宵闇に連なる屋台の灯りが、祭り気分を盛り上げる。
浴衣の袖を捲り上げて、
「えいっ!」
と掬い上げたタマから、するりと金魚が逃げた。
「あ〜あ。…ったく不器用だな、景虎ぁ」
悔しげな高耶の横で、嬉しそうに笑った千秋の手には、小さな金魚が1匹。
吊り下げた袋の中で泳いでいる。
「ふふ。千秋だって1匹だろ? たいして変わんないよ。」
譲の言葉に、高耶が「そうだ、そうだ」と頷くと、
「そうだよ〜。直江さんなんか7匹もくれたんだよ。ほら。」
美弥が得意げに袋を持ち上げて見せた。
(うわ〜…直江さん、今こっちに来たらヤバイよ〜)
という譲の心の声が届くはずもなく、
「高耶さん、リンゴ飴、買ってきましたよ。
最近はイチゴやぶどうもあるんですねぇ、どれにします?」
何も知らずに、両手いっぱいのリンゴ飴を持って戻った直江は、
みんなが帰った後も、
「8匹とるまで帰らねえ〜!!」
と豪語しながらちっとも掬えない高耶に付き合って、
夜店が終わるまで延々、金魚と向きあう羽目に陥ったのだった。
ま、いいよね? 帰りはふたりっきりなんだし♪
2005年7月23日
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