ぽつり、ぽつりと雨が落ちる。
天井から落ちる雫は、不規則で躊躇いがちな音から、
やがてテンテンテンとひっきりなしに続く、騒がしい音楽に変わっていた。
雨宿りに入ったはずの空家は、中で傘をさしたくなるありさまで、
なんとか雨だれを避けて座る高耶のすぐ横にも、小さな水溜りができはじめている。
ぴしゃん。と撥ねた雫が、剥き出しの腕にかかった。
首を竦めた瞬間、ふわりと暖かい布が掛けられた。
直江の上着だ。馴染んだエゴイストが香る。
光の射さない暗闇でもわかる。
おまえの匂い。
おまえの気配。
そして、おまえの温もり。
触れなくても感じる。
おまえを。
目を閉じて、静かに息を吸いこんだ。
雨音が互いの呼吸音さえ消して、
会話の無い静寂に、孤独が増していっても。
この温もりは…嘘じゃない。
2005年7月7日