Climbing tour in Italy (イタリア)
 2010/6/22〜7/11
 
梅雨入りして間もなく、20日間お仕事はお休みしてイタリアへ行ってきました。今回の目的地はロックマスターが開催されるクライミングの町アルコと、石灰岩の針峰が乱立する、その独特の地質と風景から世界(自然)遺産に登録されたドロミテです。
連日晴天に恵まれ、サマーバケーションには少し早かったので混雑することもなく、とても快適にクライミング三昧してきました。
 
1.Arco (アルコ) 6/23〜30  

マッソーネの岩場

ナゴの岩場

ラ・ゴラの岩場
 
ミラノとベネチアのほぼ真ん中にあるガルダ湖(イタリア最大の湖)の北に位置する小さな古都。
石畳みの街並みと、街の入り口の岩峰から今でも侵入者を見張っているような城跡が、中世のまま時間が止まっているような雰囲気を漂わせている。
アルコの周辺には100以上の岩場が点在しフリークライミングが非常に盛ん。メインストリートには数軒のクライミングショップがあり、子供専門のショップもある。
クライミングは身近なスポーツで、家族でピクニックがてら“登る”というのはごく普通のようだ。

クライミングを堪能しつつ、オフに城跡まで足を延ばしたり、入り組んだ路地を探検したり、クライミングショップをはしごしたり、ピザやドルチェにかぶりついたり、カフェでよく冷えたビールを飲みながらのんびり過ごしたりと、一石数鳥の贅沢至極な時間を過ごせる。



■気候 到着した日は最高気温27度だったが右肩上がりに上昇して、30度以上の日がほとんどだった。朝晩は過ごしやすいく、日中もカラッとしてはいるが日向はとにかく暑い。7日間のうち1回だけ夜中に激しい雨が降った。

■交通 一番近いベローナ空港に入りレンタカーを借りた。ベローナからは高速道路(Autostrada)A22号線をBRENNERO方面へ、ARCOと表示された出口がある。1時間ほどで到着。
ベローナからバスも出ている。

■宿泊
アパートを借りた。庭も建物も隅々まで手入れが行き届いていて、キッチンやバスルームの設備もバッチリ整っていた。地下駐車場があり、出入り口はボタン式のキーで施錠されていたのでセキュリティの不安もなかった(カナダで車上荒らしにあったので、敷地内に駐車場があるアパートを探しました)。スポーツルームにはボルダー壁もあった。
回りは静かな住宅街だったので、ベランダで夕食を食べながら広場で子供たちが遊んでいるのを眺めたり、日曜の朝には教会から讃美歌が聞こえてきたりした。
管理人のローラさんは丁寧でとても素敵な女性だった。夕方にしか来ないので、緊急時には電話をしなければいけないハードルの高さはあるが、困ったことも起こらず大満足だった。
Residence La Pouta del Cuore http://www.laportadelcuore.it/en/default.asp

街には★★(ベッド&ブレックファスト)〜★★★ホテルやキャンプ場があるので、ニーズに合わせて選べる。

Climbing shop
街の入り口に1軒とメインストリートに点在している。メーカーによっては日本で買うより断然お安い。
13時〜15時30分頃はお昼休み、日曜日は終日お休みなのでご注意を。

情報サイト
アルコ観光インフォメーション  http://www.gardatrentino.it/en/arco/
クライム・ヨーロッパ(アルコ)  http://www.climb-europe.com/italy/arco.htm

トポ

本屋さん、お土産屋さん、小さな雑貨屋さんでも売られており簡単に手に入る。

ARCO Rock

106ヶ所のアルコ周辺のすべてのスポーツルートをカバーしている。
標高、壁の向き、ロケーション、支点の状況、混み具合、快適度、駐車場、クライミングスクール、雨でも登れるか、ファミリー向きか、アクセス、地図を記載。


