楽語びより

                                        小学校より
                                                ゲスト 小西真奈美
                                                大坪アナ・高島アナ・筒井アナ

第5回 小さな命に

朗読1 「初節句」大木実
      (「初雪」桜井書店)
東京生まれ
電気学校中退後、工員、出版社員、兵役を経て、大宮市役所に勤務
1992年「柴の木戸」で現代詩人賞を受賞

「作者は、昭和16年、新婚3ヶ月目に病弱であった妻を残し戦地へ。
1年後、無事復員はしたものの、戦況の悪化は暮らしを圧迫
初節句は、そんな中、誕生した我が子、新しい命を綴られた作品です。」

吾郎「明日5月5日は端午の節句
   都会では、悠々と泳ぐ大きなこいのぼりを見ることが少なくなりました
   それでもマンションのベランダで元気に泳ぐこいのぼり
   小さな命 伝えたいことがたくさんあります」

朗読2 「時の子守唄」荒木とよひさ
      歌・イルカ
      朗読・小西真奈美

朗読3 「誕生」新川和江
      (「愛の詩集」集英社)
茨城県生まれ
学生時代、西条八十に詩を送り、返事をもらったことから詩人を志す
学研「中1コース」に連載した「季節の花詩集」で脚光を浴びる。

吾郎「これから生まれてくる小さな命へ
   そして、これから輝き始める小さな命へ
   僕たちが残すべき豊かさとは、
   いったいどんなものなのでしょうか」
第6回 特別な日、母の日

朗読1 「味噌汁や握り飯など」大木実
      (「大木実全詩集」潮流出版社)
東京生まれ
電気学校中退後、工員、出版社員、兵役を経て、大宮市役所に勤務
1992年「柴の木戸」で現代詩人賞を受賞

吾郎「母の日です
   今日はどんな呼び方で、お母さんと話をしてみますか?」

朗読2 「かぜのなかのお母さん」阪田寛夫
      (「サッちゃん」国土社)
      朗読・小西真奈美
大阪府大阪市生まれ
詩、小説、放送脚本、童謡、絵本などを手掛け
1974年には「土の器」で芥川賞受賞

「全編がひらがなで綴られた、かぜのなかのお母さんは、
幼い子がその母に向けた言葉のようにも読み取れますが
実際には、作者が50歳を間近にして、不治の病に侵された母に向け
うたった作品です。」

朗読3 「ありがとう」桑田佳祐
      歌・桑田佳祐

吾郎「母をテーマにした歌や詩には、いつも心を動かされます
   なのに、自分の母親に伝えたい気持ちは
   なかなか文字にはできません
   せめて花を贈ったり、世間話をしてみたり
   今日は母の日を理由に、照れくさい気持ちを伝えられる
   特別な1日なのかもしれません」
第7回 素敵な出会い

朗読1 「あいたくて」工藤直子
      (「あ・い・た・く・て」大日本図書株式会社)
博報堂で女性初のコピーライターとして活躍
4年間の勤務の後、フリーとなる
1983年には「てつがくのライオン」で日本児童文学者協会新人賞受賞

吾郎「あなたは、手の中のことづてを誰かに手渡すことができたでしょうか
   まだなら、そのことづてを手渡す誰かを探しださなければいけませんね」

朗読2 「いい日旅立ち」谷村新司
      歌・山口百恵
      朗読・小西真奈美

朗読3 「挨拶」壷井繁治
      (「壷井繁治全集第一巻」青磁社)
香川県生まれ
大正13年からアナーキスト詩人として活躍
治安維持法違反などで数回に渡り検挙投獄、戦後は詩人会議グループを結成

「挨拶の作者、詩人・壷井繁治は明治31年小豆島の生まれ
早稲田大学中退後、アナーキスト詩人として作品を発表しはじめた彼は
暴漢からの襲撃や治安維持法違反による投獄など、数々の苦難を乗り越え
風刺文学運動を続けた人物でした。」

吾郎「学校や職場で遭遇するちょっとした出会いも
   旅先ですれ違う偶然の出会いも
   挨拶の仕方一つで、運命の出会いに変わるかもしれません
   これから始まる新しい出会いを
   あなたなら、どんな笑顔で迎えるのでしょうか」
第8回 五月晴れ、心情と情景の真ん中で…

