11月

第5回 11月2日

 朗読 「春は馬車に乗って」横光利一
吾郎「昭和初期の文学潮流のひとつ
   新感覚派を代表する鬼才・横光利一
   二人の視点のズレが、やがて共感に変わるまでの瞬間を
   簡潔なスタイルで、実に巧みに描いていると思います。」

吾郎「忘文
   それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれるという文。
   中国の故事、忘草に由来しています。」

 手紙 「妻 綾子への忘文  夫 保男より」
吾郎「岡山保男さんから妻・綾子さんへの忘文」
岡山さんご夫妻の紹介
岡山保男さん(77歳)、綾子さん(72歳)

夫から初めての手紙…

吾郎「ようこそ。
   保男さんからの忘文が届いておりますので
   お掛けになってお待ちください。」
綾子「はい。」

手紙の朗読

吾郎「忘文は届きましたか?」
綾子「ええ、届きました。」
吾郎「じゃあ配達料として、何か一言いただくことはできますでしょうか。」
綾子「えっと、そうですね、あの、もうその主人の手紙で(はい)
   ええ、いっぱいです、気持ち、感謝…
   むしろこちらが感謝の気持ちです。」
吾郎「そうですか。」
綾子「ええ。今はもう、反対に主人に助けられて(ええ)
   あの、まあなんとか(はい)
   でもこれからは、まあどこまで続くか、わかりませんが(そうですね)
   お互いに助け合って…」
吾郎「長生きして。」
綾子「ええ、そうしたいと思っています。」
吾郎「確かに承りました。」
綾子「ありがとうございました、どうも。」
吾郎「ありがとうございました。」

吾郎「夫婦にとっての忘文。
   一緒に暮らして52年、二人にとってこの歳月のうちには
   たくさんの喜びと、同じ分だけの不安や苦悩がありました。
   そんな月日を振り返り、忘文として書き付けた時
   夫が見た風景をこの日、妻も見ることができたようです。
   あなたも忘文、書いてみませんか?」

 朗読 「現代用語20世紀辞典−1993年・コギャル」



第6回 11月9日

朗読 「東京八景」太宰治

吾郎「昭和16年、苦悩の作家・太宰治が
   その怒涛のような半生を自伝的に綴った小説
   抑えた文体の中に、出口の見えない不安や
   妻と前向きに生きてみようという気持ちなど
   いくつもの思いが、複雑に絡まりあうさまが感じ取れます。
   長い結婚生活の中で起こるさまざまな出来事
   もし、パートナーに手紙を書くとしたら、どんな出来事が
   思い出されますか。」

吾郎「忘文
   それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれるという文。
   中国の故事、忘草に由来しています。」

手紙 「妻 好子への忘文  夫 正存より」
吾郎「室田正存さんから、妻・好子さんへの忘文」
室田さんご夫妻の紹介、61歳のご夫婦

夫から初めての手紙…

吾郎「ようこそ、えー正存さんから忘文が届いておりますので…」
好子「あー、はい。」
吾郎「おかけになって、お待ちください。」
好子「ありがとうございます、はい。」

手紙の朗読

吾郎「はい。忘文は届きましたか?」
好子「はい。届きました。
   あの、ホントに、あの正…、マーちゃんと(はい)
   結婚して(はい)、子どもも孫も無事で(はい)
   ここまでこれたのは、ホントに結婚してよかった。」
吾郎「で、あの、これからも、ね、お幸せに…暮らして。」
好子「ありがとうございました。」
吾郎「では、こちら。」
好子「ありがとうございました。」

吾郎「夫婦にとっての忘文
   戦友という言葉が印象的でした。
   45年間、いくつものハードルを2人で乗り越えてきたという実感が
   そうした言葉を選ばせたのでしょう。
   あなたも書いてみませんか、大切な人への忘文。」

朗読 「冠婚葬祭の表書き」
     賀寿の表書きを読みます



第7回 11月16日

朗読 「痴人の愛」谷崎潤一郎

吾郎「生涯、官能的な美の世界を書き続けた異端の作家・谷崎潤一郎
    大正13年に発表された、この作品
    いささか猟奇的な愛が描かれた、この作品ですが
    冒頭のこの1節には、不思議な魅力を話す少女に
    つい、一目惚れをしてしまう男の微笑ましさが感じられます」

吾郎「忘文
    それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれるという文。
    中国の故事、忘草に由来しています。」

手紙 「妻 チカへの忘文  夫 旨一より」
吾郎「佐伯旨一さんから、妻、チカさんへの忘文」
佐伯さんご夫妻の紹介、74歳と72歳のご夫婦

夫から初めての手紙

吾郎「ようこそ」
チカ「よろしくお願いいたします」
吾郎「お願いします、えー、旨一さんからの忘文が届いておりますので
    ええ、お掛けになってください」
チカ「はい」

