英語教科担当室(木曜の昼は私しか使わない部屋)に入ってきたとたん、
高耶さんは窓際の椅子にドカッと座ると、窓枠に腕を置いて頬杖をついた。
少しとがった唇と眉間の皺が、機嫌の悪さを物語っている。
「どうしたんです? 今日は何に怒ってるの?」
いつものように珈琲を入れて、私は彼の前に腰掛けた。
目をあげた彼は、まるで拗ねた子供のように、ふくれっつらのまま横を向いた。
それでも私が彼の視界に珈琲カップを寄せてやると、
コクリと一口啜って、ようやくぼそっと呟いた。
「美弥が…イブの夜は友達の家でパーティーだって…。毎年ずっと俺と一緒だったのに…」
まったく。何を言っているのか、この人は…。
イブにあなたと過ごしたい人間を目の前にして、よくもこんな泣き言が言えたものだ。
思わず出そうになる溜息を呑み込んで、私は彼の頭をそっと撫でた。
やがて彼は、気持ち良さそうに私の手に頭を預けて、小さな声で囁いた。
「今年の夜も…来るんだろ? 朝までだけなら、付き合ってやる」
「ええ。また一緒に朝日を見ましょうか」
キリストが生まれたのは、25日の未明だという。
あなたを腕に抱いて、私は今年もそのときを迎えよう。
2006年12月24日
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