■グレード
USA France UIAA 
5.4 2〜3
5.5 3〜4
5.6 4〜5a X‐ 
5.7 5a〜5b  X
5.8 5b〜5c X+ 
5.9 5c〜6a Y
5.10a 6a〜6a+ Y+
5.10b 6a+〜6b Z-
5.10c 6b Z
5.10d 6b+ Z+
5.11a 6b+〜6c
5.11b 6c〜6c+ [-
5.11c 6c+〜7a
5.11d 7a〜7a+ [
5.12a 7a+〜7b
5.12b 7b〜7b+ [+
5.12c 7b+〜7c \-
グレードが辛いとは聞いていたが、やっぱりちょっと辛めかなと感じた。

クリックで大きくなります 
 アルコ城跡 古いけどよく手入れされている家々  売店でもトポを売っている 2011CLIMBING WORLD CHAMPIONSHIP 
 ランチはカフェでサンドイッチと
よく冷えた飲み物
 街は自転車の人で溢れていた もちろんワインが美味しい   アパートの心地いいベランダ

Massone (マッソーネ)の岩場 

車幅すれすれの路地をぬける
  アルコ周辺の代表的な岩場。6つのセクションに分かれており、
150以上のルートがある。
そのうちA〜Dエリアは垂壁がほとんど、ルートの長さ12〜25m、
ルート数90と登り応えがある。
朝からガンガン日が当たり、暑いのこの上なかったが、この岩場が気に入り、アルコでの5日半のうち4日間通った。


隣町のマッソーネをぬけ、オリーブ畑に囲まれた山道を登ったところにある。(アルコから4km程)
街をぬける路地は、車が一台やっと通れる程度。
毎朝、対向車が来ないように祈りながら通った。
だいたい同じ時間に通るので、ここで犬の散歩の女性とすれ違い、
もうちょっと先では黒いプードルを連れたお爺さんを追い越した。
気軽に「チャオ」と挨拶を交わしてくれる。

平日は多くても10パーティくらいでとてもすいていた。
朝から夕方まで暑さに耐えてガッツリ登っているのは我々ぐらいで、
午前中だけ、午後だけ、夕方からという人が多い。
暑い時間帯はオリーブの樹の下でピクニックや昼寝をし、日陰になった頃に登りだすファミリーもいた。
5時頃に駐車場に降りて行くと、これからクライミング教室が始まるようで小学生とお母さんたちが集まっていた。

岩場ではイタリア語と同じか多いくらいドイツ語が聞こえてきた。駐車場に止めてある車のナンバープレートを見ると、I(イタリア)とD(ドイツ)が半々くらいで、その他PL(ポーランド)、A(オーストリア)等があった。

ルートは5〜6a(5.7〜5.10a)に人が集中。
「テンションかけちゃったからもう一回!」ということもなく、一回登ったら移動するので、どこかしら空いていて登れる。
この岩場だけでもグレード5のルートが10本ある。また30分も車を走らせれば別の岩場もあるので、ひとつのルートに固執しなくてもいいのだろう。東京近郊の岩場が次々に登攀禁止にになる昨今、うらやましい限り。


岩質 石灰岩。


ボルトとアンカー
よく整備されていた。人気ルートは新しいボルトに打ちかえられていた。
アンカーはチェーンに安環が1枚かかっている。


ルート
SECTOR A
5クラスのルートが揃っていて初心者がトップロープをはって、賑やかに登っていた。日和田山といった雰囲気。
易しいグレードのルートはボルトが連打されていたので、リードの練習ができそうだ。
クライミング初日グレード感をつかむために、あいてるところをザッと登ってみた。

・GIACCA GIACCA 5b
・ALCE VOLANTE 6a このエリアには数少ない小ハング越え。
・BOIACCA 5c
・GUIDITTA 6a
・PEGASUS 6a+

・TAC 5a スラブだけどポケット豊富。


SECTOR B
20〜25mの垂壁で登り応えがある。

・TIVOLI 6a+
・FUR EINE HAND 6a+
・ZRU 6a テクニカルでガンガン登れて面白い。そのまま終わらず最後がシビアなスラブ。
・NINO 6a

