9月

第97回 9月4日

吾郎「私は京都の生まれではないけれども
   京好きの点では、京都人には劣らない
   京都をこよなく愛した文豪
   谷崎潤一郎が記した言葉です
   彼は晩年移り住んだ熱海から
   京都への思い
   そして彼を支えてくれる家族への思いを
   手紙に綴り続けました」

京都を愛した文豪谷崎潤一郎の家族への思い…

吾郎「忘文
   それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれる文
   中国の故事、忘草に由来しています」

手紙 「昭和32年2月20日
      谷崎潤一郎から嫁、渡辺千萬子への手紙」

手紙の朗読
京都に住む息子の嫁渡辺千萬子への手紙

手紙 「昭和32年6月2日
      谷崎潤一郎から孫、渡辺たをりへの手紙」

手紙の朗読
京都に住む孫娘渡辺たをりへの手紙

吾郎「晩年の傑作小説、瘋癲老人日記のモデルにもなった
   渡辺千萬子
   谷崎が記した手紙の文面からは
   彼女を心から信頼する気持ちと
   彼女の娘、たをりへの
   とても深い愛情が感じられます
   そんな谷崎へ宛てて
   千萬子のほうからも
   彼への親愛の情を示す手紙が送られています」

手紙 「昭和33年7月24日
      渡辺千萬子から舅、谷崎潤一郎への手紙」

手紙の朗読
京都から熱海へ渡辺千萬子から義父谷崎潤一郎への手紙」

吾郎「終生描き続けた京都への愛と
   そこで交流を深めた千萬子、たをりへの思い
   彼のけしてとどまることのなかった創作活動の源泉は
   ここにあったのかもしれません」

絵本 「おへんじください。」山脇恭(作)
              小田桐昭(絵)

吾郎「素直な気持ちを手紙に綴ることで
   たいせつな人と気持ちが通じる喜びを感じる
   手紙を送り、手紙を待つ喜び
   あなたも感じてみませんか」


第98回 9月11日

吾郎「道
   それは、おぼろげな中を手探りで
   少しずつ1歩1歩切り開いて進むもの
   そこには戸惑い、不安、後悔
   前進することをためらわせる
   つまずきの石が
   数多く転がっているものです
   険しき道を一人で静かに進んでいく
   ここには、そんな娘を励ます
   父の言葉が綴られています」

娘を励ます父の言葉

吾郎「忘文
   それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれる文
   中国の故事、忘草に由来しています」

手紙 「谷惠介さんから  娘、こだまこずえさんへの忘文」
吾郎「谷惠介さんから、娘、こだまこずえさんへの忘文」
惠介さん56歳、こずえさん26歳

父から娘への手紙…

吾郎「ようこそ
   えー、谷惠介さんからの忘文が届いておりますので
   おかけになってください」
こずえ「はい」

手紙の朗読
父から娘へ励ましの思いを綴った忘文

吾郎「忘文は届きましたか」
こずえ「ありがとうございます
    びっくりしました」
吾郎「そうですか」
こずえ「はい」
吾郎「お父さんになんて言いますか、今度」
こずえ「これからもお話聞いてくださいって」
吾郎「ね、それがたぶん
   お父さん、一番の楽しみだと思いますね
   娘さんにね」
こずえ「それだったらいいんですけど」
吾郎「うん」
こずえ「ありがとうございます」
吾郎「ありがとうございました
   こちら」
こずえ「はい、ありがとうございました」

吾郎「卓球から油絵へ
   そして役者へ
   次々と進む道を変えていく娘に
   戸惑いを隠せない父
   しかし、彼女の一心不乱な姿に心を打たれ
   彼は励ましの思いを手紙に託しました
   大いに楽しんでください
   この言葉に
   娘を守り続けるという惠介さんの
   静かな決意を感じました
   惠介さん、こずえさん
   これからも楽しいお話を続けながら
   ご家族の絆を深めていってください」

絵本 「きんぎょのトトとそらのくも」にしまきかやこ(絵・文)

朗読

吾郎「狭い金魚鉢の中から広大な空へ
   金魚のトトは勇気を出し
   自分の殻を破ることで
   世界の広さを
   そしてすばらしさを体感します
   われわれもより広く、よりすばらしい世界をみつけに
   金魚鉢の中から出てみるのもいいかもしれません
   あなたにもぜひ、ご一読をお勧めいたします」


第99回 9月18日

吾郎「愛するものを守るという務め
   危険を覚悟で新たな道に進みたいという願い
   人には時として、これらの間で板ばさみとなり
   立ち往生してしまう瞬間があります
   そんな時背中を押してくれるのは
   自らが最も大切にしている存在からの
   強い励ましの言葉ではないでしょうか
   ここには、新たな人生を踏み出した父に宛てた
   子供たちからの応援メッセージが綴られています」

夢を追う父を応援する家族の愛…

吾郎「忘文
   それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれる文
   中国の故事、忘草に由来しています」

手紙 「小山田時雨さんから  父 英樹さんへの忘文」
吾郎「小山田時雨さんから、父、英樹さんへの忘文
   受取人の英樹さんは
   昨年これまで勤めていた会社を辞め
   今年、染物を利用したTシャツ作りの会社を立ち上げました」
小山田時雨さん、嵐さん姉弟の写真

