楽語びより

                                                   海
                                                   ゲスト 鈴木杏
                                                   高島アナ

第15回 潮風のやさしさに包まれて

朗読1 「椰子の実」島崎藤村
      (「落梅集」春陽堂)
明治5年、長野県生まれ
主な詩集「若菜集」「落梅集」等 小説「破戒」「春」「夜明け前」等

「椰子の実は、その作者・島崎藤村が浜辺で目にした情景を描写したように
読み取れますが、実際は彼の友人であった柳田クニオが、愛知県の伊良湖岬で
見た椰子の実の話にインスピレーションを得て、書き上げた作品です。
様々な苦悩の果てに、日本各地を旅した島崎藤村は、この椰子の実に
自分自身を重ねたのかもしれません。」

吾郎 「浜辺には、いろいろなものが流れ着きます
    それは、いったいどこから流れてくるのでしょうか
    波に押され、波に洗われながら
    はるかな旅の果てにたどりついた、見知らぬ浜辺
    もしかすると、その旅の目的は
    誰かに何かを伝えることなのかもしれません」

朗読2 「瞳を閉じて」荒井由実
      歌・松任谷由実
      朗読・鈴木杏

朗読3 「窓」草野心平
      (「絶景」八雲書林)
明治36年、福岡生まれ
大正10年中国広州に渡り詩作を始める
昭和3年 詩集「第百階級」を刊行
数多くの詩集のほかに童話集「三つの虹」「ばあばらぶう」など

吾郎「寄せては返す、波を見ているだけで
   とてもゆったりした気持ちになれます
   今年も海の季節がやってきました
   あなたは、その波をどんな気持ちで見つめるのでしょうか」

第16回 夏の眩しさ、夏休み

朗読1 「夏の思い出」江間章子 
      (「女声合唱集」音楽之友社)
大正2年、岩手生まれ。
「夏の思い出」は「めだかの学校」などの作曲家として知られる
中田喜直が曲をつけ、昭和24年にNHKラジオ歌謡で放送。
尾瀬の歌として、広く愛唱されるようになる。

吾郎「夏の思い出は、いつも色鮮やかです。
   僕にとっての夏は青。
   小学生の頃に、初めて買ってもらった野球帽の色でした。
   あなたにとっての思い出の夏は何色ですか?」

朗読2 「蝉」吉原幸子
     (「発光」 思潮社)
      朗読・鈴木杏
昭和2年、東京生まれ
主な詩集「幼年連祷」「オンディーヌ」「昼顔」「発光」等

「詩人、吉原幸子は東京大学を卒業後、劇団四季に入団。
その一方で詩を書き始め、文芸誌の編集、新人作家の発掘と人生を芸術に
捧げた人物です。
蝉は土の中で6年、ようやく成虫となって地上に出ますが、わずか10日で
その命を閉じます。作者はそんな蝉の命の儚さに、自らの70年の人生を重ね
この作品を書き上げました。」

朗読3 「夏休み」吉田拓郎
      歌・吉田拓郎

吾郎「大人になればなるほど、夏はあっという間に
   過ぎていく気がします。
   だから人は、この季節をいとおしく思うのでしょう。」

第17回 手を握り、笑顔を忘れない

朗読1 「死んだ男の残したものは」谷川俊太郎
      (「日本の詩集17 谷川俊太郎詩集」河出書房)
昭和6年 東京生まれ
主な詩集「二十億光年の孤独」「日々の地図」など。

「死んだ男の残したものはが書かれたのは、昭和40年。
この年、アメリカ軍が北ベトナムへの爆撃を開始。これを受け東京・御茶ノ水で
ベトナム平和を願う市民の集会が開催。
その集会のテーマソングとして、詩人・谷川俊太郎が作詞、世界的な音楽家で
あった武満徹の作曲によって、この反戦歌が完成したのでした。」

朗読2 「ぺんぎんの子が生まれた」川崎洋
      (「ワンダフルライフ地球の詩」小学館)
      朗読・鈴木杏
昭和5年、東京生まれ
昭和23年頃より詩作を始め、昭和32年より放送台本主とした文筆活動に入る
主な詩集「木の考え方」「ビスケットの空カン」など

朗読3 「戦争を知らない子供たち」北山修
      歌・ジローズ

吾郎「誰もが望む幸せな暮らし
   誰もが望まない不幸せな暮らし
   でも、自分の幸せのために
   誰かを不幸せにしてるとしたら
   それは、本当の幸せとは
   呼べないのかもしれません」

第18回 思いでめぐる2“ふるさと”

朗読1 「母」木山捷平
      (「木山捷平全集 第一巻」講談社)
明治37年、岡山生まれ
主な詩集「耳学問」「大陸の細道」など

「母の作者・木山捷平は明治37年、岡山県笠岡市に生まれました。
中学生の頃から、文学の道を志しますが、父親の猛反対を受け
いったんは、教師の職に就きます。しかし、文学への熱意、あきらめきれずに
22歳の時、父親に無断で上京。遠く離れた都会で、ひとり創作活動を
続ける捷平にとって、ふるさとから優しく応援してくれる母親の存在は
まさにふるさと、そのものだったのかもしれません。」

吾郎「ふるさとの味は、
   ふるさとでしか味わうことができないのは、なぜでしょう
   僕も、母のふるさとに行った時に食べた
   しじみの味噌汁の味は、今でも忘れられません
   あなたのふるさとの味はなんでしょうじゃ」

朗読2 「地方」石垣りん
      (「やさしい言葉」花神社)
      朗読・鈴木杏
大正9年、東京生まれ。
小学校卒業後、昭和50年まで日本興業銀行に勤務しながら詩作を続ける。
主な詩集「表札など」「石垣りん詩集」など

朗読3 「少年時代」井上陽水
      歌・井上陽水

吾郎「大人になればなるほど、夏はあっという間に
   過ぎていく気がします。
   だから人は、この季節をいとおしく思うのでしょう」


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