・CRISI 7a
・ACTION DIRECT 6c+


SECTOR C
5後半〜6のルートが揃う、セクターAと並ぶ人気エリア。
このエリアを拠点にしたので大半のルートは登った。

・WITHOUT NAME 5a オーバーハングの下で終わる、簡単なコーナークラックルート。
・PRIME IMPRESSION 6a 開拓して最初に登ったルート。垂壁とハングのルート。ホールドがあり面白い。
・TULLIO E L'AMORE 6ab  ドイツ人のお姉さんが終了点前のあまいところで奮闘むなしく敗退。隣のルートをやっていたので敗退ビナを回収してあげたら「ジャポ〜ン★」と喜んでいただけた。
・HUGGADA  6b
OVER BOOKING 6a 最後のラインをどう読むかがポイント
・RAPER 5.b 
EKTOPLASMA 6b フェースがむちゃくちゃ悪い。5.11aつけてあげたい。
ODIO LA POLVERE 6b 
・O.SL’UNICORNO 6a

・STATTENTO 6a ずーとしゃべっていた東欧系らしきおじさん3人組の一人が「落ちるよ…落ちるよ…」と言って、ど〜んとテンションをかけていた。その後ドイツ語のお兄さんが鼻息荒く取り組んでいた。
・IMPETRITE’S 5b

・MARINA’S 5a 


SECTOR D
薄かぶりでハングもある。

・OTTOPROMILLE 6c ガバのハング越えルート。面白い
・IL RITORNO DI ALY 6b+ ちょっと細かいハング越え。
・IL CULTO DELL'OSTRICA BLU 6b 薄かぶりでガバが続く。ジムっぽくて面白い。
・RETTOSCOPEI 6b+
  

オリーブ畑の中の道
 

SECTOR A
 

ACTION DIRECT 6c+
 

IL RITORNO DI ALY 6b+
 
 
Nago (ナゴ)の岩場   

ブドウ畑の一本道
  各グレードが揃っていて初心者から上級者まで楽しめる、 マッソーネと同じくアルコ周辺で人気の岩場。
私たちが行ったのは土曜日だったが、順番待ちもなく快適だった。
前日までは、岩場がすいていたので「チャオ」ぐらいしか話すこともなかったが、「ここ空きますか?」「このルートは面白いよ」など、簡単な会話でも適度に人がいてくれた方が楽しい(贅沢な話ですが)。

山の斜面に6つの岩場がありルート数は130本!
一番下のロウ・セクターは、駐車場からハイキングコースを
10分程歩くと、森の中にぽっかりと広場が広がっている。綺麗に整地されていて、積み木のおもちゃのようなかわいいベンチも置いてある。


ナゴはガルダ湖岸の街でアルコからは8km程。
街の裏に広がるブドウ畑の間の小道を上がっていく。

トポをじっくり読み込んだ(トポの地図はおおまか)甲斐があってオンサイトで到着。
行きも帰りもあまりに順調だったので道順はよく覚えていないが、アルコから240号線でナゴの街に入ってすぐのサークルを回ると右側にRUBINO HOTELがある。その手前を右折、道の細さに不安を覚えるが、T字路にトポに載っているらしきパーキングがあって一安心。
そこを左折。次の難所Strade Monte Baldo(モンテ・バルド通り)へ入る交差点には茶色の標識があった。その先は1km程ブドウ畑の間を走ると、Capitello.S.,Giuseppeさんの記念碑?のようなものがある。そこを左折して、坂を登れば駐車場。
ロウ・セクターに近い駐車場は20台近く止められそうだ。