朗読1 「旅上」萩原朔太郎
      (「純情小曲集 旅上)
群馬県前橋市の医者の家に生まれる
憂愁と虚無、孤高の独自のスタイルを築き、日本近代詩の創始者といわれる。

吾郎「五月の空は、あまりに青く、時に人を憂鬱にさせます
   例えば、旅に出てみる
   例えば、絵を描いてみる
   五月の空に負けない、五月の心を探してみませんか」

朗読2 「あどけない話」高村光太郎
      (「智恵子抄」)
       朗読・小西真奈美
彫刻家高村光雲の長男として東京に生まれる
「スバル」同人となって詩作を始める
戦後は戦争協力の責任を感じ、岩手県大田村にこもり自炊生活をした

「高村光太郎が生涯の伴侶となる智恵子と結婚したのは大正3年
裕福であった実家を離れ、貧しいながらも幸せな生活を始めた2人ですが
昭和7年、精神を病み始めた智恵子が自らのを絶とうとする事件が起きます。
6年後、愛する妻がこの世を去るまで、そしてこの世を去った後もなお
彼は妻を思う心を文字にしつづけます。
昭和16年、詩集・智恵子抄を発表。その中に収められた1篇
あどけない話が書かれたのは、精神の病が智恵子を襲う、わずか数年前、
昭和3年5月のことでした。」

朗読3 「どんなときも」槙原敬之
      歌・槙原敬之

吾郎「4月は希望にあふれた、新しいスタートの月
   5月はそのスタートが期待どおり進まず不安を感じる月
   5月の空の青さは、その不安を少しでもやわらげてくれるための
   思いやりなのかもしれません」
第9回 恋から愛へ 結ばれる絆

朗読1 「祝婚歌」吉野弘
      (「風が吹くと」サンリオ)
山形県酒田市生まれ
主な詩集「消息」「感傷旅行」「自然渋滞」等

「祝婚歌は、詩人・吉野弘が姪の結婚式に祝辞として贈ったプライベートな
作品でした。作者自身の結婚生活に対する反省と妻への感謝
その感動は口コミで広がり、数年後、詩集に収められることになったのです。」

吾郎「心を合わせた2人が、お互いの人生を合わせる誓いの儀式
   今、結ばれる絆へ、人はどんな思いを託すのでしょうか。」

朗読2 「お引っ越し」広瀬香美
      歌・広瀬香美
      朗読・小西真奈美

朗読3 「結婚」新川和江
      (「愛の詩集」集英社)
茨城県生まれ
学生時代、西条八十に詩を送り、返事をもらったことから詩人を志す
学研「中1コース」に連載した「季節の花詩集」で脚光を浴びる。

吾郎「呼んだような気がする
   呼ばれたような気がする
   1人で解けなかったことを2人で解いていく
   2つの気持ちが1つになる
   結婚はいつも感動的です」
第10回 雨がふるから 雨があがる

朗読1 「いろんなおとのあめ」岸田衿子
      (「へんなかくれんぼ」のら書店)
東京生まれ
主な作品「忘れた秋」「らいおん物語」等
父は劇作家の岸田国士、妹は女優の岸田今日子

「詩人・岸田衿子は、劇作家・岸田国士の娘として昭和4年、東京に生まれました。
画家を目指して、美術大学へ進学しますが、間もなく10年もの療養生活を余儀なくされ
その間に詩の創作を開始。
アルプスの少女ハイジやフランダースの犬など、アニメ主題歌の作詞者としても
知られています。」

吾郎「朝目が覚めると、かすかに感じる雨の気配
   身支度の憂鬱を忘れ、思い切って窓を開ければ
   雨は、意外に優しい音をしています。」

朗読2 「雨」森高千里
      歌・森高千里
      朗読・小西真奈美

朗読3 「虹」まどみちお
      (「まど・みちお少年詩集 いいけしき」理論社)
山口県生まれ
「ぞうさん」など童謡作詞家として知られる
59歳にして初めて詩集を発表する

吾郎「雨は降り、雨は上がり
   そのくり返しの中で、世界を豊かに潤してくれます
   雨上がりの景色が美しく見えるのも
   雨が空を洗い流してくれた結果だとしたら
   彼らには、もっと感謝する必要があるかもしれません」


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