子供たちから愛する父への手紙…

吾郎「ようこそ
   えー、お掛けになってください」
英樹「はい」

手紙の朗読
夢を追い続ける父へ子供たちから応援と愛を綴った忘文

吾郎「もう1枚、嵐さんからの忘文」

長男 嵐くんからの忘文
手紙の朗読

吾郎「以上です
   えー、忘文は届きましたか」
英樹「はい」
吾郎「ではお届け料として
   何か感想などいただけますか」
英樹「結局、その、夢をね(はい)
   あの、ボクが貫いたっていうね(はい)
   あの、ことなんですけど(はい)
   夢を貫いている、その姿っていうのが
   子供にどう映ってるのかな(はい)
   また、その、なるほど夢は叶うのかなとかね
   お父さん見て
   そういうふうに思ってもらえるんだったら
   なるほど、貫いて良かったなっていうふうに思いますね」
吾郎「ステキなお子さんに育っていくといいですよね」
英樹「そうですね」
吾郎「男の子と女の子
   また全然違いますけどね」
英樹「うん」
吾郎「男の子と女の子だと
   名前がステキですよね
   時雨さんと嵐さんとね」
英樹「そうですか、ああ、ありがとうございます」
吾郎「うん」

吾郎「少し戸惑いを覚えながらも
   エールを送る時雨ちゃん
   まっすぐな言葉で父を励ます嵐くん
   2人のお父さんを思う気持ちに
   微笑ましくも、胸を打たれる手紙でした
   英樹さん
   子供たちのため、奥さんのため
   そして自分のために
   1歩1歩信じた道を歩き続けてください
   ご家族の幸せを心より祈っております」

絵本 「バスにのって」荒井良二

吾郎「通り過ぎていく人生の中にあって
   ゆっくりとバスを待つ主人公
   焦らず、ゆったりとした時の流れに任せながら
   少しずつ、少しずつ行き先へと進んでいく
   彼の姿勢に癒され、勇気づけられます
   バスにのって
   あなたも手にとってみてはいかがでしょうか」



第100回 9月25日

絵本 「あなたがすき」レイフ・クリスチャンソン(文)
           にもんじ まさあき(訳)
           ディック・ステンベリ(絵)

吾郎「日々の暮らしの中
   ささやかな出来事に愛おしさを感じる気持ちが
   とてもシンプルに描かれた作品だと思います
   最愛の存在に宛てた、あなたがすきという思い
   この手紙にも、そんな愛おしい気持ちが綴られています」

人生を共に歩んだ、最愛の夫への想い

吾郎「忘文
   それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれる文
   中国の故事、忘草に由来しています」

手紙 「佐々恭子さんから  夫 頌さんへの忘文」
吾郎「佐々恭子さんから、夫、頌さんへの忘文」
頌さん76歳、恭子さん67歳

妻から最愛の夫への手紙…

吾郎「えー、恭子さんからの忘文が届いておりますので
   お掛けになってください」
頌「はい」

手紙の朗読
妻から夫へ深い愛と優しさへの感謝の思いを綴った忘文

吾郎「はい
   えー、忘文は届きましたか?」
頌「はい
  うれしいですね」
吾郎「うれしいですか」
頌「女の気持ちを率直に(はい)
  伝えてくれるというのはね(うん)
  家内は非常に控え目な女性だもんですから(はい)
  普段こんなことは口にも出しませんですね(うん)
  ですから、まだ、40年間で
  愛してますなんてことは1度も聞いたことないんですけれども」
吾郎「あ、そうなんですか」
頌「1番、40年間で、私が(はい)
  心を打たれた言葉が(はい)
  肺がんの宣告を受けたときに(はい)
  一緒に戦いましょうって言ってくれたんですね(うーん)
  それは、愛するってことよりも
  もっともっと、私が死と
  背中に死を負ってるときにですね(はい)
  一緒に戦いましょうと言ってくれたことが(うん)
  結婚生活の中で一番、うれしかったことです」
吾郎「うれしかった…」
頌「はい」
吾郎「この手紙も、またその一つのうれしさというか」
頌「はい」
吾郎「喜びのうちに入りますね」
頌「はい
  もう、大事に大事にしていきます
  最初にもらったラブレターの横に並べて
  しまっておきます」
吾郎「あ、そうですか
   ステキですね」
頌「ありがとうございました」
吾郎「ありがとうございました」

吾郎「2人で記念日を祝い
   共に同じ星を見上げる
   そんなふうに、お互いの記憶に残る1日を作ること
   それは病に臥し、乗り越える中で
   一つ一つの思い出の大切さに
   気づいたからではないでしょうか
   恭子さん、頌さん
   これからも2人で、大切な時を刻み続けてください
   そして、ステキなリングが今後
   増えていくことを心より祈っております」

絵本 「だいすきなあなたへ」レイフ・クリスチャンソン(文)
              にもんじ まさあき(訳)
              ルイス・サンディアゴ(絵)

吾郎「プレゼント選びに頭を悩ませる主人公の姿が
   微笑ましいこの絵本
   たくさんのユーモアを散りばめながら
   本当に大切な贈り物が何かを描いた名作だと思います
   だいすきなあなたへ
   あなたにもぜひ、ご一読をお薦めいたします」


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