『競争』


「高耶さん?」
もう諦めたのだろうか?
さっきまであんなに熱心だったのに…
どうしたのかと訝しんでいると、無言で正面に廻った高耶が、いきなり直江のシャツに手をかけた。
ボタンを全部外しシャツを広げて、はだけた胸に唇を押し付ける。
高耶の柔らかな舌が小さな突起に触れた瞬間、直江の体に電流のような衝撃が走った。

ためらいがちに伸ばされた舌は、そのまま優しく乳首に絡んでくる。
テクニックも何もない、ただそれだけの行為なのに。
「ああ…」
蕩ける。蕩けてしまう。あなたへの思いで…

吐く息が熱い。
もう限界だった。
高耶の髪に、耳に、首筋に、狂ったようにくちづけを落としていく。
唇が鎖骨から胸へと下がった頃には、直江は高耶をベッドに押し倒していた。

「ばかだな。これじゃいつもと変わらない。」
激しい嵐のような直江の愛撫を受け、乱れる息の合間を縫って、高耶が直江の耳に囁いた。
「…驚きましたね。あなたは…まだそんな余裕があるの?」
目尻に溜まった涙の粒も、直江の手の中でドクドクと脈打つものも、高耶の余裕のなさを充分に物語っている。
けれど高耶には、それを無理に抑えてでも、告げたいことがあるようだった。
直江にも、ここでやめる余裕など有りはしない。
このまま一気に抱いてしまいたかった。
だが…直江は上体を起こすと、高耶の瞳をじっと見つめた。

なんという瞳だろう。
濡れた光彩が艶を含んで、いっそう輝きを増している。
見るたびに、世界のどんなものよりも美しいと思う。
どれほど見つめても見飽きない。
そこに映し出される彼の心は、ほんの一端に過ぎないけれど。
それでも、その美しさに匹敵するものを、直江は高耶以外のどこにも見つけられなかった。

すっとその瞳が閉じ、高耶の右手が直江に触れた。
左手で直江の腕に縋り、しっかりと目を瞑って顔を擦りつけるようにしながら、ゆっくりと愛撫を始める。
「ハ…ァッ」
思わず甘い喘ぎを漏らして、直江はギュッと高耶を抱きしめた。
「…あぁ…もう…やめて…」
愛しさで気が変になる。
今はただ、心のままに高耶を抱きたかった。
ひとつになりたい。
高耶が手を離したとたん、直江は思いの全てを込めて高耶の中に融けていった。

始めは直江が困ってるんだと思った。
俺が下手なのに、もう諦めろって言えなくて、それで困ってるんだと…
だけど…わかったんだ。
キスしたら、おまえの顔が変わって…それがすごく嬉しくて…
おまえはこれが欲しかったんだよな?

指先から…唇から…吐息から…
俺におまえの想いが伝わるように、おまえにも俺の想いが伝わっていくなら…
伝えたい。俺の想いを…
言葉だけでも、体だけでも、きっと足りない。それでも…

ひとつになって、感じあって、俺たちは心を伝えあう。
もっと、もっとおまえを感じたいから…

2005年9月22日

ははは。やってしまいました(笑)
あ〜なんて恥ずかしいんだろ〜(><)
でも読んで欲しいんだよね…(^^; ほんとにバカです(滝汗)
見つけてくれてありがと! こそっと笑ってやって下さい〜

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