションはまた上がる。橋元氏は、『直撃地獄拳 大逆転』の脚本で助監を務めた、自ら、石井輝男監督の最後の弟子だと言っている方だそうだが、この作品の脚本を書いたとはとても思えない、一見するとサラリーマンにしか見えまいような出で立ち。プログラムピクチャー時代の二本立て上映のメインではない作品だった事が幸いして、会社も口出しせず自由に作る事ができたのが、この作品を作るのに一番良かったこと、石井輝男監督から軽く頼まれ、脚本を書き、「スパイ大作戦」のイメージで書いたスリリングなシーンが、監督に見事に裏切られる結果になったとか、窓のないビルの撮影には、フィルムでつ
ながりのある富士フィルム本社ビルを使ったとか、志穂美悦子さんに大きなスリットの入ったチャイナドレスを着てもらいたかったとか、スッタフでなくては解からないお話がぽんぽん飛び出す。全編通じてバカなことをやったのは初めてで、ギャグってのは手作りが一番おもしろいんだよと、石井輝男監督に言われたと言う、役者が実際にやった”あの”迫真のシーンの話しには、見てのお楽しみと笑っていた。
 続けて『石井輝男DVDBOX』の予告編が上映され、以前、自由ヶ丘武蔵野館で千葉ちゃんのトークショーで司会として登場した杉作J太郎氏が、石井監督のDVDーBOXのPR映像に、「なんてゴージャスな夜!」と舞台端から身を乗り出し「これは良いですよ〜!これは見ないと〜!」と、合いの手を入れていた。好評ならば第二弾は、直撃地獄拳シリーズ?!という話もあるようで、千葉ちゃんDVDシリーズではないけれど、石井輝男監督DVD−BOX第二弾が、直撃地獄拳シリーズになりますよう、祈るばかり。

 スクリーンのサイズが一段と大きくなりって、遂に上映開始!大画面に心なしか間延びした三角マークが映り、お馴染みの鏑木創氏の音楽が始まると、一気に『地獄拳』の世界へ!先ずは、題名に大拍手!出演者、千葉真一の名前に大拍手!その後も、オープニングの映像と名前に、笑いと拍手が続き、監督の名前が最後に映ると、一段と大きな拍手が。まさに映画祭のノリを味わいしょっぱなから興奮、感激状態!!「直撃地獄拳」の続編的な本作だが、一作目と本作のシーンを繋げたオープニングから、針が触れっぱなしの大回転状態。再び復活した3人組の、お馬鹿パワー炸裂の予感で始まった。
 前作で、マフィア麻薬組織と対決し大金を手に入れるはずが、大金もマリファナも手に入れそこね、今では、それそれの暮らしをしている3人を、元長官が、エミにふたたび召集させる所から話しは始まる。マフィアはやっつけたが、脱走請負代金未回収のまま自衛隊レンジャー部隊に入隊、極秘訓練中の甲賀忍者の末裔、甲賀竜一こと千葉ちゃんに、面会にやって来た、田舎娘に扮した中島葵さん演じるエミが映ると、案の定どっと笑いが起こる。佐藤允さん扮する隼猛と、元長官の会話中、鎧かぶとで動きたした甲賀ににまたまた爆笑。郷英二さん扮する、脱獄しヒモ状態の桜一郎を、甲賀が女から救い出し?!、3人揃って乾杯のシーンで繰り広げられる、悪ガキのイタズラに苦笑、お客さんは大笑い。
 指令によって、尾行開始した3人が、身代金受け渡し場所のビルの屋上に着き、無事さらわれた娘が現れると、身代金の入ったバックの奪い合い開始。安岡力也、日尾孝司らとの格闘シーンは大画面で迫力倍増!千葉ちゃんの空中アクションは、やっぱり大画面が良く似合う。桜の、車もろともダイブのシーンも見ごたえ充分、大爆笑!水団の術で潜る甲賀にも拍手!保険会社長役の丹波哲郎さんと社長秘書役の志穂美悦子さんが登場、久々にスクリーンで見る悦っちゃんの笑顔にうっとり。興奮した甲賀に「まあまあ、そう興奮なさらないで・・・」と落ち着き払った丹波さんの声に、どっと笑いが起きる。鏑木創作の音楽に乗って軽快なテンポで繰り広げられる、見ごたえある役者達(室田日出男、山城新伍の好演も見逃せない!)の熱演怪演珍演に、笑い過ぎて涙が出るほど。金庫襲撃作戦では、3人の”粋”もぴったり!飛行機がトンネルを飛ぶ!?ワルノリの極地大ナンセンスシーンから、「スパイ大作戦」のスマートさなど、足元にも寄せ付けない、天井に張り付いて(しがみ付いて)の大熱演シーンに、観客のテンションも益々上がる。ラストの格闘シーンが始まり、ビルの屋上で甲賀と桜の脱出の格闘シーンでは、大画面一杯に、若き千葉ちゃんが躍動する!空手アクションのテンポの速さは、石井監督の編集技も加わっているようだが、なんとも、心地良いスピード感に酔いっぱなし。フェンス飛び越えながらの180度開脚キックに、何処からか歓声が聞こえて来くると、嬉しくなって思わず一人ニンマリ。敵の頭を360°回し目玉を飛び出させ内蔵をわしづかみにする地獄拳披露シーンには、観客大喜び。そして極めつけは、志穂美悦ちゃん登場シーン。深いスリットが入ったチャイナドレスは却下されても、ノ−スリーブのチャイナ風パンツスーツに可愛く結った髪型が、最高にチャーミング。真打ち登場とばかりに、扮装を引っ剥がして丹波哲郎さんが颯爽と登場、燃え盛る炎をバックにした大立ち回りが、スクリーン一杯に展開される。大笑いの甲賀が捕まり会場がどっと沸き、スピーカーから千葉ちゃんの「網走番外地」の歌声が聞こえてくると、嬉しさの中にも、もうすぐ終わってしまう寂しさが・・・・。最後の最後に、とって置きの『隠し玉』嵐寛こと、嵐寛寿郎氏扮する鬼虎の親分登場。3人の息もピッタリあって、笑い涙の”完”!拍手がどっと起きて、笑いと拍手、歓声の内にあっという間に、夢のような一時、86分間が過ぎてしまった。
 

大画面の迫力、感激を胸に、後ろ髪を引かれながら男性トイレの行列の横を通り、オールナイト恒例の煙草の煙幕が出来たロービーを抜けて、ドシャ降りの雨の中を自転車で家路につく。興奮状態も少々落ち着くと、映画の最中笑い過ぎて傘と一緒にパンフレットを落としていた事が判明。ショックを受けるが、大スクリーンで、大観客と見られた興奮と感激に、ショックは薄れた?!(^_^;)



 最後に、大スクリーンで本作を見て、改めて3人の絶妙な演技に拍手!!もし今この3人組が復活したら・・・考えれば考えるほどもう一度見たくなる親父ドタバタギャグ合戦!?!スマートな2枚目キャラを返上し、愛すべきキャラクター”桜一郎”を演じられた、郷英二さん、そして、エンターティメントに徹して、技とナンセンスギャクをちりばめて、ハチャメチャ元気いっぱいな本作品を作り上げてくれた石井輝男監督が、今はもうこの世にいない事が残念でならない。 

― by tik 2005/11/21 ― 

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