垂壁で30mのロングルートもある。登るとガルダ湖の眺めが素晴らしく、なんとも雄大で豊かな気持ちになる。あの眺望が人気の一因だろう。


岩質 石灰岩。


ボルトとアンカー
登ったルートに関しては強固だった。
アンカーはチェーンに安環が1枚かかっている。


ルート

LOW SECTOR
白くてつるつるの石灰岩の垂壁、25m程の長いルートもある。
この日も一番乗り、ほどなくしてイタリア人一家が来る。
お父さん、お母さん、小学校高学年くらいのお兄ちゃん、低学年のマルコくん。5クラスのルートをお兄ちゃんがリードで登り、マルコくんがトップロープで続く。お父さんは「マァルコ〜」と呼んでは、Vサインのマルコくんの写真をパチパチ。その後もお兄ちゃんは慣れた雰囲気で
6a+もリード、レベルが高い。しばらくいなかったお母さんはランチ用だろうか、大きなスーパーの袋を下げて帰ってきた。

・WITHOUT NAME 5b 25m アップでこのエリアで一番長いルートを登ってみた。

・CHIEDI A BEPPO 6a 
・VOGUE 6b 


CENTRAL SECTOR
ロウ・セクター以外日当たりが良い。

・ESODO 6b 30m トポにお見逃しなくと書かれている。ずっとカチ、元気なうちに登りたい。30m


SECTOR SPLEEN
5〜6クラスのルートがほとんどで賑わっていた。
太陽にちりちりと焼かれて暑いし、岩は滑り気味。
男性は上半身裸、女性はタンクトップを通り越し水着で登っていた。

・ALVAREZ 6b+ 洞穴の淵を登るかぶったルート

・MEGA DIRETTORE 5c
・GOOD BYE STRANGER 6a
・RAGIOBER FILINI 5b
・GERICO 6a
・NIGHT FLY 5c
・NEVERMORE 6c+ 前半はカンテ、後半が核心。



LA MANDORIA
下山途中に、せっかくなのでお勧めルートを登った。
夕方のガルダ湖が綺麗、最後なのでしっかり見てきた。


・LA MANDORIA 
6a 25m

ESODOは右の白壁を登る。眼下にガルダ湖が広がる。 
 

LOW SECTOR
 

ESODO
 

SECTOR SPLEEN
 
 
La gola(ラ・ゴラ)の岩場    

PEDRO ASSENITE

IL GUARDRAIL
  “すべてが揃っているパラダイス”、テクニカルなスラブ、オーバーハング、簡単なマルチピッチ、快適な大きなホールドがあると紹介されている。
2つのエリアに6つの岩場がある。

アルコからトブリーノ湖を目指して19km、湖畔にたたずむトブリーノ城の反対側の小道を入る。
ブドウ畑に囲まれた、両側に石が積んである並木道(イタリア映画に出てきそうな美しい小道)だ。

トブリーノ湖からの山道をあがると、路肩に数台車が止まっていた。
踏み跡を登っていくとARCADIOLANDと,PEZZENTの岩場があった。
私達が偵察に行ったのは日曜日の夕方6時頃だったが、5〜6前半クラスがあるARCADIOLANDは若いクライマーが20人程、トップロープを張って賑わっていた。

山道をさらに少し上がるとメインエリア。
マッソーネが暑すぎていよいよ登れない日に転戦した。
(コルティナへの移動日だったのであまり登っていないが)


岩質 石灰岩


ルート
IL GIARDINO

・PEDRO ASSENITE 5c
・ALOHOA 6b上部スラブがかなり悪い


IL TORNANTE
6aくらいのルート3〜4本登った。 
 
2.Dolomite (ドロミテ) 7/1〜9  

ドライチンネ(オーロンゾ小屋)  
イタリアとオーストリアの国境にそびえたつ針峰群。「一生かかっても登りきれない」といわれるほどのルートがあり、ショートルート、初級者向けのマルチピッチルートから800mのロングルートもある。
大半のルートはアプローチが駐車場や山小屋から1時間以内で、“アルプス”から連想されるお花が咲く草原を歩くのもハイキング気分も味わえ嬉しい。緑の草原に石灰岩の白い岩肌がとても印象的だ。
ドロミテ東側の観光の中心の街コルティナ・ダンペッツォは、大きな教会があるメインストリート沿いにホテル、レストランやブランドショップが立ち並ぶ高級リゾート地。上品な犬を連れたご夫婦がブティックのウィンドーを眺めたりカフェでくつろいでいた。



