ウィ〜ンウィ〜ンぶるぶるぶる
背中から腰へと移る絶妙な刺激が堪らない。
時折ギュウッと体を締めつけたかと思えば、ふわりと優しく解放する。
その繰り返しに、いつしか体は次の拘束を期待するようになり、やがて全身から緊張が解けてゆく。
戯れに座ったマッサージチェアで、高耶は恍惚として目を閉じた。
「そんなに気持ちいいですか?」
「ああ…」
直江の声に、目を瞑ったままの高耶が、満足そうな吐息で応える。
この時、鄙びた温泉宿のサービスコーナーには、直江と高耶の二人だけしかいなかった。
その心安さが、高耶の油断を招いたのかもしれない。
気付くべきだったのだ。
爽快な朝の目覚めを阻む存在は、高耶の知らないところで、密やかな策謀を巡らせながら、大きくなっていたのである。
部屋に戻ると、もう布団が敷かれていた。
ふたつ並んだ布団は、もちろん適度な距離をとって離れている。
早速フカフカの布団に寝転がろうとした高耶を、直江が後ろから捕まえて膝の上に抱き込んだ。
「直江ッ!何する…」
「何って、マッサージですよ。先程は随分と気持ち良さそうだったじゃないですか。」
しれっと答えて、直江が微笑む。
なんだか怖い…
数分後、高耶は直江の腕の中で霰もない姿にされ、必死に声を抑えながら喘ぎ悶えていた。
「ん…っあ…ああっ…も、やめ…」
直江の指が、浴衣の襟をはだけて脇腹をなぞり、羽交い締めされた脚の付け根に忍び寄る。
くすぐったくて死んじまう。
笑い過ぎて息も絶え絶えになった頃、今度は妙なツボを押されて、へなっと腰の力が抜けた。
そこからは、もう直江の為すがままだった。
「どうです?あんな機械より、ずっと気持ち良いでしょう?」
直江のバカやろ…ンなの…
脳が沸騰して溶けちまう
潤んだ瞳が、強烈な誘惑を囁いて直江を見つめる。
理性も策謀も、その瞬間に全て消し飛んでいた。
翌日、美しく晴れた朝の光も爽やかな風も、高耶に届くことはなかった。
グッタリ疲れきった体を預けて眠る高耶を見つめながら、直江はそっと慈しむように前髪を梳いた。
守りたいと思うのに、どこまでも追い詰めたくなる。
その先にある、俺だけのあなたが欲しくて…
窓の向こうでは、昨夜の海鳴りが嘘のような、穏やかな春の気配が広がっていた。
3月1日