ガラガラッと派手な音を立て、教室の扉を開け放った男子生徒は、中を見回して「アレ?」と首を傾げた。
「千秋の奴、どこへ行ったんだ…」
放課後の教室に残っているのは、箒を手にした女子が3人、男子が1人。
千秋の姿は、どこにも無い。
訝しげに眉を顰めて、顔を引っ込めようとしたとたん、
「こら仰木!アレ?じゃないわよ。あんた掃除当番でしょう?今日は逃がさないんだからね!」
ぷうっと頬を膨らませた女子が、おさげを揺らして追い縋った。
「何だよ森野、俺は今日の当番じゃねえぞ!」
「んもう、あんた毎回サボってるんだから、今日も明日も当番で良いの!あたしも付き合ったげるから…」
そんなの変だ。ムチャクチャだ。
抵抗する高耶を無理やり引っ張って、森野は嬉しそうに教室へ戻った。
高耶と残っていれば、譲が来たとき一緒に帰れるかも…
そんな期待が生まれたのは、廊下で直江先生と譲の会話を聞いたからだ。
「俺、絶対に高耶を連れて帰ります。」
「譲さん、あなたは…」
それしか聞こえなかったけど、こんなに早くチャンスが来るとは…
ありがとう、千秋くん♪
深志の仰木と恐れられる高耶も、森野にとっては気安く話せる案外イイ奴なのである。
それで譲と帰れるなら、毎日でも当番しようと心に誓う森野だった。
2008年7月5日
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