■気候 気温30度のアルコ(100m)から標高が上がるにつれ涼しくなり、コルティナ・ダンペッツォ(1200m)では24度となり肌寒くも感じた。しかしここでも日を追って上昇し30度に、日差しが刺さるようだった。ほとんど毎日晴れたが、夕方に雷を伴う激しい雨がザッと降る日があった。

■交通 公共交通機関利用の場合は、ベネチアから直行バス、または列車とバスというのが一般的。レストランでたまたま隣の席になった、ナポリ在住の日本人の方はベネチアから列車で来たと言っていた。車の場合はベローナ空港からベネチア経由で、高速道路と一般道を利用して260km(3時間)程度。
アルコからは高速道路A22でオーストラリア国境方面に向かいBressanoneでおり、一般道49号線〜51線利用で220km(2時間30分)程だった。

■宿泊
街から少し離れたホテルに滞在した。近くにはホテル数軒とレストランが1軒あるだけで街の喧騒はなくのんびりできた。夕食のたびに街まで10分歩かなくてはいけなかったが、街中のホテルよりも駐車しやすくてよかったかもしれない。
ドライチンネに上がった時はオーロンゾ小屋に2泊した。
HOTEL COLUMBIA  http://www.hcolumbia.it/
オーロンゾ小屋 http://www.rifugioauronzo.it/en.html

Climbing shop
ウェア、ギアなど扱っていたがそれほど規模は大きくない。
・K2スポーツ
・QUOTA1224

情報サイト
ドロミテオフィシャルウェブサイト http://www.dolomiti.org/dengl/
コルティナ・ダンペッツォオフィシャルウェブサイト http://www.dolomiti.org/dengl/Cortina/index.html

トポ
コルティナで探したが英語版は手に入りにくくイタリア語とドイツ語版が主流。K2スポーツ、本屋さんとスーパーCOOPERRATIVAの1階本売り場で取り扱っていた。

Dolomites
West and East  
CLASSIC DOLOMITE CLIMBS   TRE CIME 
Classic and modern routes
現地で購入 
Arrampicata sportiva
a Cortina d'Ampezzo
現地で購入  

 

 コルティナの街 ホテルの庭からコルティナ
の街を望む 
 ロープワーク講習中
Cinque Torriにて)
Lago de Antomoから
Tre Cime(Drei Zinnen)を望む 
 Tre Cime(Drei Zinnen)の
ハイキング
 オーロンゾ小屋の食堂  オーロンゾ小屋の夕食  ラバレード小屋のテラスで

Cinque Torri (チンクトーレ)  

Torre Ingleseの岩頭から
  チンクトーレとは“5つのタワー”という意味で、緑の丘の上に5つの岩峰群がそびえ立っている。
ショートとマルチのルートが130以上あり、あっちの岩峰、こっちの岩峰、登るところに事欠かない。
クライミング講習も盛んでよく見かけた。

コルティナからは48号線をFalzarego Pass方面へ、Pocolの町を過ぎて112.2kmの表示の近の山道を上がる。
コルティナから1時間足らずで岩場のすぐ近くまで車で行ける。

 

Torre Grande,South Summite
 

Torre Grande,South Summite
 トーレグランデ サウスサミット
 X+ 150m 7ピッチ クラシックルート

一番高い岩峰、Torre Grande Sauth(2361m)に登ってみることにした。
この岩峰はハイキングコースを登ると目の前にある。
他の岩峰に行く度見上げると登攀中のクライマーの姿があった。
私達が登攀した日も10時30分に到着するとすでに2パーティ取り付いている。(我々の後からも1パーティ)