手紙の朗読

吾郎「はい。忘文、届きましたか?」
チカ「ありがとうございます、届きました」
吾郎「それでは、こちらのお手紙のお届け料として、何か一言いただけますか」
チカ「ええ、本当に(はい)、苦労あって、今現在、幸せになったこと(はい)、
   本当に喜んでおります(はい)。ありがとうございました」
吾郎「ありがとうございました
    では、こちらはお持ち帰りください」
チカ「ありがとうございます」

吾郎「夫婦にとっての忘文
    勤務先の倒産、事業の不振、火災
    度重なる不運の中、楽しいと夫についていく妻
    この忘文から、そんな奥さんの気持ちが少し、わかったような気がします
    今は、第2の人生を歩む2人、これからもお幸せに
    あなたも書いてみませんか、忘文」

朗読 「ロング・ナイロン・タオル ふつう」
     説明書きを読む



第8回 11月23日

朗読 「夫婦善哉」織田作之助

吾郎「庶民の風俗と機微を簡単なタッチで書き続けたぶとう派の作家
    織田作之助の代表作。しばらく家を空けていただらしない夫
    柳吉が、フラッと妻のもとに帰ってくる場面の、調子よく
    機嫌をとる夫と、あきれながらも、それに付き添う妻の姿が
    生き生きと描かれています。いつの時代にも、気丈な妻なしでは
    生きていけない夫というものがいるものですね。そんな夫が
    妻へ、感謝の意を伝えようとする時に、いったい、どのような
    言葉を選ぶのでしょうか。」

吾郎「忘文
    それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれるという文。
    中国の故事、忘草に由来しています。」

手紙 「妻 松子への忘文  夫 綱隆より」
吾郎「佐々木綱隆さんから、妻、松子さんへの忘文」
佐々木さんご夫婦の紹介、75歳と65歳のご夫婦

夫から初めての手紙

吾郎「ようこそ、おいでくださいました」
松子「お世話になります(?)」
吾郎「えー、綱隆さんからの忘文が届いておりますので
   お掛けになってお待ちください」
松子「はい、失礼します」
吾郎「はい」

手紙の朗読

松子「ちょっと照れますね」
吾郎「えー、綱隆さんからの忘文は届きましたでしょうか?」
松子「ありがとうございます」
吾郎「ありがとうございました」
松子「ありがとうございました」
吾郎「では、こちら」
松子「どうもありがとうございました」
吾郎「はい」

吾郎「普段、口にしたことのない言葉を手紙にしたためようとした
    夫、綱隆さん。テンポのいい文体からこぼれる照れと本音。
    その文面、行間を誰よりも深く読み取った妻、松子さんの
    表情が印象的でした。
    あなたも書いてみませんか、大事な人への忘文」

朗読 「国際交通安全学会の調べによると大阪人の歩く速さは…」



第9回 11月30日

朗読 「家族熱」向田邦子

吾郎「さまざまな家族を題材にとることで、そのあり方を問い直した
   作家、向田邦子の小説。ここでは、嫁ぎ先で13年にわたり
   良き夫婦であろうと奮闘する女性の日常を縦軸に、家族それぞれの
   生き様が描かれています。夫と妻の同意でなされる結婚、しかし
   それは、お互いの伴侶だけではなく、それ以上のものとの
   契約でもあるようです。」

吾郎「忘文
   それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれるという文。
   中国の故事、忘草に由来しています。」

手紙 「妻 朝代への忘文  夫 康之より」
吾郎「今西康之さんから、妻 朝代さんへの忘文」
今西さんご夫婦の紹介、64歳と61歳のご夫婦

夫から初めての手紙…

吾郎「ようこそ、おいでくださいました
   えー、夫、康之さんからの忘文が届いております
   お掛けになってください」
朝代「はい、失礼します」

手紙の朗読

吾郎「はい」
朝代「ありがとうございます」
吾郎「えー、康之さんからの忘文は、ちゃんと心に届きましたでしょうか?」
朝代「はい、充分届きました、ありがとうございます」
吾郎「では、お届け料として、一言いただけますか」
朝代「もう、ステキなプレゼントをいただきまして(はい)
   感激しております」
吾郎「康之さんのご朝食はいかがですか?」
朝代「とてもおいしいです」
吾郎「あ、そうですか
   夕食も作ってくださるということなので…」
朝代「ええ」
吾郎「すべて、任せて」
朝代「ええ、そうですね」
吾郎「趣味に精進して、今後ともお幸せに」
朝代「はい、ありがとうございました」
吾郎「ありがとうございました。それではこちらを」
朝代「はい、ありがとうございました」
吾郎「ありがとうございました」

吾郎「さまざまな障害を乗り越え、円満な家庭を守り通した妻
   そんな妻に、37年分の気持ちを込めて綴った夫の忘文
   そこには、ともに人生を歩んできた妻に対する
   言い尽くせぬほどの感謝の念が、あふれていました
   あなたなら、どんな忘文を送りますか?」

朗読 「オーブンレンジ取扱説明書」
(1つずつ、うなずいています)


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