10月

第1回 10月5日

 朗読1 「或阿呆の一生」芥川龍之介
吾郎「或阿呆の一生
   早熟の天才・芥川龍之介の小説
   昭和2年、彼の死後発表された遺作の一つとして有名な作品です。
   全51章を漂う不安の中にあって、この文章だけは、彼女を選んだ事を
   後悔しないという前向きな気持ちがあふれているのを感じます。」

吾郎「忘文
   それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれるという文。
   中国の故事、忘草に由来しています。」

 手紙 「妻 洋子への忘文  夫 伸行より」
ポストから手紙を取りだし、再び机の前に座ります。
吾郎「竹内伸行さんから妻洋子さんへの忘文」
竹内さんご夫妻の紹介

結婚生活40年…
とりたてて会話のなくなった今
夫から初めての手紙…

土手の上から洋子さんが来て、吾郎の前に。
吾郎「ようこそ。えー、伸行さんから忘文が届いております。
   お掛けになってお待ちください。」

 手紙の朗読

洋子「ありがとうございます。」
吾郎「ありがとうございます。忘文は届きましたか?」
洋子「はい、ありがとうございました。」
吾郎「ありがとうございました。
   では、あの、お届け料として何か一言いただけませんか?」
洋子「はい。
   まず、ビックリしたっていう事と、もう40年で初めて
   主人からのこういうお手紙をいただいたんで…」
吾郎「はい。」
洋子「とっても感激しております。とっても嬉しいです。」
吾郎「あ、そうですか。」
洋子「ありがとうございました。」
吾郎「普段は、このようなことを口にされるような…」
洋子「絶対、したことない人です。」
吾郎「そうですか。じゃあ、帰って、あのー最初に伸行さんに会った時は、
   ちょっと照れくさいでしょうけどどのような一言を。」
洋子「そうですね、ありがとうございましたって言いたいです。」
吾郎「そうですか。」
洋子「はい。」
吾郎「これからもお幸せに。」
洋子「はい。ありがとうございました。」
吾郎「ありがとうございました。承りました。ではこちらを、はい…」(洋子さんに手紙を渡す)
洋子「ありがとうございました。」
(手紙を聞いて洋子さんは涙ぐんでいました)

吾郎「夫婦にとっての忘文
   それは、長い年月をともに過ごしすぎたために
   日常の中に失われたお互いの言葉を手紙の形にして取り戻し
   日頃の感謝の気持ちを感じあう文。
   あなたも、大事な人に忘文を書いてみませんか?」

 朗読2 「携帯電話取扱説明書」
マナーの部分を読み上げていますが、途中笑ったり
読みなおしありです。



第2回 10月12日


 朗読 「芥川龍之介の恋文」
      4月18日鎌倉から。
           塚本文宛
吾郎「数々の名作を世に配した文豪・芥川龍之介が、婚約者・塚本文へ綴った恋文です。
   希望に満ちた2人の将来を描く内容が、温かい気持ちにさせてくれます。
   あなたなら、どのように愛を伝えますか?」

吾郎「忘文
   それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれるという文。
   中国の故事、忘草に由来しています。」

 手紙 「妻 美代子への忘文  夫 哲二より」
吾郎「久保哲二さんから、妻・美代子さんへの忘文」
久保さんご夫妻の紹介

夫から初めての手紙…

吾郎「ようこそ。」
美代子「はい。(聞き取れない)」
吾郎「哲二さんからの忘文が届いておりますので、おかけください。」
美代子「はい。お願いします。」
吾郎「お願いします。」

手紙の朗読

美代子「ありがとうございました。」
吾郎「忘文は届きましたか?」
美代子「はい、驚きましたけど(はい)、確かにいただきました。
   新婚時代に(はい)、海外出張先から4回ぐらい絵ハガキをいただきましたけれども(はい)、
   もらいましたけど、それ以来、初めての手紙で、実は驚いています。」
吾郎「ああ、そうですよね。」
美代子「ええ、もう、なんかそのようなことをするような人じゃないので
   (はい)、正直な気持ち嬉しかったですよね。」
吾郎「ああ、そうですか。じゃあ、お届料として、しっかりと承りました。」
美代子「はい。ありがとうございした。」
吾郎「ありがとうございました。それではこちら…」
美代子「娘たちにも見せて…」
吾郎「あ、そうですね。」
美代子「はい。」
吾郎「ありがとうございました。」
美代子「宝にします。どうもありがとうございました。」

吾郎「夫婦にとっての忘文。
   幾多の苦難を共に乗り越え、喜びを分かち合った2人
   言葉にできなかった、その感謝の気持ちをあなたも書いてみませんか?
   忘文という形にして。」