トポと岩壁を見比べていると、通りかかった地元クライマーが、どこを登るか、「大ルーフ下のトラバースでは細かくピッチを切った方が良いよ」など親切に教えてくれた。

取り付きで準備をしていると、前のパーティの落石がバラバラ落ちてきてヒヤリとする。

1ピッチ目は薄かぶりのクラックとチムニー。
2ピッチ目以降はザレ場(ここから落石)のトラバース〜
大きなルーフの下へ〜ちょっと怖いトラバースと乗っ越し(テクニカルでおもしろい)〜フェース。
岩頭のケルンにはロザリオがかかっていた。

トポの記載と違っていて
下降支点が見つからなかった。
探しまくると最終アンカーから5m程離れた、1段下がったところに発見。

そこから20
mほど下降。次の下降はトポに記載のとおりガリーの中に下降支点があったが、あまり良くないので迷っていると、後続パーティは違う方向へ歩いて下山して行く。後をついて踏み跡をたどると、さらに下降支点があり40m程の懸垂で終了できた。

登りよりも下降ルートを見つける難易度が高かった。

 
 

ちょっと怖いトラバースと乗っ越し
 
  ●Torre Inglese,Via normale
 トーレイングリース ノーマルルート
 V 50m 2ピッチ


ここも人気でよく登られていた。
通りかかった時に誰も登っていなかったので登ってみることにしたが、「人が人を呼ぶ」のか私達の後は順番待ちとなった。

1P クラック
2P フェース

ホールド、スタンスとも豊富で快適だった。
 

Torre Barancio,North Face
  Torre Barancio,North Face
 トーレバランシオ ノースフェイス
 W 100m 6ピッチ クラシックルート


北面で取り付きには雪渓が残っていた。
前のパーティのザックがおいてあるので、取り付きはここで間違えないのだろうが、1ピン目が見つからない。
とりあえず良さそうなところを登ってみると、岩棚に隠れてボルトがあって一安心。
左のTorri Lusyとの間のガレ場から1.5m程右にトラバースしたあたりから登る。

1本目が見つからないままスタートするのが核心、ルートはフェースでホールド、スタンスもしっかりあり素直だった。

4ピッチ目3級はどこでも登れてしまう、支点もないのでとりあえずクラック目指して登る。
最後のピッチはガレガレで浮石が多い。

懸垂支点は明確で、2ピッチ(25m 2回)で降りた。


時ごろから雷がゴロゴロ鳴り始め、4時頃から雨が降り出した。
ホテルへ戻る途中、スイスからハイキングに来たという女性グループにヒッチハイクされる。ほんの20分のドライブだったが、お互い質問大会で盛り上がった。
 
 
Sass di stria [Hexenstein] 
    Torre di Falzaregoに行く予定にしていたが、軍隊の訓練をやっていて登れなかった。

取り付き近くまで登って行くと「3日間は登れない」と言われ仕方なく下山すると、他のクライマーやハイカーも同じ目にあっていた
スイスからきたというハイカーは、
「バーの中に張り紙があっただろって言われたよ!
山登りに来てバーにはいかないよなぁ!!
スイスだったらちゃんとインフォメーションがあるよ!!!」
と怒っていた。同感デス。
お客さんを連れたガイドさんも、困り顔でどこに転戦するかガイドブックをめくっていた。

私達もどうしようかと思っていたら、前日Landroの岩場で一緒だったガイドさんがお客さんを連れて降りてきた。
Hexensteinに転戦しようかと思っているというと「そこもいいよ」とアクセスやら取り付きやら詳しく教えてくれた。
彼とはドライ・チンネでもすれ違い、3日連続顔を合わせてご縁があった。



コルティナからは48号線をFalzarego峠へ、ロープウェイ乗り場の駐車場に車を止めるか、またはロープウェイ乗り場の先1kmのところにある大きな岩の回りに8台くらい駐車できる。

ロープウェイ駐車場から取り付きまでは歩いて30分くらい。
 

Sass di stria [Hexenstein] 
 W+ 150m 6ピッチ クラシックルート

ここでも前後にパーティがいたが程良く離れていて、待つこともお待たせすることもなく登れた。
ホールドもスタンスもいい。フェース、簡単なクラック、冒険感あるチムニーなど多彩で、初級者から快適に登れ楽しい。

