1、思ひ出づる調べも哀し 春浅く水藻漂ふ志賀のうみ
かの日風立ち雲たれて 呼び応ふこだまのみ
たそがれに流れいゆきぬ
2、はろばろと今に帰さむすべもなき 此の愁ひはたこの嘆き
さゞなみさやぐ志賀のうみ ますらをの青春の日を
沈めしとうつゝなりや
3、あゝ在りし日のいさをしゆゑに 嘆かひはいよゝはげしく
たくましきますらを男の子の 思ひ出にめぐり来る春の日の
新たなる涙つきせず
4、沖の島に春の陽てりて ほのぼのと霞み渡れり
岸近くさまよひゆきて砂にぎり 砂握りしめ夕なみに
いまはなき友を偲びぬ
5、さあれ見よ今よみがへりゆく 若き児の夢とのぞみよ
空青く水青き所再ゆかむ ゆく春の血潮にそみて
夕陽ちるかの潮路を