1、操陵のもと春逝かば 遊楽の宴かげ失せて
征馬鞭打ち南海の 益良雄北に進むなり
精進の血に紅の 旌旗は野辺にあふれたり
いでや忍苦の一年を 行きて卜めん叡山下
戦雲深く洛陽の 岸に乱るや潮して
都に寄する益良雄が 血もて染めなん吉田山
覇道は知るや京洛に 結べる夢を吾が駒の
蹄のあとに破らでは など北進の戈取らん
楚歌の詞四面に満ち 正義の刃碎くとも
胸に無限の覇気あらば 守れ不屈の意気の香を
2、我幾度か戎衣して 北行く雁と諸共に
都の春に打ち入りて 高きほまれを立てしかな
執るに戈なく劔折れ 流れは空し賀茂の水
倉皇西下の道すがら 悲運に泣きし日のあるを
あゝ興亡の影さゝば 驕の跡を如奈せん
永劫の神またゝかば 栄華一日朽ちぬべし
されば諸人うつし世の 瞬時の夢を追ふ勿れ
世紀の浪に曇りなき 不滅の剣みがけよや
いざ行けさらば益良雄よ 腥風ひそむ古都の夏
夏より紅き戦して 帰れ紫紺の旗取らば