 朗読「ティッシューボックスの裏」
手元にあったティッシューボックスをひっくり返し読み始め



第3回 10月19日

 朗読1 「思い出す事など」夏目漱石
吾郎「文豪・夏目漱石の作品です。
   明治43年に修善寺で大病を患い、生と死の間をさまよいながら、
   日々の雑感を綴っていた漱石。そにには、初めて彼の容態を知った妻の動揺が
   生々しく刻み込まれています。
   妻にかける苦労、あなたならその感謝の気持ちをどのように表現しますか?」

吾郎「忘文
   それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれるという文。
   中国の故事、忘草に由来しています。」

 手紙 「妻 二栄への忘文  夫 秀明より」
吾郎「滝沢秀明さんから妻二栄さんへの忘文」
滝沢さんご夫妻の紹介

夫から初めての手紙…

吾郎「ようこそ。」
二栄「こんにちは、お世話になります。」
吾郎「こんにちは、えー、秀明さんから忘文が届いております。どうぞお掛けください。」
二栄「失礼いたします。」

手紙の朗読

二栄「ありがとうございました。」
吾郎「ありがとうございます。秀明さんの忘文は届きましたか?」
二栄(おじぎをする)
吾郎「それでは、そのお届け料として、何か一言いただけますか。」
二栄「本当に、常日頃、ただただ生活に負われてて(はい)、こういうことって
   振り返る事って(はい)、なかなかないんですよね。」
吾郎「そうですね。」
二栄「うん。本当に…」
吾郎「特に一緒に暮らしていらっしゃると。」
二栄「そうですそうです。(はい)何やっても当たり前の(はい)、日常なんですけども(はい)
   本当に今日は、こういういい機会、与えてくださって(吾郎ちゃん照れたように、はい)で、
   本当に主人の気持ちが、(はい)ありがとうございました。」
吾郎「ありがとうございました。
   それでは、えー、それを承りましたので。ではこちらを。」
二栄「お世話になりました。」
吾郎「ありがとうございました。」
二栄「ありがとうございました。」

吾郎「夫婦にとっての忘文。
   幸せな2人を襲った突然の試練。
   それは、1人の力では乗り越えられるものではありませんでした。
   言い表す事のできない感謝の気持ち、日頃伝えられないそんな
   あなたの気持ちを忘文に変えてみませんか?」

朗読「綿棒の説明書き」


第4回 10月26日

 朗読 「せきれい」庄野潤三
吾郎「戦後、第3の新人と呼ばれ、プールサイド小景で芥川賞を受賞した庄野潤三が
   平成10年に発表した小説、丘の上で暮らす老夫婦
   淡々と続けられる何気ない日常こそが、この上もなく幸せな光景なんだと
   感じさせられる作品です。何気ない日常こそが、もっとも大切なのかもしれませんね。」

吾郎「忘文
   それを読むと日頃の憂いを忘れさせてくれるという文。
   中国の故事、忘草に由来しています。」

 手紙 「妻 昭子への忘文  夫 豊かより」
吾郎「木村豊さんから、妻・昭子さんへの忘れ文」
木村さんご夫妻の紹介

夫から初めての手紙…

吾郎「ようこそ。」
昭子「よろしくお願いいたしします。」
吾郎「よろしくお願いします。豊さんから忘文が届いておりますので
   おかけになって、お待ちください。」
昭子「はい。」

手紙の朗読

吾郎「忘文、えー届きましたか?」
昭子「はい、いただきました。ありがとうございます。」
吾郎「ありがとうございます。
   では、お届け料として何か一言いただけますか。」
昭子「はい。(言葉につまる)」
吾郎「こんなこと、日頃ね、会話されることではないし
   手紙でしか言えないようなことですものね。」
昭子「なんか、(はい)そんなに思っててくれたと思うと
   今考えてもちょっと、もっと何かつくすことが
   あったんじゃないかと思います。」
吾郎「いやー、でも、ね、とても感謝の気持ちで、だんなさんも
   いっぱいということなので、ね、これからも末永くお幸せに。」
昭子「ありがとうございます。」
吾郎「はい。確かに承りました。では、こちらを、はい。」
昭子「ありがとうございます。」
吾郎「ありがとうございました。」

吾郎「夫婦にとっての忘文
   44年間連れ添った妻を昔も今も、いとおしいと思える夫
   そんな彼が綴った忘文は、妻の憂いを忘れさせる力を
   持っていました。
   あなたも書いてみませんか、忘文」

 朗読 「現代用語20世紀辞典−1939年社会・生活」
     パーマネント禁止という部分を読みます
吾郎「パーマネント、ダメなんだ」



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