霊感大王様からのリクエストアイスヴァイン：ロートシルト「美について」

	――よもや、お前と美について語らねばならないとはな。
	「美について」、実に結構ではありませぬか！
	題材自体は確かに悪くはないがな……。相手がお前というのが……。
	何か仰りましたかな？アイスヴァイン様
	いや、お前の気のせいであろう。
	ところで、やはり「美」と言うものは、素晴らしいと思いませぬか？
	確かに美しい者の方が見ていて良いとは思うがな、その醜悪さ故に心惹かれる場合もある。
	何を仰るのですか！「美」こそ至上絶対の価値でありますぞ！醜いものなどこの世に存在する価値もありませぬ！！
	だが……お前の美的感覚はよく解らぬからな。一応夢魔われわれ一般と同じ基準を持っているが、その、まぁ何だ、それだけでは収まらぬと言うか……。
	皆様に私の世界を真に理解していただけぬのはまことに遺憾の極みではありますが、私は私の思うままに振る舞うだけですぞ。
	それは個人の自由だからな、お前の方法に口は挟まぬが。しかし、どうも乱痴気騒ぎにしか見えぬような気がするのだが。
	私は虫けらのごとき人間の醜い面など見たくもありませぬ。人間でも、快楽に酔いしれ、思うままに振る舞う様の方がよほど美しいと思っておるのですよ。
	しかし、餌にみすみす良い思いばかりをさせるとは――いや、もう良い、「他人の獲物には手出し無用」が、我々の掟ゆえ。
	そして「より美しくより強い者にこそ従う」、この掟、私はたいそう気に入っているのですよ。そう、私が頭こうべを垂れ、ひれ伏し許しを請うのは、美神に愛でられたものの前のみなのです！！（完全に自分の世界にイッてしまっている）
	（ロートシルトの様子に完全沈黙）
	美神と言えばアイスヴァイン様、女性の夢魔かたでは、やはりかの黒真珠のごときシュバルツカッツェ様が素晴らしかったですな。彼女は正に夢魔の女王に相応しかった。
	――ロートシルト。
	おっと失礼。シュバルツカッツェ様はミュスカデ殿を追って、人間になられたのでしたな。
	お前は、私に喧嘩を売っているのか？
	め、滅相もございませぬ！ですが、アイスヴァイン様はあの方を諦めなさったわけでは無いのでありましょう？あなた様と並んで遜色がないのは、シュヴァルツカッツェ様だけですし、その逆もしかり。
	無論だ。カッツェは我が花嫁、必ずや、我らの側に連れ戻してくれるわ。
	はてさて、そう上手く事が運びますやら。
	んっ？
	何でもございませぬ。では、これから私の虜のところにまいりますゆえ、失礼をば……。