薄曇りの空に、ぼんやりと星が瞬く。
これじゃ今年も綺麗な天の川は見れないだろうと思いながら、高耶はベランダに出て夜空を見上げた。
生暖かい湿った風が、羽織ったシャツに絡んで、汗ばんだ体を撫でてゆく。
「ここでしたか…」
耳元で柔らかな声を感じると同時に、後ろから廻された優しい腕に抱きしめられて、高耶は小さく笑って名を呼んだ。
「直江」
囁くような声に、胸が震えた。
名前を呼ばれるだけで、もう一度ベッドに押し倒したくなる。
けれど直江は、そんな不埒な想いを抑え、高耶の瞳が見つめる先を追って、霞んだ夜空に目を向けた。
この空に、高耶は何を見るのだろう?
七夕の星は何も語らず、薄い雲の向こうで瞬いていた。
2008年7月7日
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