シュ〜っと杖をひとふり。
瞬く間に部屋は塵ひとつない状態に変わった。
「うん、良し。上出来だ!」
腰に手を当てて、高耶は満面の笑みで直江をねぎらった。
「これくらいのこと、毎日でもして差し上げます。だから…」
その時間を、もっと楽しみましょう。
甘く囁いた直江の腕から、高耶はスルリと抜け出すと、
「んなことやってる暇は無い!…っつか、今からそんなことしてたら身がもたねえ。」
後半はボソッと独り言のように呟いて、
「さあ、次は市場へ買出しだ。行くぞ!直江。」
そう高耶に言われると、直江の返事はひとつしかない。
「御意」
直江は小さな溜息をついて、玄関へと向かった。
魔法使いと人間。
本来ならば、どう考えても直江の方が強いはずなのだが…
惚れた弱みとは、このことだろうか。
まあいい。
あなたの笑顔をみるだけで、こんなに満ち足りた気持ちになる。
だから…
夜まで待つぐらいなんともない。
そう考える直江にとって、年末も正月も、今までは何の意味も持たなかった。
あなたがいるから、この世界の全てが違う意味を持つ。
「愛しい世界」という意味を…
2006年12月27日
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