『幸福』

波に揺られながら、おまえを見る。
すいすいと気持ち良さそうに泳ぐ姿が、ふいに波間に消えて
小さな不安が、胸の奥からもやもやと湧き上がった。

どこにいるんだ?
まさか足が攣ったなんてことは…

焦って水を掻いた腕が、温かいものに当たった。

「…っんだよ! 急に消えんじゃねえ!」
思いきり睨みつけた。

ほっとしてる俺を知られたくなくて
見えなくなった間の不安を忘れたくて

睨む俺を抱きしめて、あいつはにっこり微笑んだ。

「心配してくれたんですか?」

「んなわけねえだろ。」
ぷいっと顔を逸らすと、耳に甘い息が触れた。
首筋を吸われて、どくんと鼓動が早くなる。

夏の日差しよりも熱い思いが、波を越えて押し寄せる。
海よりも、空よりも、俺の心を捉えているのはおまえなんだ。

なあ。俺がどんなに幸せか、おまえは知らないだろう?
明日がどうでも
この先に待つのが何であっても

おまえがいる
それだけでいい

生まれてきてよかった
おまえと逢えてよかった

幸福にカタチがあるなら、それはきっとおまえの姿をしてる

「高耶さん、お誕生日おめでとう」

そういって微笑むおまえを、ふざけて波に沈める。
海の中で抱きしめて、唇を重ねた。

いまこの瞬間、全ての幸福は俺の手の中にある。

この世界にどんなに悲しみが溢れていても
どれほどの苦しみを抱えても

おまえの幸せが、俺と共にあることだと知った今、
この生を、俺はもう否定しない。

おまえがいる
だから

俺は戦う
俺たちを否定するものと

俺は信じる
幸福な未来を

俺はおまえと共にあるのだから
最高のしあわせを、俺は手にしているのだから

2005年 7月23日

 

お誕生日にUPしようと思ったけど、勇気がなくなりそうなので先にUPします
優しいお話、書こうと思ったんだけどなあ…あっさり挫折…(^^;
やはり私はその時々の想いしか書けないようです〜(>_<)
さて、私はサイトさま巡りに出かけて癒されてきます!(脱兎)ごめんなさいです!!

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