都会の熱風とは違う、ゆるやかな風が髪を揺らす。
昼下がりの縁側で、高耶が気持ち良さそうに眠っている。
陽に焼けた肩にそっと触れると、
「ン・・・」
小さな吐息をもらして、高耶の唇がほんの少し開いた。
この表情がいけない。
あなたは誘っていないつもりでも…
高耶の上に屈みこんで、直江は静かに唇を重ねた。
心の熱が、唇を通して伝わってゆく。
高まるふたつの鼓動を感じながら、夏の日差しは蜩の声をともなって、
木立の陰で密やかに傾いていった。
「ア…んっ…や…ッ!なおえっ…んん……」
くぐもった声が、時折こらえきれずに小さな悲鳴を上げる。
そのたびに、痺れるような快感が胸を貫いて、
直江は、自分が底無しの欲望に、駆られていくのを感じていた。
「もっと聴かせて…あなたの…」
耳元で甘く囁きながら、直江の指が容赦なく高耶を弄ぶ。
「バ…かやろ…こんな……トコで…ン…は…ぁあ」
通りからは見えない奥まった庭とはいえ、明るい日の射す濡れ縁である。
もし誰か来たらと思うと、恥ずかしさで身が縮む思いだ。
なのに声が出てしまう。
どんどん体が熱くなって止まらない。
意地悪な男の思惑どおりに感じてしまう自分が悔しくて、
高耶は必死に喘ぎを堪えて、直江を睨みつけた。
真正面に捉えた直江の顔は、予想と全く違っていた。
執拗に自分を弄んで楽しんでいるのだ、と思っていたのに、
琥珀を思わせるその目には、驚くほど熱い思いが溢れていた。
余裕たっぷりな態度とは裏腹に、
荒い息遣いも、潤んだ瞳も、
直江が高耶と同じくらい、熱くなっているのを示していた。
「直江…」
呟いた名前は、そのまま唇に吸い取られた。
首に手を廻して、思いきり抱きしめる。
もう止めるものは何も無い。
一気に激しさを増した情熱は、いつのまにか暮れてゆく太陽を
追い越したことにさえ気付かなかった。