下降路はビアフェラータというおまけ付き。

ビアフェラータとは鉄のロープや梯子などを利用するトレッキングコースで、第一次世界大戦中にイタリア軍が、兵士の移動用に作ったもの。

2ピッチ目 

ビアフェラータ 
 
 
Tre Cime Di Lavaredo [Drei Zinnen]   

北壁(中央がCima Grande):アルプス6大北壁のひとつ 
  ドロミテでのクライミングでドライチンネは外せない。
三つの頂を意味し、ピッコラ、グランデ、オベストと呼ばれる鋭い岩峰が並ぶ。


コルティナからは車で1時間で、オーロンゾ小屋の駐車場に着く。
途中は有料道路で往復20ユーロ。
駐車場は大型バスも止まっていて大賑わい。ここから三々五々ハイキングやクライミングへと向かう。

オーロンゾ小屋の標高は2320mで、コルティナから1000m以上登ってきた。小屋の周辺は冷たい風が吹いていて、あわててフリースとカッパを着こんだ。

小屋はレストランやバー、お土産屋さんがあり山小屋という雰囲気ではない。ランチ時のレストランは席がないほど込み合っていた。
宿泊する人は少ないようで夕食のテーブルに着いたのは10組ほどだった。
食事はバイキング式で量もお味も充分満足だった。
英語を話すスタッフは2人、他に大学生くらいのスタッフが数人いて、楽しげにせっせと働いていた。


最高峰のCima Grande(2998m)をノーマルルートからと、
一番人気のルートCima Piccola,Yellow Edgeを登ることにした。

Cima Grande,Normal Route(左) Cima Piccola,Yellow Edge(右)
 
  Cima Grande,Normal Route
 シマグランデ ノーマルルート
 V 450m クラシックルート


7時:取り付き 10時10分:山頂 13時25分:終了


朝から快晴だが、手がかじかむくらい寒い。
小屋から取り付きまでは1時間弱。
取り付きのあるCima GrandeとCima Piccolaの谷間には雪渓が残っている。
すでに2ガイドパーティが1ピッチ目を登っていた。

ノーマルルートは他のルートの下降ルートとして使われている。
技術的には難しくないのでアプローチシューズで登った。

先行パーティに追いつくと、快く先に登らせてくれた。
とはいえ、どこでも登れてしまうので、私達が間違えそうになると、下から「お〜い、もっと左から!」と教えてくれる。

結局、最終ピッチで痛恨のコースアウトしたための、彼らの方が先に登頂した。
「結構分かりにくいんだよね〜」と言っているような笑顔と握手で迎えてくれた。

彼らはサウスチロルのガイドさんだった。
  

南チロルのガイドルイスさんと
 
  Cima Piccola,Yellow Edge
 シマピコラ イエローエッジ
 Y 330m 19ピッチ クラシックルート

6時25分:取り付き 14時15分:山頂 16時30分:終了

超人気ルートのため週末は外すか、夏以降の天気のいい日に登るほうがいいとのことなので、平日だったが早めに出発した。

この日も晴天、眼下には雲海が広がり幻想的な朝だった。

   
1ピッチ目 薄かむりのコーナークラック(X+)

取り付きに立つと壁の迫力に圧倒される。
スタンスはよく磨かれていて、ピカピカの見かけどおり滑りやすい。
   
2ピッチ目 コーナークラックからオーバーハングを超える(Y-)


オーバーハングをクラックを使って越える。かなりの傾斜で厳しい!
岩が冷たく手がかじかんで、1〜2ピッチ目ですでにイエローレッジの洗礼を受ける。

 
3ピッチ目 カンテをトラバース(V+)

日の当たる面に出てやっと体が温まる。

これから登る黄色い壁が青空に映えてまぶしい。 

次のピッチはV級、支点がほとんどなく(あっても分かりにくい)、ルートが読みにくい。グレーの壁が黄色に変わったところにある、大きなルーフがルートの目印。

後続パーティは私達が2ピッチ登る間ここで迷っていた。

 
9ピッチ目 トラバースからフェースへ(W)

