『Only for you』

 

そうっと枕元にプレゼントを置くと、幸せそうに眠る美弥をみて、高耶は優しく微笑んだ。
中学生になった美弥が、サンタを信じているとは思ってない。
けれど毎年、朝起きてプレゼントを見つけるたびに、『サンタさんからの贈り物』といって
喜んで見せに来る美弥の笑顔は、高耶にとって最高のクリスマスプレゼントになっていた。

(気に入ってくれるといいけどな…)
直接渡すのは照れくさくって出来なくても、こうして贈ると素直に渡せる。
(直江にも、こんな風に贈れたらいいのに…)
部屋に戻ってベッドに寝転ぶと、天井を見上げた。

あいつは何が好きなんだろう?
どんなものが欲しいんだろう?

よく考えてみると、あいつのこと何も知らない。
知ってるのは、俺を呼ぶ声。
心を揺らす瞳。暖かい温もり。

ひとつ思い浮かべたとたん、奔流のように溢れてきた想いに、
高耶は思わず自分の体を抱いた。
自分が自分でなくなる。
会いたくて。声が聴きたくて。腕が欲しくて…。
とまらなくなる。

だから昼間も、あいつの教科室から慌てて飛び出した。
ふたりでいると、ずっとそのまま居たくなる。
なにもかも放り出して、ふたりで…ふたりだけで居たくなる。
そんなのダメだ。あいつも俺も。そんなこと…望んじゃいけない。

コツンと窓に何かが当たった。
「なんだ?」
起き上がって窓をみると、雪のかたまりがパシッとぶつかって崩れた。
「ったく。誰だよ、んなことやってんのは。」
外を覗いたとたん、高耶は驚いて名を叫びそうになった。

傍にあったジャンパーをひっかけると、玄関のドアをそっと開けて、外に飛び出した。
寒さも、さっきまでの思いも、なにもかも頭から消えていた。

「メリークリスマス。高耶さん。」
微笑んで立っているのは、赤い服を着た長身のサンタクロースだった。
「直江。なにやってんだ。そんな格好で…。」
どこで借りてきたのか、手も足もちょっと丈の短い服が笑える。
でも、紛れもなく、高耶に幸せを運んできたサンタクロースに違いなかった。

「あなたを浚いに来たんです。サンタがプレゼントをもらっちゃいけませんか?」
いたずらっぽく笑う瞳の奥に、直江の願いが揺れている。
「サンタってのは、プレゼント持ってくるもんだろ? もらっちゃいけねえの!」
そう言いながら、高耶は車の助手席にさっさと乗りこみ、
「寒いだろ。早く来い。」
運転席のドアを開け放った。

「もらっちゃ…いけませんか…?」
席に座ってドアを閉めた直江が、高耶の瞳をじっと見つめた。
こんな間近にいて、こんな瞳が目の前にあって、
そんなことを言われても、我慢など出来るはずもない。

耐えきれなくて伸ばした手に、高耶の手が重なった。
「そう。だから俺が貰うんだ。」
直江の首に手を廻すと、冷たい唇をそっと吸った。
そのまま強く抱きしめて、もっと深く唇を重ねると、
直江の熱い舌が甘く絡みついた。

もっと求めてくれ。おまえの熱を感じさせてくれ。
今夜だけ。今夜一晩だけ。
おまえだけのものでいたい。
俺の本当の願いを…。今だけは…。

I will stay in this world,only for you.

 

メリークリスマス!!
もう25日になりましたね。
  クリスマスのお話や絵を拝見してるうちに、書きたくなっちゃって・・(笑)
かなり怪しい英語の知識…。果たしてこれで合ってるのか??
広〜いお心で読んで下さい〜(^^;

 

背景の壁紙は、こちらからお借りしました。→  

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