高度感満点で慎重になる。

岩の回りがハイキングコースになっていて、上高地河童橋あたりくらい賑わっていた。かなりの数のギャラリーがこちらを見上げていた。
きっと、(岩の正面にある)ラバレード小屋のテラスでお茶飲みながら見物している人がいるんだろうなぁ…。この緊張感まで伝わっているだろうか。
 
 
11ピッチ目 核心のクラック(Y-) 


クラックの中に効くところがあるから落ち着いて登るようにとのアドバイスをもらう。
見た目よりも傾斜があり、クラックのなかのホールドも外形気味で傾斜に負けそうになる。


技術と体力とルートファインディング力が試される。最高ルートグレードはY-(5.9くらい)のクラックだが、5.10b〜cのクラックはどこでもこなせないと苦労する。

晴天で順番待ちもない最高の条件で登攀できた。
登ることだけに集中した7時間は、頂を踏み下山した時に最高の達成感と充実感と与えてくれた。ドロミテばんざい!!
 
ショートルート   
 
Landro


日曜日。
チンク・トーレに行こうと48号線を登っていくと途中で道路封鎖、車とバイクで渋滞。自転車レースのため封鎖とのこと。
仕方がないので、仕切りなおして
Landroの岩場へ。

51号を30分ほど走る。ミズーリナ湖に向かう分岐から、数百メートルの右側に何台か車が止まっていた。
左側には大きなハングが見え、122kmの表示が目印。


 
   
Crepe de oucera bassi 


48号線をPocolでGiau峠方面へ左折。2.8kmの表示を過ぎたヘアピンカーブの出口の左側のスペースに駐車。
森をぬけるハイキングコースのように整備された山道を5分程歩くと、石灰岩の岩壁があらわれる。
 
Crepe de oucera alti


前述のCrepe de oucera bassi から1km程。
Croda da Lagoへの登山口があるので、路肩にはたくさんの車が止まっていた。
岩壁が車道から見える、歩いて5分位。こちらも森の中の岩場。
 
こぼれ話 
     レンタカー
左ハンドル、マニュアル、右ギアの運転に慣れるまではつらい。交通標識やイタリア語の
「出口」「入口」ぐらいは抑えておいたほうがいい。ベローナでも空港から出ようと思ったら
「出口」が分からずグルグル回ってしまったり、ギアがバックに入らずホテルのフロントに助けてもらったりして汗をかきました。(バックはギアを上に引き上げてから入れます)
私達が借りた車はガソリン車。ガソリンスタンドで「ベンズィーナ」と言うと、大変よくできましたと褒められました。小さなことでも褒められると嬉しい。
ガソリン→(伊)ベンズィーナ ディーゼル→(伊)ガソリン
間違えたら大変です。
幹線道路を離れると(特に街中は)細い道が多いので小さな車が絶対いい。カークラス
“ミニ”の車でも高速道路、山道問題なく走ってくれました。
イタリア人の運転は日本に比べると激しい制限速度が一般道90km/h、高速道路130km/h、なのでそこからして違うが、山道を80km/hで走っていると、後ろにピタッとつけられます。車線変更ではほとんどウィンカーはださない。だんだん慣れて自分の運転がイタリア化していきました。
  ピザのはんぶんこ 
  ピザに限らず、パスタもドルチェもスーパーのお惣菜もなんでも美味しかった。
イタリアに居続けたら体重的にかなりヤバいことになっていただろう。

ピザは何度も食べに行ったが、最初のうちはサラダ(食事にサラダは欠かせないので)と
ピザ1枚をシェアしていたが、回りの空気と何かが違う。

だいたいの皆さんは昼食でも夕食でも、飲み物とピザ1枚というパターンで、お年をめした方でも子供でもピザ1枚はきっちり食べていました。

                                       【記 Emi】  
 
         
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